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社会イノベーション/Smart City Week 2014 レビュー | 大和ハウス工業

創業者の精神守り明日の社会を拓く
キーワードは「アスフカケツノ」

大和ハウス工業 代表取締役会長 兼 CEO
樋口武男

大和ハウス工業は「アスフカケツノ(明日不可欠の)」をキーワードに、安全・安心、スピード・ストック、福祉、環境、健康、通信、農業分野における新規事業に積極的に取り組み、業績を拡大している。それらの新規事業を貫くのは、「単に儲けるためだけで事業を興すのではなく、社会に役立ち、人々に喜ばれる事業を興せ」という創業者、石橋信夫氏の精神だ。

 当社は「アスフカケツノ」というキーワードで新規事業に挑戦し続けています。アは安全・安心、スはスピード・ストック、フは福祉、カは環境、ケは健康、ツは通信、ノは農業です。

 私が役員になった30年ほど前に、創業者である石橋信夫から「何をやったら儲かるかという発想で事を興したらあかんで。どういう事業が、どういう商品が世の中の多くの人々の役に立ち、喜んでいただけるかということを考えて事を興せよ」と言われました。「アスフカケツノ」は、「明日の社会に必要不可欠の」事業で社会の役に立ちたいという創業精神に基づいています。

創業時から続く安全・安心の精神

 石橋は奈良県・吉野の林業会社に勤めていたときジェーン台風に遭遇しました。大きな被害を見てふと気づくと、目の前の稲穂は立っている。手に取り折ってみると、外形は丸で中は空洞でした。こういう形が強いのか。思いついたのが鉄パイプです。鉄パイプを使えば台風に強い安全・安心な家ができる。しかも、戦後の木材乱伐の影響で崩れ落ちた山々も守ることができる。この発想がきっかけになって創業時の商品「パイプハウス」が生まれました。

 現在もオリジナルの住宅用免震装置「DAEQTB」を開発・実用化するなど、技術革新で安全・安心を追求しています。キーワード「ア」の安全・安心の精神は創業時から一貫して続いています。

 また、このパイプハウスは国鉄(現JR)や電電公社(現NTT)、官公庁などに採用され、瞬く間に全国に拡大しました。さらに大型建築を望む声に応え、日本初の鋼管構造建築を開発。完成までの驚異的な早さが評判を呼び、石橋は「スピードは最大のサービスであり、企業の利益を最大化する」と確信したのです。キーワード「ス」のスピードは社会の要請にいち早く対応するという創業者精神が根付いたものです。「ス」はストックの「ス」でもあります。愛着ある我が家が、次世代まで住み継がれるようにすることです。水漏れやシロアリを探知するため床下を動くロボットも産学協同で開発しています。

 キーワード「フ」の福祉分野に進むきっかけですが、25年ほど前、宮崎県の病院から当社に介護老人保健施設の請負建築の引き合いがありました。初めての仕事でしたが、これは社会的に必要なものだと感じて開発に当たりました。病院・特養・老健施設、デイサービス、デイケアなどの請負建築事業は、現在までに約4000件の実績を重ねています。

 また当社は10年ほど前に、装着型介護ロボット「ロボットスーツHAL®」を開発しているサイバーダインに出資しています。熱心に説明する筑波大学の山海嘉之教授の顔を、私はじっと見つめて「先生は何のためにこの研究をされているんですか」と聞きました。すると、「自分の研究を通して世の中の多くの人々の役に立てればいいと思ってやっています」との答えでした。

 「先生のおっしゃったことは石橋が言っていたことと全く同じです」ということで、役員会に諮って先生が創設したサイバーダインに出資したのです。

21世紀の事業は風と太陽と水

 「カ」は環境の「カ」です。創業者の石橋は、90年代の中ごろ私を呼んで「樋口くん、21世紀は風と太陽と水をキーワードにした事業を考えたらええで」と言われました。正直、そのときは何のことやらよく分かりませんでしたが、強く印象に残りました。

 現在、当社は愛媛県の佐田岬で9000kWの風力発電事業を行っています。メガソーラー事業も全国で展開しており、太陽光発電はグループ合算で200MW程度になるでしょう。風と太陽と水は、クリーンエネルギー事業として当社グループで実行しつつあります。

 「ケ」は健康の「ケ」です。スポーツクラブNASをグループで展開していますが、TOTOと共同で尿から血糖値を測定するインテリジェンストイレも開発しました。高齢化社会を見据えた介護・福祉用商品も強化していきます。

 「ツ」は通信の「ツ」です。ネット時代に対応して、ユニクロのファーストリテイリングと共同で、朝注文すれば当日届けられるような配送サービスを実現するために、物流拠点の整備に力を入れていきます。この協業をきっかけに、世界へ飛躍していきたいと考えています。

 「ノ」は農業の「ノ」です。日本の農業従事者の高齢化が進んでいます。これを支えていくには農業の工業化しかありません。当社は植物工場ユニット「アグリキューブ」を開発していますが、「建築の工業化」を実現した精神のもと、本格的な農業の工業化を追求します。

 これからも、住宅メーカーという枠を超えた“人・街・暮らしの価値共創グループ”として社会と共に新しい価値の創出に挑戦してまいります。