社会イノベーション/Smart City Week 2014 レビュー | 総合トップ

社会イノベーション/Smart City Week 2014 レビュー | 東芝

スマートコミュニティ成功の条件は
リーダーシップと持続性とコスト負担

東芝 執行役上席常務 コミュニティ・ソリューション社 社長
秋葉慎一郎

地球環境や都市環境のメガトレンドは、先進国にも新興国にも様々な課題を突きつけてくる。ICTを活用したスマートコミュニティの実現は、課題解決に向けた重要な方策であり、それを成功に導くには、事業主体者の強いリーダーシップとプロジェクトを持続させる力、コスト負担の合意形成が必要だ。

 環境変化のメガトレンドを洞察すると、地球環境や都市環境において様々な課題が山積していることが分かります。地球環境では、化石燃料の消費拡大による地球温暖化で自然災害が大規模化、頻繁化する傾向にあります。化石燃料の利用の最適化、再生可能エネルギーの利用拡大による環境配慮の取り組みが強く求められます。

 一方で、都市環境の課題も深刻です。新興国では人口増加、インフラ新設需要の高まり、先進国では高齢化、インフラの老朽化と、課題は地域によって異なるものの、安定供給、効率化、強靭化が求められます。また、安心・安全・快適を実現するICTインフラの構築も重要な課題です。

2020年に向けた再整備が必要

 こうした課題を整理すると、解決策は「エネルギーの効率化・安定供給」「安心・安全な街づくり」「快適・効率的な生活・住空間づくり」に集約できます。その課題解決に向けて、安心・安全・快適で経済性を考えた「レジリエント」な社会インフラを、ICTを活用したスマートコミュニティで実現します。

 スマートコミュニティ化に向けた取り組みとして、2010年に経済産業省が次世代エネルギー・社会システム実証事業をスタートさせました。横浜、豊田、けいはんな、北九州の4地区で実証が進められ、技術実証から社会実証、そして事業性の実証へと目的をシフトさせています。このようにシフトしてきた状況を東芝が取り組むプロジェクトで紹介すると、2010年から沖縄電力が宮古島で実施した系統安定化の実証が技術実証になります。太陽光や風力の供給側の変動要素を最適制御するもので、再生可能エネルギーの構成比率が20%を超えると制御が難しいとされる中、88%と高い比率で最適制御を実現。また、同島での全島EMS(エネルギー・マネジメント・システム)は島内エネルギー最適制御の実証で、その取り組みが受け入れられるかの社会実証を行い、事業採算性を検証する事業性実証にも取り組んでいます。

 ほかにも各地でスマートコミュニティの実証が進められており、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、社会インフラの再整備が求められます。

 世界ではスマートコミュニティは600を超えるプロジェクトが動いているといわれています。ただ、地域ごとに課題が異なり、それは、都市インフラ関連、エネルギー関連、ライフサポート関連の3つに大きく分類できます。その課題解決に、いち早く技術を確立し、ビジネスモデルを構築した企業が商用化を先行して進められるのです。

成功に向けた3つのポイント

 東芝は様々なプロジェクトに参画してきて、そこからスマートコミュニティのプロジェクトを具体化、加速化させるための条件が見えてきました。ポイントは3つ。事業主体者の強いリーダーシップ、中長期の持続的な取り組み、コスト負担の合意形成です。

 スマートコミュニティの実現にはステークホルダーが多く、様々な利害関係者との交渉が必要です。価値を理解してもらうための努力も必要でしょう。確固たる信念を持って粘り強く推進するリーダーシップが求められます。

 また、街づくりは完成までに時間がかかるプロジェクトです。自治体のトップ交代、景気の波、国の意向の変更など、環境変化が懸念されます。そうした中でも、ぶれることなく中長期の取り組みを続ける力が必要とされます。

 コスト負担に関する相互理解も重要です。公的資金だけでは長続きしません。受益者負担を求めるためには、住民の方々にも利益を実感してもらって、負担に納得してもらう必要があります。地域・自治体と住民、企業群の間でメリットとコスト負担に関する合意形成も要諦となります。

 これらの条件を満たしているブロジェクトとしては、フランス・リヨン市の都市再生プロジェクトや横浜市の低炭素・省エネルギーのプロジェクトがあり、これらは自治体の強いリーダーシップで推進されています。

 また、川崎市のスマートコミュニティでは、エネルギーからコマース、交通、防災まで官民連携で中長期的な視点に立った取り組みがなされています。

 東日本大震災からの復興を目指す宮城県石巻市のプロジェクトでは、被災時の教訓から「灯りと情報が途切れない街づくり」に取り組んでいます。ポイントは、平常時と非常時のインフラを共有して、コスト負担を軽減する仕組みを具体化することです。

 これらを考察しますと、スマートコミュニティを構成する自治体、住民、企業の間でキャッシュが循環し、ウィン・ウィンの関係が成り立つ、三者にメリットがある「三方良し」の姿が、スマートコミュニティ実現のカギを握ると考えています。