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社会イノベーション/Smart City Week 2014 レビュー | 積水ハウス

生態系までを考えたスマートタウン
環境に優しい住宅を世界で展開

積水ハウス 代表取締役会長 兼 CEO
和田 勇

1999年から様々な観点で環境問題の解決に取り組んできた積水ハウス。エネルギー収支をゼロにした住宅を開発するばかりでなく、その地に自生していた木を住宅地に植えて生態系の復活に取り組んだり、住宅を長く使うための工夫を行ったりしている。最近は、これまで培った環境技術を突破口に、世界各地で環境に優しい住宅を展開している。

 当社は1999年に21世紀を見据えた「環境未来計画」を策定しました。世間ではまだ環境が大きなテーマとして掲げられていない時代でしたが、「環境憲章」を定めて、徹底的に環境に配慮した住宅を推進することを宣言したのです。

 まずは省エネ、CO2排出削減に取り組みました。2000年以降窓ガラスをすべて、断熱効果が高く、省エネに有効な複層ガラスにしました。2009年にはできる限りCO2排出を削減した住宅「グリーンファースト」を発売。そして2013年に、省エネに加え、太陽光発電や燃料電池などを組み合わせて「創エネ」「蓄エネ」を図り、エネルギー収支ゼロを実現した「グリーンファースト ゼロ」を発売したのです。現在、新築住宅の6割が「グリーンファースト ゼロ」になっています。

 こうしたスマートハウスの開発・供給に加え、仙台や福岡など全国16カ所で「スマートコモンシティ」と呼ぶスマートシティを展開しています。スマートコモンシティなどの当社の分譲地では、2001年から住宅付近の里山を参考にして、その地に合った種類の木を植える「5本の樹」計画を続けています。木はただ植えればいいわけではありません。北海道で自生している種類の木を東京や大阪に持ってきても根付きません。日本の植生分布は大きく5つの領域に分かれており、それぞれの植生によって鳥や虫などの生態系も異なるのです。

 その地に応じた木を植えることでその地に昔からいた野鳥や昆虫が帰ってくる。そこで、「3本は野鳥のために、2本は昆虫のために」という意味をこめた合言葉、「5本の樹」計画を推進して生態系を回復させることを目指しているのです。

 その結果、仙台市の事例ではそれまで2科2種類の鳥しかいなかったのが、14科20種類に増えました。松山市の分譲住宅地では3種類だった鳥が1年後に8種類、昆虫は4種類だったのが32種類まで急増しています。

大阪の本社に「新・里山」を造成

 大阪・新梅田シティの本社ビルの公開空地には、約8000m2の里山を造り、かつて大阪に自生していた種類の木を植えました。この「新・里山」で生態系がどう変化するかを観察して、今後の環境対策に生かすためです。3枚ほど田んぼも作ったので、都心にもかかわらず夏にはカエルも鳴いています。多数の野鳥や昆虫も帰ってきました。

 さらに2013年には、「新・里山」に接して、高さ9m、全長78mほどの「希望の壁」を完成させました。この壁に2万種類ほどの植物を植え、蝶が行き交うバタフライウォールにしようと考えています。「新・里山」と「希望の壁」は2014年の緑の都市賞で総理大臣賞を受賞しました。このほか、東北工場(宮城県色麻町)では、平常時は電力のピークカットに貢献し、大規模災害発生時は地域社会の支援に貢献できるようにする「防災未来工場化計画」に取り組んでいます。

 省エネや生態系だけではなく、住宅の長寿命化にも取り組んでいます。

 日本では古い住宅は15~20年で評価価値がゼロになり20~25年でスクラップ・アンド・ビルドされる状況を繰り返してきました。しかし、資産価値という点ばかりでなく、環境面からもこれからはリフォームしながら長く使う家が求められます。

 こうした動きを促すべく、住宅をスケルトン(基礎、骨組み、外壁)部分とそれ以外の部分に分け、長持ちするスケルトン部分は50年間は価値が残り、それ以外は15年くらいで償却できるように評価しています。間取りを変えてもスケルトンはそのまま残りますから、資産価値も残ります。スケルトンを残してリフォームすれば、その分、住宅の価値が向上していくのです。

環境技術を世界に輸出

 このような環境技術は世界中の国からも、好感をもって受け止められ、当社の住宅輸出に貢献しています。

 オーストラリア・シドニー近郊のダウンタウンでは斬新なソーラーシステムとコージェネレーションシステムを併用した住宅ビルを開発しました。ビルの座面各所に植栽を施しています。

 シンガポールは緑と水が少ない都市ですが、そこで里山の概念を取り入れた住宅開発をしたところ非常に好評で、完成前にほぼ完売しました。また米国のシアトル郊外では、人工の池を造って周囲を緑化した1万戸規模の宅地分譲をしています。さらに中国ではPM2.5対策を施したタウンハウス、マンションを開発しています。

 住宅はあるゆる社会問題の中心に位置しています。住宅が変われば、社会が変わる。このキーワードに基づき、世界のお客様に喜んでいただけるように今後も環境に配慮した事業を推進していきます。