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創始者の理念を継承する新リーダーの挑戦 グローバルに 「子どもから学ぶ経営」を貫く 〜不易と流行への挑戦〜

子どもの学力に応じた個人別の「自学自習方式」で、教育事業を展開する「KUMON」。1958年の創業以来、国内で1万6000教室、海外でも8000以上の教室を展開するグローバル企業に成長し、世界48の国と地域で430万人が学習している(2015年3月現在)。世界で認められた「KUMON」の魅力と、今後の事業展開について、6月に代表取締役社長に就任した池上秀徳氏に伺った。

ひと組の親子の
創始者の理念を継承する新リーダーの挑戦絆から生まれたKUMON
Ikegami 株式会社公文教育研究会
代表取締役社長
池上 秀徳 氏

─初の教材開発部門ご出身の経営トップとお聞きしております。

 1980年に入社し、国語教材の開発を担当しました。当時、社員も教室を運営して指導法を学ぶ慣例があり、2年間教室で指導・運営を行いました。今でも指導した子どもたちの名前や顔を覚えているほど熱心に取り組みましたが、この教室体験から「自分で考え課題を解決する力」を身につけることで、「能力を最大限に伸ばす」公文式の価値とそれを実現する指導者の存在の大切さを実感しました。

 その後、外国人向け日本語教育の事業部が発足し、教材作りを任せられました。一から日本語教材を作るために既存の教科書を研究し、外部専門家の意見を参考に作り上げた自信作のサンプルを創始者の公文公に見せると、「これを作るのに指導者や生徒にどれだけ話を聞きましたか?」と厳しく指摘を受け、叱られました。実際に学習する生徒や指導者から話を聞いていないことを見抜かれたわけです。公文公は常々指導者や社員に「未完成であることを自覚せよ」と語り、「これでいい」という思い込みで進歩を止めることを嫌っていました。雲の上の存在だった公文公から直接学んだ経験は、今も自分の揺るぎない根幹となっています。

「自学自習方式」の先駆けとして

─「公文式」が日本の教育に与えた影響も大きなものがあると思いますが。

 今、日本の教育は改革の時を迎え、98年に現在の文部科学省が打ち出した学習指導要領では、「生きる力」として「自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」を伸ばす方向に変化しました。弊社が創業以来57年間取り組んできた、学力と同時に「自習する態度と方法を身につける」教育と重なる部分が多く、「自学自習方式」の先駆けとしての自負も感じます。一方で変化のスピードが速く、多様化する時代にサービスの価値をさらに高める必要もあります。それらを前社長が判断し、我々の商品価値の核である教材作りを担当してきた私が代表に就任することとなりました。

─数学から始まった「KUMON」ですが、現在では国語の他、英語教育にも力を入れてらっしゃるそうですね。

 自分の力で問題を解き、能力を高める点は、英語も他の教科と同じです。昨今、グローバル人材育成が話題ですが、語学力だけではなく「主体性、積極性、チャレンジ精神」「異文化に対する理解」が重要だと思っています。

 公文式英語は「聞く」「話す(文章を音読する)」「読む」「書く」の4技能の学習を通じて高度な読解力と表現力を養います。併せてグローバル人材として必要な「主体性、積極性、チャレンジ精神」は、公文式の特徴である「学年を越えて進み、未知の問題を自らの力で解くこと」で養われます。また、教材には海外の文化を題材にしたエッセーや文学作品を取り入れ、おのずと「異文化に対する理解」を深めるきっかけを与えます。このように、公文式英語はグローバルに活躍する人材を育成できる学習なのです。

キーワードは「つなげる」

─創始者・公文公氏の生誕100年の節目となった昨年に「2014-2018中期経営方針」を発表されましたが、今後の展望についてお聞かせください。

 一つは、「公文の理念、価値観、知恵を次世代につなげていく」ことです。「KUMON」には創始者の理念、価値観や、教室で公文式を実践している指導者の知恵があります。こうした「不易」や先達の知恵を、公文公を知らない次世代の社員、指導者に対しても継承していかなくてはなりません。この不易の軸を守り、発展させ、次代の経営につなげていきたいと思っております。

 2つ目は、「世界の知をつなげる」こと。「KUMON」の「知恵」は指導者や社員の中にあります。最も知恵を持つのは歴史のある日本ですが、知恵は言語化やマニュアル化がしにくいので、一緒に話し合い、学び合うことで、海外の指導者や社員と知恵の共有を図ります。一方、海外は進化が速く、また様々な環境に応じた展開が求められます。各国の多様でリアルな現場から日本が学ぶべき知恵の逆輸入も必要です。このように国内外の「知恵の還流」を、経営として起こしたいと思っています。

 3つ目は「未来につなげる」です。創業時とは全く違う事業環境の変化に即して、新たな事業モデルなどを進化させることです。一例では、世界最大のNGO団体BRACと協力し、学校に通えない子どもたちの支援を始めました。バングラデシュの農村にはBRACが作った多くの学校があり、そこへ公文式教材と指導法を伝え、子どもたちに学習してもらうというパイロットプロジェクトです。3カ月間トライアルしたところ、BRACのスタッフが驚くほど、子どもたちが伸び、成果が表れています。現在はJICA様からの支援を受けながらの実施なので、事業化のための仕組み作りは今後の課題です。

 今後ともFC(フランチャイズ)での教室事業が中心であり、その指導の質を高め、学習効果を高めていくことが最も大事であることに変わりはありませんが、このように、通常のFCで展開できないあらゆる地域や幅広い層の人々にも、公文式を学習していただける機会を提供していきたいと思っています。

株式会社公文教育研究会
株式会社公文教育研究会
〒108-0074 東京都港区高輪4-10-18 京急第1ビル13F(広報部)
TEL:03-6836-0030
URL:http://www.kumon.ne.jp