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【日本テキサス・インスツルメンツ】決め手は製品ラインアップと充実した設計支援サービス、拡大する産業機器市場でさらなる成長

スマート・ファクトリやインダストリー4.0————。こうしたキーワードに代表されるように、産業用電子機器分野では、新たな技術革新が始まっている。牽引するのは、「半導体技術」と「電子技術」だ。

この2つの技術を適用することで、産業用電子機器の性能は飛躍的に向上する。例えば、モーター駆動機器では、半導体を使った制御/駆動手法を適用すれば、電力効率が大幅に向上する。つまり、電力損失を大きく減らせるわけだ。さらにスマート・グリッドでは、さまざまな場所に点在する再生可能エネルギー発電施設で得た電力を効率よく送配電できるようになる。

拡大する産業機器市場でさらなる成長

半導体技術や電子技術を産業用電子機器に適用する効果は極めて大きい。それだけに、産業用電子機器に向けた半導体の市場規模は、急拡大する見込みだ。

Heinz-Peter Beckemeyer, Texas Instruments

この市場において、テキサス・インスツルメンツ(TI)は、8%の市場シェアを獲得している。TIのIndustrial Systems Factory Automation & Control部門でGeneral Managerを務めるHeinz-Peter Beckemeyerによると、「多くの半導体メーカーが市場シェアを分け合っている状況にある。その中にあって、TIは市場シェア・トップの座にある」という。「産業機器市場は今後も伸びが予想されるため、TIもまだまだシェア拡大の余地がある」。

多くの半導体メーカーが産業分野に注力する中、TIは、この競争をいかに勝ち抜くのか。Beckemeyerは、「確かに、産業用半導体市場に注力すると表明している半導体メーカーは多い。しかし、市場に受け入れられるには、マーケットの要求に合致した製品やサービス、サポートを提供する必要がある。それを実行できるかどうかが勝敗を分ける。TIは実行できる」という。

製品ラインアップと充実した設計支援サービス:TIの産業市場への取り組み

TIは、産業用半導体市場に対しては、次の4つの取り組みが重要だと見ている(図1)。1つめは、製品ポートフォリオ。2つめは、リファレンス・デザインとアプリケーション・ノート。3つめは開発ツール。4つめは、開発サポートである。具体的な取り組みについて以下で詳しく説明しよう。

図1 産業機器向け半導体市場への4大取り組み
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10万個を超える製品を提供

1つめの製品ポートフォリオについては、極めて幅広い品ぞろえが強みになる。「市場は断片化しており、顧客のさまざまなアプリケーションや要求に対応するには、製品を数多くそろえることが欠かせない」(Beckemeyer)。TIでは、10万個を超える半導体製品を用意しており、ここに1年間に約500個の新製品が加わる。産業機器分野では重要な、長期にわたる安定供給体制を構築している。

2つめのリファレンス・デザインとアプリケーション・ノートについては、種類の豊富さが特筆すべき点だ。リファレンス・デザインについては、ボードに加えて回路/ブロック図、BOM(部品表)、設計ファイル、テスト・データなど、設計に必要な情報を包括的に収録した「TI Designsリファレンス・デザイン・ライブラリ」を用意している(図2)。リファレンス・デザインの数は日々増加しており、現在では1500点を超える。そのうち産業機器向けリファレンス・デザインの数は860点にものぼる。アプリケーション・ノートについては、5000点以上を用意している。

図2 リファレンス・デザインを提供
「TI Designs」というシリーズ名称の下、1500点を超えるリファレンス・デザインを提供している。
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3つめは、ウェブサイト上で使用できる無償のオンラインアナログ回路設計支援ツール「WEBENCH® Design Center」を挙げた(図3)。DC/DC コンバータを中心とする電源設計をはじめ、LED ライティング、PLL/タイミング回路、アクティブ・フィルタ、センサ回路など、ジャンルに応じて豊富なツールが用意されており、新しいツールの追加や機能拡張も頻繁に行われている。アナログ回路設計の経験が少ない設計者でも、最適化したアナログ回路を簡単に設計することが可能だ。 (1) インストール不要でどこからでも使える(2) 常にアップデートされた最新のツールを使える(3) 豊富な部品データベースから最適の部品を選択可能(4) 設計、シミュレーションから部品発注、試作までワンストップ、など、さまざまな利点を得ることができる。

図3 万全な開発サポート体制を構築
この図は、電源回路設計の場合を例に示している。リファレンス・デザインや、オンライン設計ツール、コミュニティ・サイトを提供している。
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4つめの開発サポートについては、コミュニティ・サイト「E2E(エンジニア・ツー・エンジニア)フォーラム」を挙げた。これはTIのエンジニアと、顧客企業のエンジニアをつなぐオンライン・コミュニケーションの場だ。オンライン上でいつでも技術的な質問をしたりすることができる。技術的な質問やその回答が4万件以上掲載されており、それらを検索することで実際の技術開発に役立てることができる。このほか「業界最大の販売(セールス)サポート・チームを抱えている」(Beckemeyer)という。

産業機器向け新製品を数多く投入

半導体製品の中でTIが特に注力しているのは、「アナログ」と「組込みプロセッサ」である(図4)。この2つの製品分野で、TIの売り上げ全体の8割を占める。どのような製品を市場に投入しているのか。特徴的な製品をいくつか紹介しよう。アナログについては、センサ、データ・コンバータ、パワー・マネジメントの3分野に分けて紹介する。

図4 アナログと組込みプロセッサがコアに
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センサの分野では、2014年9月に新しいセンサICを4つ製品化した(図5)。第1に、サーモパイルを使った非接触型の赤外線温度センサIC「TMP007」である。実装面積が1.6mm×1.6mmと小さく、業界最小という。被測定物に接触しなくても、その方向に向けるだけで温度を測定できる。第2に、周辺光センサIC「OPT3001」である。人間の視覚特性に合わせた光検出が可能だ。23ビットと広いダイナミック・レンジを実現した。第3に、温度と湿度の両方を測定できる集積型のセンサIC「HDC1000」である。消費電流が小さいことが特長だ。第4に、近接センサとして利用できる静電容量センサIC「FDC1004」である。静電容量の変化をデジタル値に変換して出力できる。

図5 4つのセンサICを一挙投入
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データ・コンバータの分野では、競合他社品に比べて外形寸法を44%削減した逐次比較(SAR)型12ビットADコンバータIC「ADS7042」を2014年9月に発売した。最大サンプリング速度は1Mサンプル/秒である。このほか、最大サンプリング速度が600k~2Mサンプル/秒の小型14/16ビットADコンバータIC「ADS8354」ファミリを併せて市場に投入している。

パワー・マネジメントの分野では、ウェアラブル機器やセンサ・モジュールなどに向けた小型電源を2014年9月に2製品投入している。1つは、実装面積が1.6mm×0.9mmの充電IC「BQ25100」である。業界最小を実現したという。もう1つは、インダクタも搭載した200mA出力のDC/DCコンバータ・モジュール「TPS82740」である。実装面積が2.3mm×2.9mmと小さく、静止時の消費電流が360nAと低いことが特長だ。このほか、「SIMPLE SWITCHER」ファミリの同期整流方式対応のDC/DCコンバータICとして最大36V入力が可能な「LM4360x」や最大60V入力が可能な「LM4600x」などを製品化している。

産業機器向け超低消費電力マイコンも投入

産業機器向け組込みプロセッサでは、「AM5K2Ex」がある。AM5K2Exは、1.4GHz動作の「ARM® Cortex-A15コア」を4個集積したプロセッサで、演算能力は19600DMIPSに達する。それにもかかわらず消費電力は10W未満と少ない。産業機器への適用を想定し、動作温度範囲は−40~100℃と広い。さらに、EtherCATやPROFINET、SERCOS II、イーサネット/IPなどのフィールド・バス・プロトコルを、ハードウェア・アクセラレータでサポートしている。

超低消費電力マイコンでも産業機器向けのシリーズを投入した。「MSP430 iシリーズ」と呼ばれるファミリで、人感センサ、温度・圧力伝送器、電力モニタリングその他、数多くの産業用市場分野向けで、-40~105℃の広い動作温度範囲要件に対応する。正確性と高精度を可能にする、最大4個の24 ビット・デルタ-シグマ型A/Dコンバータを内蔵している。

このようにTIは、アナログと組込みプロセッサの豊富な品ぞろえに加えて、設計支援ツールやリファレンス・デザインなど万全な開発サポート体制も構築している。それだけに、次なる成長分野として期待を集める産業機器市場において、有力な半導体メーカーとして注目を集めるのは間違いないだろう。


※ SIMPLE SWITCHERおよびWEBENCHはTexas Instruments Incorporatedの登録商標です。その他、すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。

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