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センサーネットワークをワンストップで顧客アイディアの早期具現化を支援

日本テキサス・インスツルメンツは2014年12月9日(火)に開催された「Trillion Sensors Summit Tokyo 2014」で「TSensorsを実現する低消費電力センサーネットワーク技術」と題して講演し、センサーネットワーク時代に向けた取り組みと製品を紹介した。「センシング」、「プロセッシング」、「コネクティビティ」、および「パワーマネージメント」の製品群とさまざまな技術リソースを提供し、顧客のアイディアの具現化や製品化を支援する。

酒井 正充 氏
日本テキサス・インスツルメンツ
営業・技術本部
マーケティング部
エネルギーグループ リーダー

高度なセンシングネットワークの普及と活用は社会や生活を大きく変えるとされており、そうした時代の到来を見据えて、TIは半導体デバイスおよびソリューションのラインアップ強化を進めている。

「Trillion Sensors Summit Tokyo 2014」における同社の講演では、最初に酒井氏が登壇し、そうした全体的な取り組みと代表的な製品について紹介した。

まず、センシングネットワークの市場について酒井氏は、調査会社のデータを引用しながら、2020年までに240億台もの機器がインターネットに接続されるようになるだろうと述べ、「特にセンシング機器がインターネットにつながることにより、機器や環境、ユーザー等のデータが集められ、分析され、さらには他のアプリケーションや他のデバイスのデータと複合されることで、これまでにない違った価値が生まれるだろう」との期待を示した。

FRAM搭載の超低消費電力マイコンを拡充

IoTに関係する半導体製品としては、さまざまなセンサーを使った「センシング」、オペアンプやA/Dコンバータおよびマイコンなどの「プロセッシング」、ネットワークの「コネクティビティ」、および「パワーマネージメント」の四分野を中核として位置づける。

このうち「プロセッシング」については高性能ペリフェラルを搭載し、業界トップクラスの超低消費電力を実現する「MSP430」シリーズをIoTに最適なマイコンとして訴求する。なかでも、FRAM(強誘電体メモリ)を搭載した「MSP430FR6x/FR5x/FR4x/FR2x」シリーズの拡充に積極的に取り組んでいるという。MSP430FRシリーズで統合されたFRAMはプログラムメモリとしても、データメモリとしても柔軟に設定可能であり、FlashやEPROMに比べて100倍以上高速な書き込み速度でありながら消費電力は1/250以下である。また書き込み耐久性が100兆回以上とほぼ無限の耐久性を有する。さらに不揮発性であることからSRAMと異なり、電源をオフにしてもデータ保持が可能であるため、IoT機器全体のさらなる低消費電力化にも有利である。

「センサーアプリケーションの場合、他機器やクラウドに対し、センサーから取得したデータをリアルタイムに伝送する使い方よりも、IoT機器のバッテリー消費を抑えるため、マイコン側である程度蓄えた後に伝送する使い方が一般的と考えられるため、高速な書き込みと究極の低消費電力化が可能な、FRAM搭載MSP430が真価を発揮する」(酒井氏)。

なお、「MSP430」シリーズは400品種以上(うち、FRAM搭載品は100品種)がすでに展開されており、品種によって異なるが、サンプリングレートが200kSPSの10ビットないし12ビットのSAR型(逐次比較型)A-Dコンバータや、16ビットないし24ビットのデルタシグマ型A-Dコンバータを搭載しているため、センサーが出力する微小なアナログ信号を高精度に取り込めるのが特徴だ。

幅広いコネクティビティを提供

続いて、「コネクティビティ」から「CC3100」および「CC3200」を紹介した。いずれもWi-Fi(802.11 b/g/n)をサポートしており、業界で初めてチップ・レベルでWi-Fi Alliance®認証を取得している。「CC3100」はオンチップのWebサーバーおよび組込みTCP/IPスタックやセキュリティプロトコルを内蔵した自己完結型のWiFiネットワークプロセッサで、「CC3200」はアプリケーションプロセッサとしてARM Cortex-M4およびアナログやパワーマネジメントなどペリフェラルを統合し、単一デバイスによるアプリケーション開発を可能にすると説明した。両デバイスともWi-Fiの詳しい知識を持たなくてもシステムを構築できると訴求する。

なお、同社は、Wi-Fiのほか、Bluetooth、サブ1GHz帯(ISMバンド)6LoWPAN、ZigBee、RF4CE、NFC/RFIDなど、さまざまなワイヤレス規格に対するコネクティビティソリューションも提供中である(図1)。

図1. TIが提供するワイヤレスコネクティビティソリューション
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マイコンの開発環境としては「LaunchPad」と呼ぶ評価ボードを取り揃える。センサー機能やコネクティビティ機能は「BoosterPack」と呼ぶドーターボードとして提供し、アプリケーションに応じて「LaunchPad」と「BoosterPack」とを任意に組み合わせることで、アイディアの実現や開発の実施に要する時間の短縮を狙う。

また、複数のクラウドサービス事業者と「クラウドエコシステムパートナー」を結んでおり、クラウドを活用したIoTサービスの構築も支援する。

IoT機器に最適なワイヤレス充電

原田 佳樹 氏
日本テキサス・インスツルメンツ
営業・技術本部
マーケティング部
アナログマーケティング 主事

講演の後半では原田氏が「センシング」と「パワーマネージメント」について説明した。

TIではさまざまなセンサーおよびセンサー用アナログフロントエンドを提供中である。代表的なところでは、温度センサー「TMP75」、湿度センサー「HDC1000」、ホール効果センサー「DRV5013」、誘導型近接センサー「LDC1000」、静電容量センサー「FDC1004」、照度センサー「OPT3001」、電流シャントモニター「INA226」などのほか、CO2等のガスセンサー用フロントエンド「LMP91000/LMP91050」、超音波レーダー用フロントエンド「TDC1000」、pH用フロントエンド「LMP91200」などを取り揃えている。

原田氏は「従来のアプリケーションではセンサーを単体で使うことが多かったが、IoTでは複数のセンサーを組み合わせる使い方が増えつつあり、TIはそれを一気に解決できる」と述べ、例として、照度センサー、温度センサー、湿度センサー、ガスセンサー、pHセンサーなどを活用するスマートアグリ(スマート農業)を挙げた。複数のセンシング製品によって、工場、家、家電、健康管理、ペット、インフラ、農業、漁業等の現状や変化を随時把握することで、ビッグデータの活用につなげるシステムを構築することが可能だ。同社は今後もセンサー関連製品の拡充を予定している。

「パワーマネージメント」については、エナジーハーベストとセンサーを搭載したウェアラブルデバイスに最適なワイヤレス充電ソリューションを紹介した。

エナジーハーベストでは、太陽光、熱、振動やRFなどから取り出したナノパワーを回収し管理する必要がある。業界標準の「bq25504」を使い、工場や農地などで、ワイヤレス監視用の太陽光発電システムが応用例として挙げられる。

ワイヤレス充電ソリューションでは、現在、WPC(Wireless Power Consortium)、PMA(Power Matters Alliance)、およびA4WP(Alliance for Wireless Power)の各標準団体に参加しているほか、WPCが定めた「Qi」(チー)規格に対応した5W品および10W品のワイヤレスパワーレシーバやワイヤレスパワートランスミッタなどを提供中である。たとえば、充電器側にQiトランシーバの「bq500212」を使い、ウェアラブルなどのIoT機器側にQiレシーバの「bq51003」とリチウムイオンバッテリチャージャの「bq25100」を使うと、2.5Wまでの電力を50%以上の効率で給電することができる。IoT機器では外部接点を介した従来の充電方法や電池交換が難しい場合が多いと想定され、こうしたワイヤレス充電を訴求していきたい考えだ。

充実した設計リソースで開発を支援

最後に、機器の開発を支援する同社独自の取り組みを説明した。原田氏は「センサーネットワーク向けの最適な製品・ソリューションを提供するのに加え、市場により早く投入するためのサービスも同時に提供しているのが特徴だ」と強調した。そのひとつが「TI Designs」である。同社の半導体製品を動作させるために必要な標準回路図、基板などの設計ファイル、部品リスト、テストレポートなど、いわゆる「リファレンスデザイン」をライブラリ化してウェブサイトを通じて提供する仕組みで、センサーアプリケーション以外も含めるとおよそ1600種類以上のリファレンスデザインを整備した。今後、アプリケーションの拡大に応じて、リファレンスデザインのさらなる拡充を進めていく計画である。

もうひとつがウェブサイト上で同社の半導体製品の動作をシミュレーションするオンライン設計支援ツール 「WEBENCH®」(ウェベンチ)である。2011年に買収した旧ナショナル・セミコンダクター社が提供していたサービスを拡張し、当初は電源レギュレータICのみが対象だったが、現在ではLEDライティング、センサー、フィルター、クロック、FPGA/マイコンなど、幅広い製品に範囲を広げている。

以上のリファレンス・デザイン・ライブラリの「TI Designs」、オンライン設計支援ツール「WEBENCH®」、評価プラットフォーム「LaunchPad」などを通じて、IoT機器を開発する顧客の早期開発を支援していきたい考えだ。

原田氏は「今回紹介したセンシング、プロセッシング、コネクティビティ、パワーマネージメントの各ソリューションを含めて、当社は10万品種以上に及ぶ製品ポートフォリオを展開している。設計を支援するさまざまなリソースの提供と合わせて、いわゆるワンストップとして、お客様のセンシングソリューションの構築に貢献していきたい(図2)」と述べて講演を終えた。

図2. 来るべきセンサーネットワーク社会に向けたTIの取り組み
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