日経テクノロジーonline SPECIAL

台湾ADLINK TechnologyのIoT戦略、COMとミドルウエア基盤を積極展開

組み込みシステム・ソリューションの大手として活躍する台湾ADLINK Technologyは、IoT(Internet of Things)を軸にした事業を積極的に展開している。その同社のキーパーソンが、IoTをめぐる同社の戦略について語った。同社は、様々なIoTデバイスの中核を担う小型コンピュータ・モジュールを積極的に展開。さらにIoTアプリケーションの基盤を支えるミドルウエア・プラットフォームも提供することで、IoT時代の組み込み開発におけるニーズに幅広く応える考えだ。

Dirk Finstel氏
ADLINK Technology
Executive Vice President

ADLINK Technologyは、1995年に台湾で創業。現在は、計測と自動化、組み込みシステム、および、産業用モバイルシステムという三つの分野を中心にグローバルなビジネスを展開している。同社が、いま注目している分野がIoTである。

同社が描くIoTの将来像によると、2020年までに、自販機、洗濯機、カメラなどを含めて、2000億個(台)のデバイスがIoTとしてインターネットに接続される。「IoTをベースにしたシステムが様々な状態監視や予防保守を可能にすることで、問題解決のスピードアップやサービスコストの低減ができるはずです。最終的には生産性の向上や利益の確保にもつながり、社会に新たな革新をもたらすでしょう」(同社Executive Vice President Dirk Finstel氏)。

同社は、COM ExpressやSMARC規格の小型コンピュータ・モジュール「COM(Computer on Module)」のほか、IoTアプリケーションの構築に最適な「SEMA Cloud」というミドルウエア・プラットフォームの提供などを通じて、IoTにまつわるユーザーのニーズに応える考えだ。

同社は、マイクロプロセッサの世界最大手Intel社が、IoT関連事業強化のために推進するメンバーシップ・プログラム「Intel Intelligent Systems Alliance」で最上位のプレミア・メンバーに認定されている。このプログラムは、Intel社が考えるIoTシステムの中で重要な役割を担う「インテリジェント・システム」のコンセプトを支持するとともに、インテリジェント・システムを実現する技術力を持っている組み込み機器メーカーを認定するというもの。「プレミア」「アソシエイト」「アフィリエイト」「一般」の4段階のメンバーシップがあり、上位のメンバーシップになるほどIntel社との連携が深くなる。最上位のプレミア・メンバーは、Intel社のマーケティングにもかかわる。

ADLINK Technologyの日本法人が2014年9月に開催した技術セミナー「進化する組み込みシステム ~産業用組み込み開発の最前線~」に登場した日本法人インテル IoTソリューション事業開発部部長の佐藤有紀子氏は、IoTを次の大きなビジネス領域として位置づけ、データセンター、ネットワークインフラ、IoTデバイスを束ねるゲートウェイ、そしてモバイルデバイスまで、エンドツーエンドのサービスやソリューションを取り揃えていく考えを明らかにしている(図1)(別掲のコラム「機器開発に利点をもたらすCOM、先進ユーザーが事例を紹介」を参照)。

図1 2014年9月11(木)に開催したセミナー「進化する組み込みシステム ~産業用組み込み開発の最前線~」

欧州で普及が進む「COM Express」

同社がIoTの分野に向けて展開する戦略製品の一つであるCOM Expressは、米国に本部を置く業界団体PICMG(PCI Industrial Computer Manufacturers Group)によって標準化されたコンピュータ・モジュールのフォームファクターおよび電気的な規格である。

Henk van Bremen氏
ADLINK Technology
Director

サイズは、95mm×125mm(ベーシック)または110mm×155mm(フル)のほか、55mm×84mm(ミニ)と95mm×95mm(コンパクト)の4種類が定義されており、サイズとは別にコネクタのピン割り当てによってさまざまなタイプが定められている。「欧州ではType 6の人気が高く、従来主流だったType 2からType 6への移行が進んでいます」(同社Director Henk van Bremen氏)。同社は、COM Expressに準拠したさまざまなコンピュータ・モジュールを提供している。「今後新たなマイクロプロセッサが登場するのに応じて、製品の幅を広げる考えです」(Bremen氏)。

ローパワーを重視した「SMARC」

Markus Grebing氏
ADLINK Technology
Software Director兼Product Manager

もう一つ同社が積極的に展開するSMARCと呼ばれるCOMは、ADLINK TchnologyとドイツKontron社が共同で開発したローパワーかつローコストのアプリケーション向けのCOMである。サイズは82mm×50mm(ショート)または82mm×80mm(フル)である。すでに同規格は両社の手を離れて業界団体のSGET(Standardization Group for Embedded Technologies)が標準化している。

SMARCの特徴は、プロセッサの割り当て電力が小さいこと。例えばCOM Expressの割り当て電力は50Wだが、SMARCは同2Wと小さい。ローパワーを特徴とするARMプロセッサのほか、インテルAtomプロセッサやQuarkプロセッサなどを搭載することを想定している。ADLINK Technologyは、SMARCに準拠したCOMのラインアップを着々と拡充している。

Stephen Huang 氏
ADLINK Technology
General Manager

COMに加えてADLINK TechnologyがIoTの分野に向けて展開しているソリューションが、SEMA Cloudである。SEMA CloudはクラウドベースのIoTアプリケーションを早期に実現するインテリジェントなミドルウエア・プラットフォームである。「遠隔監視、予防保守、ファームウェアの遠隔アップデート、センサーデータの解析、といったアプリケーションを、このプラットフォーム上で効率良く構築できます」(同社Software Director兼Product Manager Markus Grebing氏)。

IoTは社会や生活などあらゆるところに変化をもたらすでしょう。そのような時代に、ADLINK Technologyが展開している 「IoTは社会や生活などあらゆるところに変化をもたらすはずです。そのような時代に向けて、COM ExpressやSMARCなどのCOMや、SEMA Cloudのようなミドルウエア・プラットフォームが組み込み開発において果たす役割はますます重要になるでしょう」(同社General Manager Stephen Huang 氏)。

機器開発に利点をもたらすCOM
先進ユーザーが事例を紹介

ADLINK Technologyの日本法人ADLINKジャパンは、2014年9月11(木)に目黒雅叙園(東京都目黒区)で、「進化する組み込みシステム ~産業用組み込み開発の最前線~」と題したセミナーを開催した。同セミナーのプログラムの中で多くの来場者の注目を集めたのが、COMの活用事例をユーザー自身が解説した2件の講演だった。

須貝直樹氏
アンリツ 計測事業グループ
SCM本部 資材部 開発購買チーム 課長

その一つは、アンリツ計測事業グループ SCM本部 資材部 開発購買チーム 課長の須貝直樹氏による講演だ。同社の測定器にCOM Expressを採用した理由や得られたメリットを説明した。

同社では、最新プロセッサによる処理の高速化の実現、測定データのエクスポートに必要なコネクティビティ機能の搭載、生産ラインでも使える安定性、といった新たな開発ニーズに応えるために、測定器のプラットフォーム化(設計の共通化)を推進した。ただしコンピュータ部分を自社で開発すると工数が必要となるため、スペース効率、拡張性、帯域幅、長期供給、調達容易性(セカンドソース)などを考慮して、業界標準規格であるCOM Expressを採用した。その結果、従来モデルに比べて10倍の高性能化や低コスト化を実現できた。現在シグナルアナライザのMS2830AでCOM Expressを採用しており、他機種への水平展開も計画中だ。

小川 章氏
デンソーウエーブ
制御システム事業部 技術1部
技術5室 室長

もう一つの講演は、デンソーウエーブ 制御システム事業部 技術1部 技術5室 室長の小川 章氏の講演。産業用ロボットにCOMを採用した事例を紹介した。同社では開発工数の削減と開発期間の短縮節減が命題となっていた。本来の価値であるロボットの制御系と操作系に開発リソースを集中させるためだ。そこでそれ以外の部分については外部調達を検討。その結果の一つとしてCOMを採用することにした。同社は過去に既製品のカード型コンピュータを採用したことがあった。ところが、開発元が生産を終了してしまったことから調達が途絶えるという苦い経験をしている。その経験を踏まえて、規格と調達の両面で永続性が見込めるCOM Expressを採用したという。

お問い合わせ
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