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【総論】浮かび上がる製造業の新潮流、そのキーテクノロジーを探る

製造業の新しいプラットフォームを構築する動きが先進国を中心に進みつつある。そのトレンドを左右するキーテクノロジーを総括するフォーラム「Factory2014 Future Technologies ~製造業の新潮流を創る~」が2014年11月26日に東京都内で開催された。そこで登場した新しいコンセプトや先進技術は製造業の新しい時代をいち早くうかがわせた。

産官学を挙げて推進するドイツの大型プロジェクト「Industry4.0」をはじめ、ICT(情報通信技術)を駆使して製造業の新しいプラットフォームを構築する動きが世界的に加速している。「Factory2014 FutureTechnologies~製造業の新潮流を創る~」では、こうした大きなトレンドの先をにらんだ新しいコンセプトに基づく製品や技術を手掛ける企業が、最新の取り組みを紹介。会場には製造業にかかわる企業のキーパーソンを中心に約530人が集まった。

「人のスタディ」が出発点

星野 義和氏
米NewDealDesign 社
Master Designer

基調講演では、先進的な製品のコンセプト開発に数多くかかわったことから幅広い分野で注目を集めている米New Deal Design社でMaster Designerを務める星野義和氏が登壇。次世代のものづくりを意識したプロダクトデザインの在り方を解説した。

同社は、2000年に創業したデザインスタジオである。「主に工業デザインを手掛けており、テクノロジーとエクスペリエンスを高いレベルで融合させることを目指しています」(星野氏)。ウエアラブル・デバイスを利用した活動量計「Fitbit」や、撮影後に画像のピントが調整できるカメラ「Lytro」など革新的な製品の開発に数多く携わり、数々のアワードを受賞している。

星野氏は、まず自身がプロジェクトリーダーを務めた、Fitbitの開発プロジェクトを紹介した。今でこそ、ウエアラブル・デバイスの分野で代表的なブランドとなったFitbitだが、星野氏が開発に携わった当初は、部品が実装された小型プリント基板がむき出しになった状態だったという。

プロジェクトの当初から「女性をターゲットにしたウエルネス製品」というビジョンを掲げ、まずは心理や文化などの側面を含めて、女性の生活や行動に関する調査に着手した。「どんなにテクノロジーが革新的であろうとも、『人をスタディすること』が出発点だと考えています」(星野氏)。

アイコニックなデザインが重要

NewDealDesign社で、このプロジェクトにかかわったのは、女性デザイナー3人を含めた4人のチーム。このチーム内で、女性に関する調査結果を踏まえながら「体のどこにつければよいのか」「他人からデバイスが見えるようにすべきか否か」「アクセサリーとコーディネートできるような可能性は」といったテーマで議論を繰り返した。

プロトタイプの作製を含めた試行錯誤の末に完成したのが、ポケットや襟元にクリップする逆U字形のウエアラブル・デバイスである。ユーザー・インタフェースには数字や文字ではなく、「フラワーUI」と名付けた花の絵を採用した。歩数などの数字の進捗に伴って、機器が表示する花が成長する。この初代製品が大きな成功を収め、Fitbitの認知度を世界的に高めることとなった。

星野氏は、「新しいテクノロジーを活用して新しいカテゴリーを創り出す際には、アイコニックな(象徴的な)デザインが重要」だと指摘する。

そうした取り組みの典型例として紹介したのが、「Lytro」の開発プロジェクトである。Lytroはデジタルカメラの一種ではあるが、撮影した写真のピントを撮影後に変えることができるという画期的な機能を備える。同社が「ライトフィールド撮影技術」と呼ぶ新技術によって実現した。つまり手前にいる人物の顔にピントを合わせたり、背景の建物にピントを合わせたりといった処理が、撮影した後にできる。

こうした先進的な機能を備えたLytroの形状は、正方形を底面とした細長い直方体。「ユーザーの感情をかき立てるために、子どものころに遊んだ万華鏡や小型望遠鏡を意識したデザインを採用しました」(星野氏)。従来型カメラのデザインを踏襲することもできた。だが、あえてまったく異なるコンセプトのデザインにした。「新しいヒストリーを創り出すような製品には、既存製品と差異化したデザインが必要です」(星野氏)。

近未来の工場と同様の概念

続いて同氏は、New Deal Design社が最近注目を集める大きなキッカケとなった、Project Alaについて言及した。このプロジェクトは、Google社が2013年から推進している。Project Alaは、ブロック玩具のようにモジュールを組み替えることでユーザーが自由に機能をカスタマイズできるスマートフォンを実現することを目指している。具体的には、プロセッサーやストレージ、センサー、無線通信、2次電池などスマートフォンの機能をそれぞれモジュール化して分解。この中から必要な機能のモジュールを選択して、「endoskelton(エンドスケルトン)」と呼ばれるフレームに組み込むとスマートフォンが出来上がる。これがProject Alaの骨子だが、Google社は、基本的な仕様を策定し、その仕様に基づいてサードパーティがモジュールを開発するというエコシステムを形成することを狙っている。

実は、これに近いコンセプトがドイツの「Industry4.0」にも登場する。同プロジェクトのキーパーソンの一人で、工場のスマート化に関する技術イニシアチブ「Smart Factory KL」のChairmanを務めるDetlefZühlke氏は、2014年11月に来日した際に、Industry4.0では「プラグアンドプレイ」の手法で変更できる生産設備の実現を想定していることを明らかにしている。

先進的なコンセプトをいち早く採り入れたProject AlaにおいてNew Deal Design社は、デザインの領域で責任を担っている。「意匠だけではなく、エンジニアリングにも積極的にかかわっています」(星野氏)。

基調講演の後、アドバンテック、デジタルアーツ、三菱電機、オムロン、レクサー・リサーチ、シーメンスインダストリーソフトウェア、トレンドマイクロが登壇。それぞれ最新の技術、製品、ソリューションなどを解説した(三菱電機、オムロン、トレンドマイクロ、レクサー・リサーチの講演内容は以降の誌面で紹介)。会場内のホワイエに設けた展示コーナーには、CG Tech、デジタルアーツ、三菱電機、日本オイルポンプ、レクサー・リサーチ、トレンドマイクロの6社が出展した。