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【三菱電機】ものづくりの新時代を創る基盤、「機械」と「人」が協調する時代へ

三菱電機 役員理事でFAシステム事業本部副事業本部長を務める山本雅之氏は、Factory 2014 Future Technologies の講演で、同社のFA 事業の基本コンセプト「e-F@ctory」の全貌を紹介するとともに、その前提となっているものづくりの将来像について語った。

山本 雅之氏
菱電機 役員理事 FAシステム事業本部  副事業本部長

山本氏はものづくりを取り巻く社会環境の変化として、「地球温暖化」「安全意識の高揚」「ITや情報インフラの進化」を挙げた。これらの課題を乗り越えながら顧客が満足する製品を作り、適切な品質や価格で提供することが、将来のものづくりに求められるという。

それを実行するために、ものづくりのあらゆる局面でデジタル情報を活用する動きが進んでいる(図1)。市場の情報分析によるマーケティング、工程のムダやムリを防ぐためのシミュレーション、3次元の設計情報をもとにした試作、生産設備から集めたビッグデータを活用して故障を未然に防ぐ予防保全などだ。

図1 デジタル空間を活用した「ものづくり」
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だが山本氏は、「デジタル空間の情報だけで自動化が完結するわけではない」と警鐘を鳴らす。「現実世界の情報との間に、どうしてもギャップが残る。そのギャップはPDCAで解消するしかありません」(山本氏)。つまりPDCAを実際に回す「人」の存在が不可欠だと訴えた。

人の知恵や気づきが不可欠

例えば設計や試作工程では、デジタル空間でのシミュレーションでリードタイムやコストを圧縮。こうして最適化した設計データを現実の生産現場に落とし込めば、目的は達成できるはずだ。ところが実際には、生産現場で新たな不具合が発見されることが多い。こうした不具合を解消するには人の知恵が必要だ。そもそも現場で不具合を発見するのは人の五感によることが多い。

つまり人が経験に基づいて改善のアイデアを出し、それをデジタルの設計データにフィードバックして改善案を適用していくというサイクルがなくては、デジタル空間と現実世界のギャップは埋まらない。「その改善サイクルまでデジタル空間に取り込めると考えるのは非現実的。デジタル活用が進んでも、人がかかわる部分は残るでしょう」(山本氏)。

生産計画の立案やその後の量産においても同様だ。デジタル空間で生産工程の段取り替えの迅速化や省エネ化を図り、それを現実世界に展開することはできる。しかし、それだけでは生産システムは進化しない。現場の人の気づきなどをキッカケにした改善や、人による柔軟な対応がなければ、生産性や品質を高めることは難しい。自動化の推進や設備保全も同様で、人が感づいた情報をもとに設備を自動調整することが不可欠だ。

こうした考えに基づき山本氏は、人と機械が協調してシステムを発展させることが、ものづくりのどの工程でも求められると訴えた。そのうえで、このようなものづくりを実現する基盤のコンセプトとして「e-F@ctory」を紹介した(図2)。

図2 FAとICTをリアルタイムで連携する「e-F@ctory 」
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FAとICTをリアルタイムで連携

e-F@ctoryは、同社が2003年から提唱しているコンセプトだ。生産現場のFAシステムと情報処理を担うICT(情報通信技術)システムを連携させ、生産性向上活動の計測・診断・対策・管理等を「見える化」することで、工場の最適化を図るという考え方に基づいている。生産工程だけでなく開発や保守なども含めたものづくり全般を網羅しており、e-F@ctoryに基づく最適化を進めることで、トータルコストを削減できるという。

e-F@ctoryの大きな特徴の一つが、FA(Factory Automation)とICTのリアルタイムの連携だ。管理部門のICTシステムから生産現場に指示を発したり、FAシステムが発する稼働実績などのデータを管理部門のICTシステムに蓄積したりするには、両者をつながなくてはならない。しかしリアルタイム制御が中心のFAシステムを、ICTシステムに連携させることは容易ではない。これまでは両者の間にゲートウェイなどを置いてバッチ処理で行うしかなかった。

e-F@ctoryでは、FAシステムとICTシステムを結ぶMESインタフェースを介して、両者の間でリアルタイムに情報交換させる仕組みを構築した。「リアルタイム化によって情報のやりとりや制御のタイミングを合わせることができるようになります。これによって人と機械が協調するものづくりの環境が生まれるはずです」(山本氏)。

アライアンスによる強力なサポート

だが、FAとICTはそれぞれ対象となる機器の種類が多く、それらを結び付けて一つのシステムを構成するには、機器、ソフトウエア、インテグレーションのノウハウが必要になる。これを1社でまかなうことは難しい。そこで同社は個々の技術に秀でたパートナを組織化した「e-F@ctory Alliance」を構築し、ユーザーを強力にサポートする体制を整えている。同アライアンスには、2014年10月末時点で277 社が参加している。e-F@ctory Allianceによるシステム構築事例は、自動車、太陽電池、半導体や食品などあらゆる業界に広がっており、その数は世界全体で約5000件にのぼるという。

あえて人の作業を残した自動化

山本氏は、その事例の一つとして、岐阜県可児市の同社名古屋製作所可児工場のケースを紹介した。同工場が生産を担当する電磁開閉器の場合、製品の特性から工場は、大量生産の製品と多品種生産の製品の両方に対応しなければならない。そのため、大量生産向きだが段取り替えに負荷がかかる通常の全自動ラインや、柔軟な生産が可能だが大量生産が難しいセル生産を、電磁開閉器の生産に適用することは難しい。

そこで同工場では、ロボットによる自動生産と人によるセル生産を組み合わせた「ロボット・セル生産」を導入した。ロボット・セルでは、作業指示書をもとに段取り替えを行ったり品質をチェックしたりする担当者をセルの中に配置するが、組み立てはロボットを活用して自動化している。つまり、作業指示は人が出すが、組み立てはロボットが受け持つ。「完全自動化ができないわけではありませんが、実は費用対効果から考えて非現実的。そこであえて完全自動化せずに人による作業を残しました」(山本氏)。

このロボット・セルにより、一人当たりの生産性は全自動ラインに比べて1.3倍に拡大。さらに大規模なラインから小規模なセルに置き換えたことで、段取り替え時の治具変更などかかる作業が減少。面積当たりの生産効率は2.8倍に高まったという。一方で部品のピッキングには3次元のビジョンセンサを使い、パーツフィーダなしにバラ積み状態からの部品ピッキングを可能にするなど、可能な部分は徹底して自動化を図った。

講演の最後で山本氏は、e-F@ctoryが網羅する範囲を広げる姿勢を示した。「機器同士の連携を活用するためのトータルソリューションを積極的に提案する方針です」(山本氏)。

この講演の後に続いた四つの講演で同社は、「ネットワーク」「プラットフォーム」「アライアンス」といった三つの観点からe-F@ctoryの先進性を解説。さらにe-F@ctoryの具体的な事例も紹介した。

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