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過酷な環境でもタフで高信頼の冷却ファン、優れた技術力で先進的な製品が続々

電子/電気機器の性能や信頼性を損なう原因となる「熱」。その対策に欠かせない重要な役割を担う冷却ファンの技術と市場をリードする山洋電気は、長年蓄積した技術やノウハウを駆使した先進的な冷却ファンを次々と市場に送り出している。同社専務執行役員でクーリングシステム事業部 事業部長の児玉展全氏と営業本部 副本部長の坂本次郎氏に、冷却ファン事業に関する戦略や、市場で注目を集めている最新製品などについて聞いた。

児玉展全氏
山洋電気株式会社
専務執行役員 技術開発担当
クーリングシステム事業部
事業部長

山洋電気は、交流電圧で駆動するモータで羽根を回転させるACファンの日本におけるパイオニアである。「1965年にACファンを日本で初めて製品化したのが山洋電気です。1983年から直流電圧に対応したDCファンにも手を広げるなど技術の幅を広げながら展開してきた冷却ファン事業は、すでに50年近い歴史があります」(児玉氏)。同社の技術開発を統括する児玉氏は、冷却ファンの開発に長年かかわってきたパイオニアであり、プロフェッショナルの技術者でもある。

お客さまの装置の付加価値向上に貢献

坂本次郎氏
山洋電気株式会社
営業本部 副本部長
クーリングシステムビジネス担当

同社の製品ブランドである冷却ファン「San Ace」シリーズ。同シリーズでは、標準的なDCファン、ACファンのほか、「二重反転」「防水」「防水遠心」「防油」「長寿命」「耐温」「遠心」「ブロア」「ファン内部で交流電力を直流電力に変換して駆動するADファン」といった特徴を備えたラインアップを揃え、多彩な製品展開をしている。例えば、標準的なDCファンでは、サイズは36mm角から200φまで幅広く網羅。最近は機器内の発熱量が増えていることから、38mm角サイズで最高2万5000rpm、60mm角サイズで最高1万7500rpmなどの高回転タイプ(高風量、高静圧タイプ)も揃えている。ケーブル長、コネクタ形状、 PWMコントロール、回転数、センサの有無、「フィンガーガード」の有無など個別の顧客の要求に応じた仕様変更にも対応する。「独自の付加価値を追求するお客さまのために、カスタマイズも積極的に応じ、より装置に最適な製品をご提供しています。実は出荷数ではカタログに掲載している標準品よりも、カスタムのほうが上回っています」(坂本氏)。様々な顧客の要求に柔軟に対応できる技術力や提案力こそ同社の大きな強みだとクーリングシステムビジネス担当として、営業部門を統括している坂本氏はいう。

「San Ace」耐久ファンシリーズ
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「San Ace」シリーズは、幅広い分野の機器で採用されており、特に信頼性についてはさまざまな業界で高い評価を受けている。「長年の実績を通じてお客さまの評価を積み重ねてきました。最近では、『San Ace』を指名してくださるエンジニアの方も少なくありません」(児玉氏)。

独自の特徴を備えた機種を提供

図2 18万時間の長寿命と高風量を両立した「San Ace L」9LGタイプ(120mm角)
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「San Ace」シリーズの豊富な機種の中で、いま特に技術者の間で注目を集めているのが、2014年に発表した「高風量・長寿命ファン『San Ace L』9LGタイプ」「防水ファン『San Ace W 』9WLタイプ」「耐温ファン『San Ace T 』9GTタイプ」である(図2)。

2014年9月に発売した高風量・長寿命ファン「9LGタイプ」では、標準DCファンの期待寿命である4万時間に対して、およそ20年間に相当する18万時間の期待寿命を保証している。携帯基地局や再生可能エネルギーのパワーコンディショナなど、メンテナンスフリーが求められる用途を狙って開発した製品である。実装の高密度化による発熱量の増大に対応するために、同社従来品に比べて、風量を最大約1.8倍、静圧を最大約3倍に高めているのも特長だ。

「移動体通信基地局のメンテナンス間隔を長くしたいとのご要望を通信事業者のお客さまからいただき、期待寿命10万時間の長寿命ファンを1992年に開発しました。この製品の技術と実績をベースにさらなる長寿命と高風量を同時に向上させたのが、『San Ace L』 9LGタイプです」(児玉氏)。長寿命化を図るために、モータおよび軸受けの発熱抑制(自己冷却)、ブレードの動的バランスの向上など、この製品の随所に同社の技術力と工夫が盛り込まれている。

過酷な環境への対応で用途拡大

防水ファン「『San Ace W』9WLタイプ」は、移動体通信基地局、太陽光発電システムのパワーコンディショナ、高輝度LED照明装置、電気自動車(EV)の充電ステーションなど、屋外に設置される機器や設備に向けた製品である。こうした機器や設備の内部は湿気や結露にさらされる可能性がある。また、雨や雪が内部に吹き込むことも考えられる。このため冷却ファンにも防水性が求められる。

山洋電気では、1997年から移動体通信基地局向けを中心に防水ファンを展開しており、電気機器やキャビネットの異物侵入保護等級の規格でIP55等級(防塵+防噴流形)およびIP56等級(防塵+耐水形)に対応した製品を提供している。

図3 IP68等級の防水・耐塵性を実現した「San Ace W」9WLタイプ(60mm角、80mm角、92mm角)
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さらに過酷な環境条件での使用を想定して同社が2014年2月に発売したのがIP68等級(耐塵+水中形)に対応した「『San Ace W』9WGタイプ」である(図3)。防水性を高めただけではなく、期待寿命は、長寿命タイプと同じくおよそ20年間に相当する期待寿命18万時間を保証する。従来の防水ファンに比べて風量および静圧を高めた。「当社の防水ファンは、屋外に設置されるパワーコンディショナに数多く採用されており、国内市場では圧倒的なシェアを誇っています。最近では防塵・耐塵性能に注目したお客さまが、粉末などを扱う食品機械などの用途にも採用してくださるようになりました。IP68等級に対応した製品をラインアップしたことで、お客さまのニーズにさらに幅広くお応えできるようになりました」(坂本氏)。

市場のニーズを幅広く網羅

図4 -40℃から+85℃に対応した耐温ファン「San Ace T」9GTタイプ(40mm角から120mm角の6機種)
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2014年11月に発売された耐温ファン「『San Ace T』9GTタイプ」は、-40℃から+85℃という広い使用温度範囲の冷却ファンだ(図4)。従来製品の使用温度範囲は、-20℃から+70℃であったが、使用温度範囲が広がることで、従来の冷却ファンでは使えなかった幅広い用途に使用ができる。これだけ広い使用温度範囲をもつ冷却ファンは同社だけだ。

「より高い温度にも対応した冷却ファンが欲しいというニーズがある一方で、冷凍庫や冷蔵ショーケース内の空気の循環に使える冷却ファンが欲しいというニーズも寄せられていました。それであれば両方を満たすものを開発しようということで開発しました」(坂本氏)。サイズは、発売時点で40mm角から120mm角まで6機種を用意しており、具体的な用途としては、低温側では冷蔵冷凍関連機器や寒冷地域に設置される移動体無線基地局設備。高温側ではハイパワーの照明器具や通信装置、暑熱地域に設置される基地局設備などがある。

進化を続ける「San Ace」シリーズ

「San Ace」シリーズには、上記の三つのほかにも、さまざまな機種がラインアップされている。同社は、さらに継続して製品ポートフォリオの拡大を図る考えだ。「従来では考えられなかった風量や静圧を実現するまでに冷却ファンの技術は進歩を遂げています。技術的にはきわめて難しい領域に入っているといえますが、これからもお客さまが開発する最先端の製品の熱対策に貢献できるよう、さらなる高性能化に取り組みます」(児玉氏)。

時代をリードし、業界から厚い信頼が寄せられている山洋電気の「San Ace」シリーズ。新しい応用や技術の実現に向けて、これから浮上する新たな熱対策の要求に着実に応えながら、さらに進化を続けるに違いない。

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