日経テクノロジーonline SPECIAL

世界の自動車産業を支える立役者 さらなる成長のため人と技術に積極投資

一般的な知名度はそれほど高くなくとも、革新的な技術力が世界で高く評価される企業が、日本の製造業には多く存在する。自動車用トランスミッション(変速機)大手のジヤトコは、CVT(無段変速機)の世界シェア1位を誇る企業である。世界で戦う企業の内幕、エンジニアとして働くやりがいなどを、同社CEOの中塚晃章氏が語った。

高い技術力を背景にCVT分野で世界シェア1位

中塚 晃章氏
ジヤトコ株式会社
代表取締役社長 兼 CEO

「走る・曲がる・止まる」といった自動車の基本性能を向上させるために欠かせないのがトランスミッション(変速機)である。エンジンから生まれるパワーを走行に必要な力や回転に変え、伝達する装置である。

現在、トランスミッションの主流は、オートマチック車に搭載され、走行やアクセル操作に応じて、自動的に変速を行うAT(オートマチック・トランスミッション)。中でも最も普及しているのは、遊星歯車を使うステップ式ATだが、年々存在感を高めているのが、スムーズな変速と高いエネルギー効率が特長のCVT(無段変速機)だ。ジヤトコは、このCVTの分野で世界1位のシェアを誇るトップメーカーである。

世界1位の背景にあるのが同社の技術力である。米国の情報サービス企業「トムソン・ロイター」が、世界で最も革新的な企業などを表彰する『グローバル・イノベーター』を2年連続で受賞するなど、同社の技術力に対する評価は非常に高い。

その技術力を生かし、同社は品質とラインアップの幅広さを両立。「コンパクトカーから高級車まで、あらゆるカテゴリーの自動車に対応できるCVTをラインアップしているのはジヤトコだけ」と同社の中塚晃章氏は強調する。

例えば、ラインアップの中には、ハイブリッド車(HEV)など、電動化した自動車向けのCVTもある。これらの自動車は、モーターが変速機の機能を持つため、トランスミッションが不要になるのではないかという見方もあるが、電動化した自動車には航続距離の課題があり、モーターを最も効率よく回転させ続けるにはトランスミッションが必要不可欠と考え、それに対応するための研究開発を進めているという。

「HEVやEV、既存の内燃機関型の自動車を問わず、自動車開発の大きなテーマの1つにエネルギー効率の向上があります。このエネルギー効率に貢献できるCVTの需要は、今後、世界中で間違いなく伸びていくと考えています」と中塚氏は話す。

次世代のリーダーを育成する充実の教育、研修制度

CVTの分野で世界1位を誇る同社だが、トランスミッション市場全体でも世界2位のシェアを誇る。とはいえ、中塚氏は、このポジションに甘んじるつもりはなく、さらなる成長を見据え、「2020年までに、No.1のトランスミッションメーカーになる」ことを大きな目標として掲げている。

「そのために、まず海外市場を軸にした成長戦略を策定しています。メキシコ、中国、タイに生産拠点を設置しているほか、韓国、中国、フランス、スペイン、ロシア、アメリカなど8カ国にわたって13の開発・販売拠点を展開しています」と中塚氏は話す(図1)。実際、同社の従業員14,000人の約半分は、日本国籍ではない社員となっている。

図1 ジヤトコの海外拠点
生産拠点は、中国、タイ、メキシコの3カ国に設置。開発、営業・サービス関連の拠点は、現在、8カ国/13拠点を展開している
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また、この「世界1位」には生産台数だけでなく、あらゆる点で1位でありたいという思いも込められている。高い品質、革新的な技術を生む力、そして、すべての社員が意欲的に働ける会社であることなどだ。そのために、同社は、社員の教育・育成環境の整備に注力している。

具体的には、部門別の専門教育、本人が希望する語学や専門知識の学習に対する支援、あらゆる社員が共通で学ぶべきプレゼンテーションやコミュニケーション、課題解決手法といった教育に始まり、2年目の社員には海外研修の機会を提供するほか、入社年次やポジションに応じて各種リーダーシップ研修を用意している(図2)。選抜された社員のためのプログラムもあるが、2年目社員の「海外研修」のように機会の平等が徹底されているのも特徴だ。

図2 ジヤトコの人財育成プログラム
社会人としての基本スキルから専門教育、さらにはリーダーシップ研修まで、多様なプログラムが用意されている。また、機会の平等が徹底されているのも特徴だ
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「階層別にリーダーシップ研修を設けているのは、特定の優秀なリーダーが統率する組織ではなく、一人ひとりが得意分野を持ち、どんな状況でも、必ず誰かがリーダーシップを発揮して、難しい局面を乗り切ることができる組織をつくりたいという思いからです。価値観が多様化している現在、柔軟性に富んだ組織づくりは、成長には欠かせません」(中塚氏)

「ダイバーシティ」も重要なキーワードの1つになっている。

先に述べたように同社の従業員は、様々な国籍の人材で構成されている。世界を舞台に活躍したり、多様な背景を持つメンバーを束ねるリーダーになったりするには、グローバルな視点が求められる。「グローバルリーダーシップ研修」は、そのための施策だ。また、女性ならではの強みを生かした取り組みもある。女性の感性、きめ細やかさを生かし、「なでしこライン」という女性メンバーを中心とした編成で製造ラインを構築。「女性の視点で改善を繰り返すことで、効率的なライン作りを達成するなど、着実に成果を挙げています」と中塚氏は語る。

目標に共感し、一緒に成長する若きエンジニアを求めたい

CMなどのプロモーションが販売に影響を及ぼす日用品などと違い、トランスミッションは、性能や品質だけがシビアに評価される分野だ。そのため、エンジニアには高い意識と知識、技術力が求められるが、そのぶん「やりがい」をダイレクトに感じられる分野でもある。「世界1位になるという目標に共感してくれ、共に成長していけるような若いエンジニアにぜひ仲間になってほしい」と中塚氏は言う。

技術で世界とわたり合い、世界の頂点に挑戦する──。ジヤトコには、エンジニアにとって、ふたつとない最高の舞台が用意されているようだ。

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