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日本シノプシス

中野 淳二氏
日本シノプシス
技術本部  システムレベル・ソリューションズ  FAEマネージャ

ADAS機能の普及や自動運転技術の実用化が進む中、日本シノプシスは、「バーチャル・プロトタイピングによるADASシステムSWの安全性と信頼性の向上」と題し、車載ソフトウェアの早期開発と品質向上を実現するバーチャル・プロトタイピング手法について講演した。パソコン上に構築した仮想的なハードウェアモデルを使って、実ハードウェアの完成を待つことなく、ソフトウェアの開発と検証を進められるのが特長で、リグレッションテストや故障テストなどに効果を発揮する。

シノプシスが提案する「バーチャル・プロトタイピング」とは、コンピュータ上にハードウェアを仮想的に構築して、実ハードウェアの完成を待つことなく、ソフトウェア開発を早期に進めようという開発手法である(図1)。その背景にはソフトウェアの開発規模の増大がある。開発と検証を効率的に進め、かつ、品質向上を図るには、早期の開発着手が不可欠となっているからだ。

図1●コンピュータ上に仮想的に構築したハードウェアを使ってソフトウェアの開発や検証を早期に進める「バーチャル・プロトタイピング」
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今回の講演で日本シノプシスの中野 淳二氏は、そうしたバーチャル・プロトタイピング手法をADASの開発に適用するメリットや活用方法を説明した。

最初に、ADASの動向や課題について簡単に触れた。クルマをより簡便で身近なものにし、かつ、より安全性を高めていこうと、各自動車メーカーではADASの開発と実用化に取り組んでおり、衝突被害軽減ブレーキのほか、アダプティブ・クルーズコントロール、レーンキープアシスト、パーキングアシストなどはすでに市販車にも搭載されつつある。

ADASの先にあるのが自動運転である。自動車メーカーなどが発表しているロードマップによると、2015年ないしは2016年頃に一部機能の自動化が実用化され、2025年頃には完全な自動運転が実用化されると見込まれている。

中野氏は、ADASや自動運転の実現にあたっては前方カメラなどから大量のデータを取得して認識処理を行う必要があり、データ帯域や処理能力の確保が重要になるとともに、そうした複雑かつ大規模なシステムをどのようにバリデーションしていくかが大きな課題になっていくと指摘した。具体的には、ソフトウェアの開発、ソフトウェアとハードウェアの統合テスト、故障時のテスト、カバレッジテスト、リグレッションテストなどの着手をいかに早め、いかに効率を高めていくかが鍵になると述べた。

リグレッションや故障テストで効果を発揮

こうした課題を解決するひとつの方法がバーチャル・プロトタイピングである。中野氏によると、20年近く前に携帯電話用ソフトウェアの開発で広まった手法で、自動車分野や制御系分野でもここ10年程度の間に活用が広がってきているという。

従来のように試作ハードウェアの完成を待ってからソフトウェアの開発や検証を始めたのではシステム全体の開発期間が長くなってしまうため、冒頭で触れたように、コンピュータ上にハードウェアのシミュレーションモデルを構築して、実ハードウェアがない状態でもあたかもハードウェアが存在するような環境でソフトウェアの開発と検証を行うというのがバーチャル・プロトタイピングである。

シノプシスではすべてのソリューションに「Shift Left」(工程を線表の左寄りに)の考え方を取り入れており、バーチャル・プロトタイピングに関連したソリューションもその一環であるという。

中野氏は、バーチャル・プロトタイピングには開発や検証の開始時期を早めるだけではなく、次のようなメリットもあると述べた。

ひとつがリグレッションテストやカバレッジテストのようにテスト項目数が多いときに、実機を用いることなく、与えるパラメータを変えながら昼夜運転で並行実行ができる点だ。実際にテストスクリプトを組んでサーバーファームの豊富な計算リソースを使いながらそういった検証を実行しているユーザーもいるという。

故障テストもバーチャル・プロトタイピングのメリットが生かせる使い方である。ハードウェアをモデル化しているため、過渡的または永久的な故障を任意の部分に自在に注入できる。また、再現性に優れているためテスト効率を高められる。たとえば、故障シナリオを定義しておき、規定時間内に故障を観測できたか、あるいは、規定時間内に故障モードに移行できたか、といった挙動確認と合否判定を自動化することも可能になる。

マルチコアプロセッサの動作検証にも有効だ。実機環境ではマルチコアを任意のタイミングで完全に止めることは難しいが、バーチャルモデルなら簡単にできる。

以上のような特長から、「ADASや自動運転の分野は、バーチャル・プロトタイピングのメリットが出やすい」と中野氏は訴求した。

一方で、ADASや自動運転のようなきわめて複雑な機能のモデル化を課題として挙げた。

マイコンベンダーと連携してモデルを提供

後半では同社のソリューションを紹介した。「Virtualizer」というツールでバーチャルなシミュレーションモデルを生成したのち、「VDK(Virtualizer Development Kit)」を使って開発や検証を実行するというのが大まかな流れになる。なお、「VDK」は一般的なSDK(Software Development Kit)に相当する統合開発環境である。

「VDK」画面の一例は図2のようになるという。バーチャルな液晶ディスプレイやUARTなどをパソコン上に表示させながらデバッグができるほか、マルチコアプロセッサーの内部トレース(図左上)や、他社のデバッガ(右上)との連携も可能である。AUTOSAR OSにも対応しており、OSの関数と紐付けたデバッグもできるという。

図2●バーチャル・プロトタイピングの統合環境である「VDK」を利用した開発の一例
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バーチャルなハードウェアとしては、フリースケール・セミコンダクタ、ルネサス エレクトロニクス、インフィニオン テクノロジーズの各社から出ている車載マイコンのモデルがそれぞれ用意される。これら3社とは「Center of Excellence」という取り組みで連携しており、「これから使われていくであろう最先端の車載マイコンのシミュレーションモデルを、それぞれのマイコンベンダーと共同で開発していく」(中野氏)。

また、ARMについても、すべてのコアのシミュレーションモデルを提供する契約を結んでおり、Cortex-M系、Cortex-R系、およびCortex-A57/A53などのARMv8をはじめとするCortex-A系と、ARMv8 big.LITTLE処理のモデルが利用できる。また、FPGAにCortex-A9 DUALを統合したアルテラの「アルテラSoC」についてもモデルが提供される。

デバッガでは、ARM(DS-5)、ローターバッハ、Green Hills、PLSとの連動が可能なほか、MathWorksのMATLAB/SimulinkやベクターのCANoeといったツールもサポートしているという。

最後にまとめとして、中野氏は、ADASや自動運転の技術はこれからも発展していく一方で、開発や検証が大きな課題になっていくとの認識をあらためて示すとともに、バーチャル・プロトタイピングのように開発や検証を効率化する仕組みが必須になってくると述べた。

さらに中野氏は、「シノプシスはバーチャル・プロトタイピング分野のリーダーであり、ワールドワイドで40%ものシェアを有します。日本国内のみならず、ワールドワイドで自動車OEMやサプライヤの皆様をサポートいたします」と訴求した。

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