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TRW オートモーティブジャパン株式会社

2、3年先をメドに、条件付きの自動運転機能を備えた自動車が、高級車から次々と市場投入され、大衆車も運転支援機能の搭載が当たり前になる。こうした市場の動きに沿って、周辺環境を正確に検知し、車両を制御するセンサーの開発が進められている。TRWオートモーティブ・ホールディングス グローバルエレクトロニクス部門 プロダクトプランニンググループ担当ディレクターのアンドリュー・ワイデル氏は、レーダーとカメラを中心に、自動運転や運転支援に向けた最新の技術動向を紹介した。

アンドリュー・ワイデル氏
TRWオートモーティブ・ホールディングス
グローバルエレクトロニクス部門
プロダクトプランニンググループ
担当ディレクター

横滑り防止機構と電動ステアリングが普通に搭載されるようになり、機構面では自動車の運転を自動化する素地が出来上がった。今後、自動運転を実用化するためには、これまでにも増して安全性の確保が重要になる。特に自動車の周辺環境を正確に検知するためのセンサーが重要だ。

TRWは、アクティブ・セーフティ(予防安全)とパッシブ・セーフティ(乗員安全)に向けた技術で、豊富な実績を持つ世界有数の自動車部品メーカーである。安全性を確保するセンサーの分野でも、レーダーを1970年代から、カメラを1990年代半ばから開発してきた。そして、2002年には衝突防止用の77GHz長距離レーダーを、2008年には車線維持支援機能用のカメラを製品化。その後、様々な自動車メーカーの多くの車種に採用された実績を持っている。

継続的発展に自動運転は必須

「ADASや自動運転は、自動車産業が今後も継続的に発展していくために必須の技術です」(ワイデル氏)という。

現状の自動車は様々な問題を抱えている。安全性に関する問題として、交通事故による死亡者数が減らなくなっている。また、日本をはじめとする先進国では高齢化が進み、視野が狭くなる傾向がある65歳以上の運転者数が急増する。さらに、スマートフォンなどを運転中に操作する不注意な運転者も後を絶たない。

燃費向上に関わる問題も残されている。燃料の約40%が駐車場を探している時など、エンジンの効率向上だけでは対処できないシーンで消費されている。また、燃料の消費を減らすためには小型車の普及が欠かせないが、普及促進の条件として小型車の安全性向上が求められている。

これらの問題の解決策として期待されているのがADAS、そして自動運転なのだ。普及を加速させるべく、欧米、そして日本でも商用車から一般車へとADAS搭載を義務化する動きが広がっている。自動運転は、2014年3月にウイーン交通条約が改正され、運転者が自動運転機能を無効化あるいは停止できることを条件に、ついに合法化された。また欧州経済委員会(ECE)の規制79号で、最高速度10km/時(許容値20%以上)までの自動操舵が許可された。米国では、カリフォルニア、フロリダ、ネバダ、ミシガンなど各州で、既に自動運転車両の使用が許可されている。

こうした政府と自動車業界全体の動きに呼応して、自動運転の技術開発が一気に加速しつつある。Society of Automotive Engineers(SAE)では、自動運転技術をレベル0からレベル5までの6段階で定義している(図1)。「今後約3 年の間に、レベル3の自動運転が高級車に搭載されることになるでしょう。そして大衆車にもレベル2に対応した運転支援機能が普通に搭載されることが確実です」(ワイデル氏)。

図1●Society of Automotive Engineers(SAE)が定義する自動運転のレベル
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自動運転に向けた技術が高度化

自動運転のレベルは、年々上がっていく見込みである。それに応じて、自動車に投入する技術も高度化していく。 

まず高級車に搭載されると見られるレベル3の自動運転を実現するためには、全方位に向けた数多くのレーダーやカメラを搭載して、周辺状況を正確に把握する必要がある。そして、センサーで収集したデータは、ADAS ECUに集められ、ここで車両をどのように制御したらよいのか判断を下すために使う。また機構面でも、より高い安全性を確保するために、ブレーキおよびステアリング・システムの冗長性を強化することになる。

大衆車にも普及すると見られるレベル2の運転支援機能では、まず安全性を確保することに主眼をおいたセンサーが搭載されることになる。センサーの低価格化が進み、自動車メーカーが採用しやすい状況が生まれつつある。このとき、より高度な機能を備えたセンサーを搭載することによって、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)や渋滞走行支援システムなど、運転者の快適性を向上させる機能の提供が可能になる。ただし、ブレーキやステアリング・システムの冗長性に関しては、デュアルプロセッサーの採用など一定の範囲に限られると見られている。

自動運転の安全基盤を提供

TRWは、ADASや自動運転が高度化していく中で、レーダーとカメラを適材適所で併用するフュージョン・システムの採用が拡大すると見ている。そして、フュージョン・システムを中心に据えた、自動運転システムの主要コンポーネントを設計・製造し、自動運転の安全基盤を提供していく(図2)。

図2●TRWの自動運転技術
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現在TRWは、レベル1の運転支援に当たる並列駐車の支援、中速走行時などでの追従停車機能付きACC、高速走行時の車線維持支援とACCに対応できるレーダーやカメラを提供している。2、3年先の量産を目指して、レベル2もしくはレベル3に対応できる製品を開発している。これによって、縦列駐車の支援、渋滞走行支援、高速道路運転支援が可能になる。さらに、レベル4とレベル5に対応するための技術の準備も開始している。

カメラでは、2015年の市場投入を目指して、ユーロNCAPの自動緊急ブレーキの評価基準に対応できる単眼カメラ「S-Cam3」を開発中である。オランダMobileye社のイメージプロセッサー「EyeQ3」と130万画素の高画質撮像素子を搭載した製品である。2018年には、イメージプロセッサーを処理性能が前世代比6倍の「EyeQ4」に、撮像素子を230万画素のものに向上させた単眼カメラ「S-Cam4」を市場投入する予定だ。さらに用途の異なる3種類のレンズを搭載した複眼カメラ「Tri-Cam」の開発も進めている。信号認識、車両割り込みなどを広範囲で検知するための魚眼レンズ、S-Cam4と同等の機能を持つ中距離レンズ、250mまでレーダーとフュージョンする長距離レンズを備える。

レーダーでは、自動運転までの幅広い用途に適用できる第4世代のレーダー・センサー「AC1000」を用意している。AC1000は、前方、側方、後方の全方位を網羅できる柔軟なプラットフォームである。前方監視レーダーとしては、高速走行時のACCに向けた長距離モード、市街地走行時の自動緊急ブレーキに向けた短距離モードのいずれにも対応可能である。その他、死角検知、車線変更支援、自動運転に向けた全方位検出にも適用できる。

さらに、レーダーやカメラからのデータを基に半自動運転に向けた全方位検知、車両の制御を実行するアクティブ・セーフティ・ドメインECU(SDE)も提供している。既に第1世代のSDEはBMWに搭載されている。そして、2018年の市場投入を目指して、第2世代の「SDE2」も開発中である。マルチプロセッサー構成を採用することで、より高度な処理を可能にする。AUTOSAR 4.Xソフトウェア・アーキテクチャに対応できる。

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