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【住友理工】新生「住友理工」、目指すは自動車部品の グローバル・メガサプライヤー

自動車用防振ゴム注)やホースの大手メーカーとして名高い東海ゴム工業が2014年10月、「住友理工」へと社名を変え、生まれ変わった。創業時からのコア技術「高分子材料技術」と、材料から最終製品まで自社評価できる「総合評価技術」を基盤に、グローバル・メガサプライヤーの地位確立に向けて歩み始めた。さらに、車体の軽量化やエンジンの少気筒化など、時代の要請に応える技術を、お客様のニーズを先回りして用意し提供していく。2020 年代初頭に1兆円を売り上げるという大きな目標を掲げる同社 代表取締役社長の西村義明氏に展望を聞いた。

住友理工は、2020年代初頭に売上高を1兆円にする目標を掲げている。

現在の売り上げは、約3700億円。
1兆円という目標は、かなり高いハードルだと言える。この高い目標を達成するため、現在、中期経営計画「2020年VISION」を策定中だ。売り上げの約8割を占める自動車部品事業では海外自動車メーカーを対象にした顧客開拓、新興国市場への注力、時代の要請に応える新技術の開発・事業化の3つを軸にした戦略を推し進め、グローバル・メガサプライヤーを目指す。また、自動車以外の分野にも、積極的に進出していこうと考えている。

こうした戦略をより効果的に遂行するために社名を変更し、グローバルブランドである「住友」を冠した。私たちのことをまだ知らない世界のお客様、自動車業界以外のお客様に事業や製品についてより知っていただくためだ。

防振ゴムとホースで世界No.1の座を盤石に

住友理工の主力事業である自動車用防振ゴム事業とホース事業では、世界の自動車業界の中での存在感をさらに高めていく。自動車用防振ゴムでの世界シェアは、現在23%で第1位(2013年度当社推計)。これを30%近くにまで引き上げる。また自動車用ホース事業は世界シェア12%(同)で、競合2社とともにトップグループにつけており、ここでは単独トップの座を狙う。

私たちは2013年、欧州企業2社を買収し、事業規模が一回り大きくなった。防振ゴムに関しては2013年5月、ドイツの自動車用防振ゴムメーカー、Anvis Group GmbHを買収。日系自動車メーカーの欧州拠点への供給体制を強化し、同時に欧州の非日系自動車メーカーへの拡販や現地ニーズを反映した製品開発が可能になった。

またホースに関しても、2013年2月にイタリアの自動車用ホースメーカー、Dytech-Dynamic Fluid Technologies S.p.A.を買収。ホース単体だけではなく、周辺部品も合わせたモジュールを一括供給できるようになった。20カ国以上、100を超える拠点から、世界中のどこにでも部品を供給できる体制が整った。

さらに、開発拠点も世界の5極に置いている。特に、年間2千数百万台もの自動車を生産する中国をはじめとした新興国で現地企業に製品を供給していくためには、きちんとした開発体制が必須になる。製品を取り付ける車体が変われば、防振ゴムへの要求仕様やホースの形状が大きく変わる。ゴム材料や形状をカスタマイズした個別設計が求められる。そして、でき上がった試作品を自動車に組み込み、実際にエンジンをかけて走らせながら、検証と改善を繰り返し、製品を仕上げていく(図1)。自動車メーカーとの間で、こうした密な関係での開発を現地で行うことが、とても重要となる。

防振ゴムやホースで、このような開発と生産の体制を持っているメーカーは、世界中どこにもないと自負している。

図1 素材開発から測定・検査まで、お客様のそばで一貫実施

時代の要請に応える新技術を先回り開発して提案

新技術に関しては、自動車の小型・軽量化や環境規制への対応が欠かせない。

防振ゴムやホースでは、ゴムの高耐久化と高機能化を推し進め、さらなる小型化を追求する。ゴム部品は自動車の中で金具と一体化して使われており、小型化できれば、こうした金具の軽量化に貢献できる。

さらに現在、燃料効率の向上を狙って、エンジンの少気筒化が進められている。排気・冷却損失や部品間の摩擦損失の低減などに効果的な少気筒化だが、振動は激しくなってしまう。大きくなる振動をきっちりと抑え込むのが住友理工の役割だ。

一方ホースでは、厳しさを増す環境規制を確実にクリアする技術開発を進めていく。ホースの中に燃料や冷媒を通すと、ゴム層やつなぎ目から微量だが透過や漏れが発生し、大気に蒸散してしまう。蒸散量を規制値以下に抑える技術開発がキーとなる。

また、ホースの供給形態を、自動車メーカーが追求している部品のモジュール化に合ったかたちにしていく。これまで私たちは、ホース単体だけを供給してきた。Dytech社を買収したことで、ホース周辺、さらにはその先までを含めモジュール化できる技術を手中にした。部品間の擦り合わせを済ませ、そのまま車体に組み込めるモジュールを供給していく。

そして自動車ユーザーの目線でニーズを察知し、これに応える製品を自動車メーカーに提案したい。モジュールを供給するということは、社会での責任も重くなるということだ。その責任の重さと、持っている専門性の重要性を自覚して対応していく。

自動車分野で培った力を生かし新しい時代、新しい用途を拓く

その他、将来の発展につながるとても楽しみな技術・製品も出てきた。

まず、トヨタ自動車の燃料電池(FC)自動車「MIRAI」のFCスタックに、当社のゴム製シール部材「セル用ガスケット」が採用された。FC内で水素と酸素の流路を保ち、生成された水の排水性を高めることで、安定した発電を支える部材である。FC自動車が普及することを想定し、今後も継続的に技術を洗練させていく。

さらに、「リフレシャイン」という可視光の70%を通しながら、熱を伝える近赤外光を90%遮断する窓用高透明省エネフィルムや、吸音材でありながら放熱機能を持つ磁気誘導発泡ウレタン「MIF」などユニークな製品をそろえている。

自動車以外の分野での事業開拓にも積極的に取り組む。

例えば、介護分野での応用を想定して、「スマートラバー(SR)」と呼ぶゴム製圧力検知センサーを開発した。寝たきりの人の床ずれを防ぐ、座り心地を解析するといった、柔らかいゴム製センサーならではの用途を開拓できると期待している。2015年以降、順次上市していく。この技術は、自動車のステアリングに組み込むことで、運転行動の予兆を察知するのにも利用できるだろう。

こうした製品の供給を通じて、今後は、これまでお付き合いのなかったお客様とお話をする機会が増えてくる。住友理工が培ってきた高分子材料技術と総合評価技術を生かし、厳しいニーズに応える製品を開発・供給していくとともに、新しい時代を拓くお手伝いをしていきたいと考えている。

注) 防振ゴムは、エンジンや足周りを支えて路面やエンジンからの振動を制御し、快適な乗り心地と安定した操縦に欠かせない役割を担っている。

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