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【ストラタシス】デジタルマニュファクチャリング時代到来、3Dプリンターが自動車産業を変える

これまで試作品の製作を中心に使われてきた3Dプリンターが、工場で使う治具作りや、製品を構成する部品作りに活用されるようになった。デジタルデータから直接、モノを生産する工法「DDM(Direct Digital Manufacturing)」を、当たり前のように駆使する時代が到来している。米国の自動車メーカーでは、DDMのフル活用に向けて、大型3Dプリンターが活発に導入されている。欧州でも、2014 年から自動車メーカーによる本格的な導入が始まった。ストラタシス・ジャパン 代表取締役の片山浩晶氏に、自動車業界での3Dプリンターの活用状況と今後の展開を聞いた。

3Dプリンターは、切削やプレス、射出成形など、従来工法のすべてを置き換える魔法の装置ではない。従来工法とDDMは、使い分けてこそ最大の効果が得られる。3Dプリンターの適性を見極めて使うことが重要である。

さらに3Dプリンターは、日進月歩で進化し続けている技術である。お客様の多くは、発展途上の製品であることを理解した上で導入している。この大きな可能性を秘めた技術を今から使い始め、機が熟したとき、競合に差をつけるためだ。3Dプリンターを効果的に活用するためには、その潜在能力を引き出すためのノウハウを、使い手が持っていることがとても重要になる。

3Dプリンターを使えば、これまで当たり前のように受け入れていた構造や意匠の制限を、取り払うことができる。射出成形で型から取り出すために必要だった抜き勾配も、薄肉化に欠かせなかったリムでの補強も要らない。また、従来工法では到底実現不可能な、野心的な意匠や斬新な構造を生み出して、製品の価値を上げることもできる。

しかし、従来工法に慣れた設計者が、いきなり制約のない設計をしようとしても、簡単には適応できない。現在3Dプリンターを導入しているお客様は、こうした未来を開くためのノウハウを買っているのである。

圧倒的に使いやすい治具を迅速かつ安価に入手

自動車業界でのDDMの活用シーンは、大きく2つある。組み立て作業で使う治具の作製と、最終製品に使う部品の生産である。このうち治具の作製には、今すぐDDMを実践できる。一方、部品の生産は、品質や信頼性など、今後クリアすべき課題が残されている。こうした課題を一つひとつ解決し、同時に設計のノウハウを蓄積していくことが、DDMを活用する体制を整える上で重要になる。

たかが治具の作製と思う人もいるかもしれない。しかし、そこでの革新は、思いの外大きなインパクトをもたらす。例えば、自動車のエンブレムを取り付ける治具。これは、金属製の部品で作られており、作製期間が長く、重く作業しにくく、かつ高コストだった。

BMW社やVolvo社など、欧米の多くの自動車メーカーでは、DDMによってプラスチック製治具を作成し、既に生産現場で使っている。軽く、人間工学を応用した形状の治具を使うことで、作業効率が格段に向上した。また、Volvo Trucks社によると、1車種当たり30種類以上用意する治具の作製期間が94%以上短縮、単位体積当たりの材料コストも1/100に圧縮したという。

ただし、3Dプリンターは、開発期間を劇的に短縮する半面、1個当たりの作製に要する時間は長い。このため、大量生産には向かない。

これには既に解決策を用意している。子会社であるRedEye社は、米国最大手のサービスビューローSolidConcept社およびHarvest Technology社の買収・合併後、Stratasys Direct Manufacturing(SDM)社と社名変更。1シフト当たりたった2人の体制で、100台以上の3Dプリンターを24時間稼働できるデジタルファクトリーとなった。ここでは、お客様の設計データを基に、受託生産するサービスを提供している。DDMの発表後、日本国内からも多くの声が寄せられており、パートナーなども含め、国内でのデジタルファクトリーの立ち上げもニーズを見ながら検討している。

さらに、3Dプリンターを保有する私たちのお客様やSDM社の施設をネットでつなぎ、必要に応じて設計データを飛ばし、タイムリーに生産できるインフラが構築されつつある。グローバルなビジネスを展開している自動車業界のお客様は、柔軟なサプライチェーンを構築できるだろう。

また、3Dプリンターの可能性を理解し、その潜在能力を引き出せる設計者を育てるため、クラウド型のCADプラットフォームを提供するGrabCAD社も買収した。治具や最終製品に組み込む部品の中には、1から自社で設計する必要のないものも多い。こうした部品を設計するためのたたき台となる3D設計データを簡単に入手できる。

図 3Dプリンターの用途別市場規模
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世界中の知恵を活用して3Dプリンターの可能性を解き放つ

現在GrabCADには、「CATIA」など主要な3D設計ツールで利用できるデータが約68万ファイルあり、着実に増え続けている。また、ここには200万人強のエンジニアやデザイナーが参加しており、こうした専門性の高い人材に仕事を依頼することもできる。General Electric社やTiffany&Co.は、仕事を外部委託する場として定期的に利用している。外部の力を借りることで、スピード面やコスト面だけではなく、内部人材からは出てこない斬新なアイデアを得るメリットがある。

欧米の先駆的なユーザーの中には、既に部品の生産に3Dプリンターを活用するところが出てきている。

米国の航空宇宙産業では、ダクトなどの部品を3Dプリンターで作っている。航空業界では、構成する部品の仕様変更が頻繁に発生するが、それにも柔軟に対応できる。自動車業界でも、ダッシュボードの裏側に入っている部品などを作る事例が出てきている。

所有する自動車に自分の個性を反映させるために使うカスタムパーツは、DDMでの生産に最も適した題材だ。例えば、100種類の製品を作り分け、その中から個々の消費者の嗜好に合ったものを選んでもらうといった製品企画にも、容易に対応できる。

日本の自動車業界の方々に知っていただきたいことがある。例えば、フランスのBugatti Automobiles社では、数多くのエンジンの試作品を3Dプリンターで作り、実際に動かし、ABテストを繰り返してよりよい機構を探求している。この手法によって、新しいエンジンを20カ月早く完成できたという。

知っていただきたいのは、こうした型破りなものづくりが、実際に世界で始まっていることだ。じっくりと試作品を作り込むのではなく、素早く試行錯誤を繰り返して、着々と新しい知見を蓄積しているメーカーがある。現在は、ものづくりの転換期の中にある。この機会に自社のポジションを上げようと画策する企業は多い。私たちは、日本の自動車産業が勝ち抜いていくためのサポートをしていく。その糸口となる、自動車業界に特化したDDMのセミナー*を4月22日大阪、23日名古屋、24日東京、5月14日福岡で開催する。

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