日経テクノロジーonline SPECIAL

【ビクトレックスジャパン】金属から樹脂へ、自動車部品のイノベーションに「ビクトレックス」という解

クルマは金属部品を集めて作るものと思い込んではいないだろうか。今、自動車部品の金属代替は新たな領域へと挑戦の幅を広げている。 自動車産業が誕生してから100 年を超え、クルマの要素技術が大きく変貌している。 内燃機関が電気モーターに、ドライバーが自動運転のコンピューターに。材料の刷新もこれに匹敵する大きな動きだ。 この動きの主役となっている樹脂材料が、英Victrex 社の「VICTREX PEEK(以下PEEK)」である。 ビクトレックスジャパン 代表取締役の神成貴晴氏に、PEEK導入の効果を聞いた。 

金属から樹脂へ。クルマでは今、中核機構の材料を見直して次世代を拓くイノベーションが起きています。 軽く、摩擦が小さく、耐久性に優れ、振動を伝えにくい樹脂で部品を作ることで、燃費や安全性、感性品質を向上できます。 このような部品には、耐熱性、耐摩耗性、高強度、摺動性、耐薬品性といった高度な要求を同時に満たさなければなりません。厳しい要求に応える最もタフな樹脂。 これがPEEKなのです。

他に代わる樹脂がない圧倒的なオールラウンドプレーヤー

PEEKの最大の特徴。それは、圧倒的な“オールラウンドプレーヤー”であることです。 多くの樹脂材料は、突出した特性があったとしても、同時に欠点も抱えています。 これに対しPEEKは様々な特性を、高いレベルで兼ね備えています。 これが、シール部品、バルブ、ベアリング、軸受など、自動車部品の中でも特に高い耐久性と信頼性を要求される場所にPEEK が多く使われている最大の理由です。

特に高耐熱性は傑出しています。融点は343 ℃、連続使用温度は260 ℃(UL746B)というデータが示すように、内部が激しく燃えるエンジンそのもの以外ならば、たいていの場所で利用可能です。

また、耐薬品性も高く、ガソリン、エンジンオイル、トランスミッションフルードなど強い薬品が触れる部分でも使えます。 このようにPEEK自体の基礎特性が優れているため、さまざまな用途に展開できることも大きな魅力です。

加工工程とシステム構成を簡略化し自動車全体のコストを低減 

PEEKを使って部品を作ることで、自動車全体のコスト低減効果も期待できます。 正直に申し上げると、単位重量あたりの価格は、金属よりPEEKの方が高価です。 しかし、部品の加工コスト、PEEKの採用で不要になる周辺部品のコストを積み上げると、結果的に自動車全体のコスト低減につながります。

簡単な比較ですが、3次元形状の部品を作る場合、金属材料は、多くの工程を経て作られます。材料を曲げ、穴を空け、複数の部位を溶接し、最後に防錆処理も施す。これに対し、PEEKなど樹脂材料では、射出成形だけで加工が終わります。

また、自動車の中には、金属部品の欠点を補うための仕組みが意外と多くあります。例えば、金属部品同士が触れた状態で激しく回転すると、部品が摩耗してカスが出ます。この発生を防ぐためにはオイルを注入して潤滑させる仕組みが必要です。

加えて、ノイズ対策の仕組みも欠かせません。これら一つひとつがコストアップの要因となります。PEEKを使えば、金属部品の利用に付随するこうした仕組みが、不要になる可能性があります。

日本のお客様のために都心に試作と試験の場を提供

私たちは、日本の自動車業界が進めているイノベーションに、PEEK が大きく貢献できると確信しています。 2011年、Victrex社は、PEEKの効果を理解し、その性能を体感できる場として、ジャパン・テクノロジーセンター(JTC)を東京都心に設置しました。豊富な海外事例の中から、なぜPEEK が使われ、クルマの価値向上に我々がどのように貢献しているかを紹介しています。

また、射出成形機を設置し、お客様が持ち込んだ金型を使って、部品を試作できるようにしています。 試作後は、その場で摩擦・摩耗の試験や量産時の加工条件の最適化も検討できる設備を用意しています。

お客様の視点に立って最も効果的な解を共に考える

主要部品の材料を金属から樹脂に替えることは、お客様にとって大きなチャレンジです。日本のお客様と共に、PEEKを用いたイノベーションをサポートするのが、我々のエヴァンジェリスト(伝道師)としての役割であると考えています。

お客様が開発するクルマの価値を上げ、コストを削減するには、お客様の視点で有効なPEEKの利用法を考える必要があります。私たちは、お客様が検討している技術的な課題を受け止め、一緒に考え、最も効果的な提案をしています。仮にPEEKを使う必要がないと分かれば、他社が扱う樹脂の利用を勧めています。

図 ビクトレックスが提案するイノベーションの一例
部品統合や機能統合により、燃費向上やコスト削減だけでなく設計自由度を飛躍的に向上させることも可能である。

私たちは世界30カ国以上に拠点を置くグローバル企業ではありますが、全社員が700人にも満たない規模です。自動車分野だけに限定しても、少数精鋭のチームが自動車業界のサプライチェーン全体を俯瞰しつつ、全世界の企業を相手に日々提案活動に励んでいます。このため世界各地の拠点間の連携は密であり、日本にいながら世界の動きを反映した提案ができます。

こうした取り組みの結果、日本のお客様の反応に手応えを感じるようになってきました。今後、PEEKで作った部品は、さらに多くの場所で使われるとみています。

当社が現在保有している生産能力は年間4250トンですが、販売予測では近い将来足りなくなる見込みです。このため設備投資を行い、2015年上期中にはさらに2900トン分の生産能力を上積みする予定です。

Victrex社では、製造業の技術革新をリードする日本市場をとても重要視しています。JTCの設立を直前に控えた時に発生した東日本大震災の折も、英国本社は「日本で技術開発の灯が消えない限り、JTCは日本のお客様のために必ず設置する。」と断言しました。私たちは、あらゆる挑戦を続けるお客様と力を合わせて、PEEKで起こすイノベーションとクルマの未来について考えていきます。

お問い合わせ