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【オムロン】「人」と「機械」の新たな関係を追求、社会変化を見据えて新技術を展開

オムロンは、Factory 2015 Spring の講演で、IoTを軸にした製造業のイノベーションに対する同社の取り組みについて語った。制御機器メーカーであると同時に製造業に携わるユーザーでもある同社は、「人」と「機械」の最適な関係を追求しながら、それぞれの立場から革新的な取り組みを進めている。

本条 智仁氏
オムロン
インダスリアルオートメーションビジネスカンパニー コントロール事業部 
第1事業推進部 事業推進1課 課長

演壇に上ったオムロンインダストリアルオートメーションカンパニーコントロール事業部の本条智仁氏は、同社の事業戦略のベースになっている社会全体のマクロなトレンドに対する見方を説明した。同社は、創業者である故・立石一真氏が1970年に国際未来学会で発表した「SINIC(Seed Innovation toNeed-Impetus Cyclic Evolution)理論」を経営の羅針盤としている。同理論は、科学や技術と社会が互いに原因と結果になりながら発展するという考えに基づいている。この理論によると、現在は「情報化社会」から一歩進んだ「最適化社会」にある。

最適化社会では、心の豊かさや新しい生き方といった精神的な価値観が重視される。工業においても、効率・生産性を追求する従来の価値観が相対的に低下し、人の精神的な価値観を満足させることが重視される。同社はこうした考えに基づき、「機械ができることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである」という企業哲学をもつ。

本条氏は、「最適化社会」において大きく三つのイノベーションが進むという。すなわち、(1)自社の事業を効率化するプロセス・イノベーション。(2)消費者の需要に応じた新サービスを生み出すプロダクト・イノベーション。(3)人や社会に有益な情報活用を提供するソーシャル・イノベーションである。“第4次産業革命”とも呼ばれるドイツの国家プロジェクト「Industrie 4.0」は、このうちのプロセス・イノベーションを生み出す条件のひとつになるとの考えを示した。

さらに、「最適化社会」を実現するカギはビッグデータの収集と活用にあるとし、製造業においては現場から生み出されるビッグデータを分析し、その結果を現場にフィードバックしながら、イノベーションを起こしていくことが重要だと指摘した。

オープンな技術で基盤を構築

続いて同氏は、まず制御機器メーカーの立場からイノベーションに対する取り組みを説明した。柱は、大きく四つある。すなわち「標準化と標準インタフェース」「データのオープン化」「産業ソフトウエア」「セキュリティ」である。

「標準化と標準インタフェース」にまつわる同社の取り組みの大きな一歩と位置付けられているのは、主力製品のコントローラにPCアーキテクチャを採用したことだ。2011年に発売したコントローラ「Sysmac NJシリーズ」から、機能が固定化されてしまう従来のASICによる機能の実装をやめて、PCと同じようにソフトウエアによって機能を実装・追加できる仕組みを導入した。さらに、これに合わせて、プログラミング言語については国際標準のIEC 61131-3、制御機器をつなぐ産業用ネットワークについては国際的なオープン規格である「Ethernet/IP」および「EtherCAT」を採用した。

「データのオープン化」については、製造現場で生み出されるビッグデータを効率良く活用できる環境を提供するために、マイクロフトとMicrosoft SQLServerを中核とした協業を推進している。具体的には同社のコントローラとSQL Serverが直結できる仕組みを実現した。

「産業ソフトウエア」についてはソフトウエア・ベンダーとのパートナー戦略を進めている。例えば、富士通やマイクロソフトと共同で製造現場の「見える化」を実現するアプリケーション・ソフトウエアを開発。富士通や図研などとは、機械や生産ラインの動きを3次元的にシミュレーションするなど、3次元仮想空間上で設計・検証を行う環境を共同で整備している。

「セキュリティ」については、製造現場におけるセキュリティのマーケティングをシスコシステムズと共同で進めているほか、産官学によって設立された制御システムセキュリティセンター(CSCC)の活動に参画している。これらの活動の成果を同社のセキュリティ・ソリューションに生かす考えだ。

「見える化」で現場に変革

続いてユーザーの立場としての取り組みも明らかにした(図1)。同社の草津工場では、プリント基板の製造ラインに、自社製のコントローラ「Sysmac NJシリーズ」とMicrosoft SQL Serverを直結したシステムを導入。生産ラインの稼働状況の見える化を実現した。工程ごとのタクトタイムのばらつきや滞留が素早く把握できるようになったことで、システムを導入後1年で生産性を15%~20%も改善できた。しかも、改善点を抽出するまでの時間を従来の6分の1に短縮できた。

図1 ビッグデータとして活用して生産性を高めたオムロン草津工場の事例
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「生産効率が上がったことで、新たな改善を考えるなど生産現場で価値を創造するための時間を増やすことができました」(本条氏)。つまり同社の企業哲学を実践することができたわけだ。「『見える化』によって変わったのは生産プロセスだけではありません。現場の人間の意識も大きく変わりました」(本条氏)。実際に改善につながる意見が現場から続々と挙がるようになったという。

新時代に向けて製品を強化

同氏は、制御機器メーカーとユーザーのそれぞれの立場における今後の取り組みについても言及した。メーカーの立場では、前述の「標準化と標準インタフェース」、「データのオープン化」、「産業ソフトウエア」、「セキュリティ」のそれぞれについての取り組みを強化するとともに、「安全」の向上にも一段と力を入れる。

具体的な動きの一つとして、国際標準規格に基づくスマート・センサおよびアクチュエータ向けインタフェース「IOLink」を活用して生産現場からデータを収集する仕組みを強化する。大量のデータ処理や高速制御に対応できるようにインテル社の高性能プロセッサ「Corei7」を搭載し、一段と高いパフォーマンスを追求した新コントローラ「Sysmac NX7」を2015年4月から市場に投入している(図2)。

図2 プロセス・イノベーションを支援する取り組みを強化
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ユーザーの取り組みとして紹介したのは、現場から得られたデータを活用した生産設備の予防保全やトラブルシュートの自動化といった、「未然防止オートメーションライン」の実現である。ライン作業者の動きをモニタリングして棚配置などを効率化する「アシストオートメーション」にも力を入れるという。

講演の最後で同氏は、「未来に向けた人と機械の協調関係の創造」という企業哲学の実践に積極的に取り組む姿勢を改めて来場者にアピールし、講演を締めくくった。

* Microsoft®SQL ServerおよびMicrosoft®Excelは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標です。

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