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【日本ナショナルインスツルメンツ】産業IoTのトレンドを先行するNI 将来展望とともに先進事例を披露

幅広い分野に向けて先進的な計測・制御ソリューションを展開しているナショナルインスツルメンツ(NI)。「Factory 2015 Spring」の講演に登場した同社は、産業分野におけるIoT、いわゆる「Industrial IoT(IIoT)」の概念と、その可能性について解説。さらに同社とともにIndustrial Internet Consortium(IIC)に参加する企業と共同開発中の事例を紹介した。

Rahman Jamal氏
National Instruments
Global Marketing Director

米国テキサス州オースティンに本社を置くNIは、システム開発ソフトウエア「LabVIEW」とハードウエアで構成する統合プラットフォームを軸に幅広い分野に向けた計測・制御ソリューションを提供している(図1)。

同社は、製造業の革新に取り組む動きに先鞭をつけたドイツ政府のプロジェクト「Industrie 4.0」や、米General Electric(GE)社が提唱した産業用IoTの概念「Industrial Internet」の普及推進団体Industrial Internet Consortium(IIC)の両方の活動にかかわっている。今回登壇したRahman Jamal 氏は、同社ドイツ支社を拠点にグローバルマーケティングを担当しており、Industrie 4.0に関連するドイツ国内の様々な活動に関与。IICの活動にも同氏が参加している。そのJamal 氏は講演の冒頭で、IoT(Internet of Things)の概念とIIoT、つまり産業分野におけるIoTについて説明した。

図1 LabVIEWとハードウェアで構成する統合プラットフォームとして、広範囲のアプリケーションを網羅する効率的な開発環境を提供
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仮想空間と物理世界が連携

同氏によると、IoTは5つの技術トレンドにより支えられている。すなわち、「プロセッサの小型化や高速化」「ノード増加とともに幾何級数的に価値が高まるネットワーク」「デバイスを独立して動かし続けられるバッテリー技術」「無線通信技術」「センサ技術」である。「中でもセンサは、IoTの感覚器官。これが進化しない限りIoTも進化しないでしょう」(Jamal 氏)。これらの5つの技術とともにIoTは、産業分野向けと消費者向けの両方に広がると同氏は語る(図2)。このうちの産業分野向けのIIoTは、ものづくりの中核を担う「工場」に着実に浸透しているという。

図2 「産業分野向け」と「消費者向け」のそれぞれでIoTが普及する。
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IoTやIIoTの概念では、物理的な世界のデータを、コンピュータ、つまり仮想空間に大量に収集。これを解析した結果を物理的な世界にフィードバックすることでシステム全体の最適化を図る。いわゆる「サイバー・フィジカル・システム(Cyber Physical System:CPS)」と呼ばれている仕組みだ。「IoTの普及とともに、用途や目的に合わせた様々なCPSが登場するでしょう。あらゆるシステムがCPSに進化する可能性があります。さらに、それぞれのCPSは、新しい技術を次々と採り入れながら進化するはずです」(Jamal氏)。

実は同社は、CPSの概念にいち早く注目した企業の一つである。同社の創業者でPresidentおよびCEOを務めるJames Truchard氏は、この概念が浮上してきた2006年ころから、CPSに関連するテーマを扱う学会をはじめ、様々なところでCPSがもたらす可能性について語っている。いわばCPSの有力なエヴァンジェリストの一人として知られている。同氏が語る概念は、NIの製品や技術、事業展開にも反映されている。

膨大な部品の作業管理を合理化

米GEがIndustrial Internetの概念を打ち出したことを契機に誕生したIICにもNI は、いち早く参加。IIC が、Industrial Internet普及の呼び水として注力している「Testbed」の活動を積極的に推進している。Testbedでは、IICに参加する企業が連携してIndustrialInternetの応用やその普及シナリオ、さらにそれをベースにした新サービスを開発するとともに、普及に向けた標準プラットフォームを構築する。この活動を通じてIICは、Industrial Internetにまつわる新市場を早期に立ち上げる考えだ。

この活動の一環としてNIは、独Bosch社、米Cisco Systems社、インドのIT企業であるTech Mahindra社らと共同で「Track and Trace」と呼ぶシステムの開発に取り組んでいる(図3)。「生産する機器の設計は複雑化する一方です。こうした中で組み立て工程における品質と作業効率の両方を同時に追求することを可能にする仕組みです」(Jamal氏)。

図3 IIoT(Industrial IoT)のシステム
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例えば、輸送機器など大型システムには膨大な種類の部品が使われている。組み上がったシステムの高い品質を実現するには、常に正しい部品を、正しい方法で組み付ける必要がある。

実際、航空機のような巨大なシステムでは、膨大な数のネジが使われている。1つのサブシステムだけでも、ネジ穴が40万カ所以上にのぼる。それぞれに適切なトルクでネジを取り付けるには、1000種類以上の工具が必要になる。だが、熟練した作業者でもすべての組み合わせを覚えることは不可能だ。そこで現場では、あらかじめ用意したチェックリストを参照しながら締め付け作業を行なっており、それが現場の作業者に大きな負荷となっていた。

画像認識で工具を制御

ここに注目した4社は、部品の選択と作業方法の組み合わせをチェックする作業を自動化するシステムの開発に取り組んでいる。画像認識と電動工具の制御を組み合わせたCPSの先駆けとも言えるシステムだ。

メガネに取り付けた小型カメラで作業者の視線の先にあるネジ穴の画像を撮影。その画像をコンピュータで解析したうえで、作業者に選択すべき電動工具を指示。同時に締め付けトルクなど電動工具の設定もコンピュータが自動的に実施する。このとき作業者が手にした電動工具の画像もコンピュータで解析し、指示通りに選んでいるか確認。不適切な工具を取った場合は工具が動作しないようにする。また締め付けた際のトルクはMES(製造実行システム)を介してデータベースに蓄積されており、不具合が発生したときに迅速に対応できるようにトレーサビリティも確保できるようにする予定だ。

講演の最後でJamal 氏は、このほかに検査・監視工程を自動化するシステムの開発を進めていることを明らかにしたうえで、日本企業への期待を語った。「IICのような国際的なイニシアチブにおいて日本企業にもリーダーシップを発揮してほしいと願っています」(Jamal氏)。

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