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2020年までに中国全体で14兆円の投資高新区が主導する鉄道インフラ事業

2020年までに中国全体で14兆円の投資高新区が主導する鉄道インフラ事業
沈明生氏
蘇州高新有軌電車
総経理

現在は134km、これを2020年までに6000kmに。総投資額は7000億元(約14兆円)――。中国国内の現代路面電車の敷設距離と、このための総投資額だ。実は現代路面電車の普及に関して中国での産業牽引およびモデル示範の役割を担うのが蘇州・高新区である。車両や関連部品の生産から運転手の教育に至るまで、関連事業のほぼすべてを区内に有し、中国における現代路面電車の標準化作業も主導する。これらの事業の責任者である沈氏に現状などについて聞いた。

Q 蘇州・高新区は都市鉄道事業に力を注いでいます。

A 高新区は「5+2」と呼ぶ産業の発展体系を推し進めています。「5」が戦略的な新興産業で、「2」が従来からの柱となる産業を表します。軌道交通は、この「5」の中の一つです。軌道交通を発展させるために、国内最大の車両製造会社である中国南車集団を高新区に誘致しました。部品メーカーは中国企業だけでなく、欧米の企業も数多くが進出してきています。

製造業だけではありません。信号設計/制御、車両や駅間を結ぶ通信サービス、現代路面電車の運行/運営など、現代路面電車にかかわる事業のほぼすべてが蘇州・高新区内にあります。現在、高新区における軌道交通関連の売上は100億元(=2000億円)。2020年までに、これを1000億元(=2兆円)まで引き上げます。

Q 現代路面電車の普及および市場化において、国内の産業牽引およびモデル示範の役割を果たしていると聞きました。

A 高新区は様々な役割を担っています。例えば高新区には、中国全土の軌道交通を取りまとめている中国都市軌道交通協会の唯一の分会である「現代路面電車分会」があります。ここでは、現代路面電車のためのロードマップを作ったり、標準化作業を担当したりします。新技術や製品の普及促進、人材の育成などの役割も担っています。中国鉄道科学研究院と合同で「現代路面電車工程研究センター」も設立しました。ここでは、車両のコア部品/設備の研究、検測、テストのほか、軌道システム、ITシステムや信号システムの試験が行えます。高新区に来れば、現代路面電車の今後の発展のすべてが分かる、といっても過言ではないのです。

Q 国内で初めて、運転手を育成する資格を持つ機関を作ったそうですね。

A はい。現代路面電車の運転手を育成する教育機関を設立しました。全国唯一の運転免許の発行資格を持つ機関もあります。現在まで、全国の7都市の約300名の運転手を育てました。現代路面電車の普及に貢献することが、高新区の目指すところです。このためには、運行/運営やカスタマーサービスの向上にも力を注ぐ必要があります。開発区と聞くと、製造業がイメージされがちですが、そうではありません。多方面のコンサルティングからアフターサポート、教育まで、あらゆる面での事業を育成し、現代路面電車の普及を後押ししています。

拡大を続ける現代路面電車

Q 高新区自体が現代路面電車の充実した地域です。

A 現代路面電車の充実度は、中国の開発区の中でトップです。軌道交通の事業を発展させるにあたって、高新区に計80kmの最新鋭の現代路面電車を敷設する計画を立てています。

最初の区間(18km)の建設に着工したのが2011年9月。2014年10月に開通しました。最新車両ならびにシステムを導入し、駅への発着時間は99.8%の精度を誇ります。ここでいう精度とは誤差2分以内での発着を指します。ラッシュ時は8分に1本、非ラッシュ時は10分に1本の現代路面電車を運行しています。

次の区間(18.2km)の開通は2016年末を予定しています。2020年までに、全国ではじめて郷、鎮単位の農村部まで現代路面電車を敷設できる開発区になります。高新区の現代路面電車は全国のモデルになっています。この最新鋭の現代路面電車とシステムを視察するために中国全土から人が訪れます。

Q 研究開発やベンチャー育成にも力を入れていますね。

A 蘇州市科学技術局と合同で「軌道交通産業イノベーションセンター」を設立する予定です。このセンターでイノベーションの集積を進め、新技術を製品化に結び付けます。ベンチャーの育成も加速します。良い技術を持っている企業なら、小さくてもこのセンターを活用することで中国市場に進出できるようになります。資金の多寡に関係なく、中国市場に挑戦し、イノベーションを起こすことが可能になるのです。

高新区自体も研究開発に意欲的です。実際、レール敷設に関する技術など、積極的に特許を申請しています。

Q 中国国内の現代路面電車の敷設計画を教えてください。

A 現代路面電車は地下鉄に比べて、キロあたりのコストが安く、敷設にかかる時間が短く、都市の規模により許容範囲が広く、需要により調整しやすいのが特徴です。このため、2014年下期から中国各地で研究・開発に火がつきました。

試験運転を含め、現代路面電車がすでに開通した都市が8つあります。建設を開始した都市は20、計画中の都市は100に昇ります。

例えば、青島、広州、深セン、仏山、北京、上海、成都、武漢、寧波などは現在建設中です。上海は800km、四川省の成都は1000kmの計画を立てています。成都からは「一緒にやろう」と声をかけてもらっています。雲南省の紅河からも共同事業の話が来ています。

このほか、蘇州市内でも昆山、太倉、呉紅、呉中の4都市で総計320kmの現代路面電車を敷設する計画が立てられています。

図1 現代路面電車の外観
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図2 現代路面電車の内部
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