日経テクノロジーonline SPECIAL

【基調講演】日米欧で進む製造業の革新 次世代工場の姿が明らかに

先進国を中心に、新たなものづくりのプラットフォームを追求する動きが活発化している。最新のICTとFAを融合させ、工場を中心としたものづくりを革新しようとする試みである。このテーマに正面から取り組んだイベント「Factory 2014」が3月5日に東京で開催され、会場は国内外の様々な立場から集まったキーパーソンの熱気で包まれた。

多種多様なモノがインターネットにつながる世界、すなわち「Internet of Things(IoT)」の到来によって、工場を中心としたものづくりの現場にどのようなイノベーションが起こるのか―。2014年3月5日に東京で開催されたイベント「Factory 2014~IoT/M2M/ビッグデータで進化する世界の工場~」において、日米欧で製造業の進化をリードするキーパーソンが、IoT時代の次世代工場の姿を予見した。

今回のイベントには、ものづくりにかかわる企業の有力関係者約460人が参加した。それぞれの講演や場内の展示で披露される次世代製造業の姿を熱心に見聞きしていた。

待ち受ける“パラダイム・シフト”

冒頭の基調講演に登壇した米GE Intelligent Platforms社のBernard Cubizolles氏は、GE(General Electric)グループが提唱する「Industrial Internet」という革新的コンセプトを解説。併せて、このコンセプトの掲げる世界が実現した際に求められるソリューションの在り方を披露した。

Industrial Internetは、インテリジェント化された機器にインターネット技術、ビッグデータ収集・分析技術などを組み合わせることによって、既存産業が飛躍的に効率化できることを示した未来図である。

実際、IoTやM2M(Machine to Machine)の進展によって、工場やプラントにあるセンサーやロボットなど様々な機器がデータを発信するようになりつつある。Cubizolles氏は、「膨大なデータを分析・解析して、業務を遂行する上で意味を持った情報へと昇華させ、必要な情報だけを必要な人に必要なタイミングで提供すれば、業務の効率は飛躍的に向上します」と指摘する。

具体例とした挙げたのが、長さ10kmほどのトンネル運行を担う監視室である。ここでは現状、数え切れないほどのスクリーンが並び、それらに合計50万種類ものデータがリアルタイムで映し出されている。どのデータを監視すべきかは、トンネルの状況に合わせて、スタッフが勘と経験に基づいて判断している。

これがもし、必要な情報だけを必要な人に必要なタイミングで提供できるようになれば、様々な機器があふれる監視室は不要になる。何らかの異常が発生したとき、それに関する必要不可欠な情報を担当スタッフに直接届けられるようになるからだ。たとえスタッフが遠隔地に分散していたとしても、パソコンやタブレット、スマートフォンなど手持ちのデバイスに情報を送信できる。監視室が不要になるとは誰が想像しただろうか。

この具体例も、Industrial Internetの到来によって起こる、パラダイム・シフトの一面にすぎない。

ものづくりを一変させるICT基盤

同じく基調講演に登壇した独Siemens AGのDieter Wegener氏は、ドイツが目指す新しい製造業の姿と、それに向けた技術開発や産業構造の変化を解説した。

現在、ドイツ政府は「Industrie 4.0」と名付けた高度技術戦略を掲げ、産官学一体の大規模プロジェクトを推進中だ。これは、IoTやFA(Factory Automation)の技術を駆使して、工場内外のモノやサービスと連携することで、今までにない価値を生み出したり、新しいビジネスモデルを創出したりすることを狙うもの。2030年での実現を目指す次世代製造業のコンセプトである。

Wegener氏は、現代の製造業が直面している課題は、主に生産性、スピード、柔軟性の三つだとした上で、「Industrie4.0を実現することによって、これらを克服することが可能であり、その際にはものづくりの在り方は現在とは全く変わったものになるでしょう」と強調する。

Industrie 4.0の実現には、製品設計や生産設備設計、生産、サービスまでバリューチェーン全体を網羅した、多種多様なICT基盤が必要になる。Wegener氏は、そのような基盤を構築するために、ハードウエアやソフトウエアの幅広いポートフォリオを持つソリューション・ベンダーが優位になるとの見方を示した。

ビッグデータ活用が生産効率を向上

イベントの締めくくり、特別講演に登壇したのは東芝の岡明男氏。岡氏は工場の品質管理と生産管理の業務効率を大きく向上させるために、ビッグデータの収集・分析の方法がポイントとなった実例を披露した。具体的には、NANDフラッシュメモリーを生産する同社、四日市工場におけるICT活用のケースである。

NANDフラッシュメモリーは、記憶容量単位の価格が平均で年率50%も下落する。このため、歩留まりを上げるための品質管理と、在庫適正化と装置稼働率向上のための生産管理、この両面で業務を効率化することが求められていた。

品質管理では、「Process Compact Model(PCM)」と呼ぶ代数式を用いたモデル化手法を導入。プロセス制御を改善し、歩留まりの向上に努めている。一方、生産管理では、在庫と稼働率のシミュレーションを実行し、最適化に取り組んでいる。例えば、ウエハー搬送を効率化するために、搬送手順をシミュレーションで最適化し、搬送ケースの渋滞を回避する取り組みを進めている。

精緻なシミュレーションを追究した結果、生産ロット数や製造工程数など管理すべきパラメータは膨大な数に膨れ上がった。データ量は毎秒1万8000トランザクション、データ件数にして1日16億件がやり取りされているという。

トレンドを見せた充実のセッション

イベントでは、製造業向けにビジネスを展開する7社がテクノロジー・セッションに登場し、次世代工場のコンセプトやソリューション、企業事例などを披露した。三菱電機、オムロン、シーメンス・ジャパン、ベッコフオートメーション、SAPジャパン、レクサー・リサーチ、日本マイクロソフト―の7社だ。IoTやM2Mの進展によってどのようなイノベーションが巻き起こるのかを論じ、製造業を巡る世界規模の大きなうねりを実感させた。

講演会場前のホワイエに設けた展示コーナーでは、レクサー・リサーチがブースを構え、同社の講演に登場した生産システム・シミュレータ「GD.findi」を展示。ここで同製品に興味をもった来場者が同社社員に熱心に質問している姿が見られた。