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【三菱電機】FAとICTの融合に成功する 戦略的プラットフォーム

三菱電機
名古屋製作所FAシステム第二部
ソリューション推進開発グループ
グループマネージャー
岩井 文雄氏

日本の製造業の強みの源泉は、現場による改善活動にあるとされる。グローバルレベルの競争の中で日本の製造業が存在感を発揮し続けるためには、その強みをさらに高めていく仕組みが必要だ。三菱電機の岩井氏は、その仕組みとしてFAとICTの融合によるソリューションのコンセプトを提案する。

現場主導型の改善活動。これは日本の製造業の特徴だが、原点にもう少し迫ってみると、「工場の現在の状態を、検知・収集・蓄積・分析する」活動に行き当たる。さらに、岩井氏は「検知と収集はFAが得意とする部分。これに対して、蓄積と分析はICTが得意とする部分である」とかみ砕く。その両者を融合することで改善活動は高度化し、企業はTCO削減や設備稼働率向上、品質改善や安全性向上などを図ることができるとしている。

そのFAとICTの融合を目的に、同社が展開するソリューションが「e-F@ctory」だ。生産管理や品質管理、エネルギー管理やトレーサビリティなどを一括して可能にするソリューションで、現場のエンジニアにも使いやすい機能を提供しながら、高い信頼性や拡張性を確保したという。

FA事業を展開する同社は、ICTのソリューションを提供するベンダーなど272社と協業組織「e-F@ctory Alliance」を構成し、FAとICTを融合させたソリューションの拡充を図っている。FA側のソリューションで設備設計、ICT側のソリューションでシステム設計をそれぞれ引き受ける形である。

「システムコストを65%削減する」

FAとICTの融合とはいっても、気にかけるべきは融合の度合いである。融合効果の一例として、岩井氏は機器の情報をリアルタイムで収集するシステムを挙げた。

管理者や現場のエンジニアに対して、ICT機器上からネットワーク経由で生産現場のコントローラなど、FA機器の動作状況を見える化する仕組みは珍しくない。このとき、見える化を提供するデータベースやアプリケーションは、ゲートウエイを介してFA機器にアクセスするのが一般的だが、通常ゲートウエイはポーリングにより巡回的にFA機器からデータを吸い上げる形になる。そのため、見える化の結果が必ずしもFA機器のリアルタイム状態を示すものにはならない。

e-F@ctoryでは、このゲートウエイの機能をファームウエア化してFA機器に搭載した。同社が「MESインタフェース」と定義する機能である(図1)。これによって連携されたシステムでは、現場のFA機器の状態に何らかの変化が起こると、リアルタイムでICT機器に通知する。機器や工程の異常を、管理者や現場のエンジニアが手元の機器からいち早く把握できるようになるわけだ。

図1●MESインタフェースは、FAとICTをつなぐゲートウエイの機能をファームウエア化したもの
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MESインタフェースを搭載したFA機器は、それ自身がSQL文を自動生成してデータベースを操作したり、アプリケーションに直接データを渡したりすることができる。そのためゲートウエイ用のパソコンやプログラムが不要になる。「開発費や運用費を65%削減できます」(岩井氏)というのが同社の試算である。

FAとICTの境界に置く具体的な装置として、同社は統合コントローラ「iQ Platform」を用意する。シーケンサやロボット、センサーなど制御対象のFA機器のユニットを選んで搭載し、高速バスによって相互接続する戦略的プラットフォームだ。ユニットの一つとしてMESインタフェースも搭載し、これを介してICTのネットワークにつなぐため、FA機器群をICTのネットワークにそれぞれ個別につなぐ必要がない。

物理的な接続だけでなく、ネットワーク・プロトコルのレベルでもFA-ICT間の多様な接続方法に対応する。生産ライン・生産設備制御レイヤーでは、CC-Linkをはじめとした各種サイクリック(リアルタイム)ネットワークに対応。またセンサーの連携では、統合管理を可能にする「iQSS(iQ Sensor Solution)」を用意し、ICTからセンサーまでシームレスな通信を実現するという。

さて、こうした一連のソリューションが現実にどのような効果をもたらすのか。事例の一つ目はある生産設備の稼働率の向上例。生産設備全体のリアルタイム監視によって、軽微な機器停止から重大な故障までを瞬時に把握し迅速に対応できるようにした。それによりダウンタイムを短縮し、設備稼働率の180%アップを実現したという。

二つ目の事例は、金型・治具の予防保全による不良率低減の事例である。壊れた金型や治具で作業して製品の品質不良を起こさぬよう、金型や治具の使用回数や時間を収集して蓄積。寿命と比較して壊れる前にアラートを発し交換を促すことで、製品の品質に影響が及ぶような事態を防ぐ。交換作業は最適な時期を自動設定するため、臨時に設備を止める必要もなくなったという。

三つ目の事例ではトレーサビリティを向上させた。ワークの中間検査や出荷検査の結果を蓄積しておき、製品が市場で不具合を起こした際にその蓄積と比較し、原因を早期に検出することが可能になった。ほかにも空調・照明の省エネ化、また段取り替え時の設定作業の自動化による生産効率向上などの事例も紹介された。

グローバル展開の用意も整う

これら一連の仕組みは国内だけにとどまらず、グローバル・レベルに展開する仕組みも整えている。クラウド上で提供するe-F@ctory Alliance各社のソリューションを通して、世界各地に分散する生産拠点を、日本の本社や外部パートナーと連携させることができるからだ(図2)。各生産拠点の遠隔監視・メンテナンス、BCP確立などが可能になる。「(特にBCPについては)加工プログラムや品質履歴などの重要データを、世界各地に分散して保存することで、災害対策を強化できます」(岩井氏)。

図2●クラウドを介してFAとICTの融合はグローバル・レベルに拡大
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今後、新興国市場への取り組みが強化される中、生産にまつわるデータを現地の販売活動に利用したいといったニーズも現れるだろう。そのため、「データ収集のさらなる高速化に取り組んでいく方針です」と岩井氏は言う。

また岩井氏は、FAとICTの融合は生産現場だけでなく、今後は企業レベルや業種レベル、さらには社会レベルにまで広がっていくと予想する。「例えば工場を軸に、地域の送配電や交通、防災体制などを最適化するという考え方も出てくるでしょう」(岩井氏)。工場が地域コミュニティーの中心的存在になりうるというわけだ。「生産現場の改善だけでなく、町おこしの起点として地域に親しまれる工場になれるような仕組みを提供していきたい」と岩井氏は強調した。

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