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【オムロン株式会社】標準技術による「見える化」が、生産プロセスを革新する

オムロン
インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー
オートメーションシステム統轄事業部
コントロール事業部 部長
苗村(なむら) 恭嗣氏

今回の全体テーマである「IoT/M2M/ビッグデータで進化する世界の工場」を議論するとき、避けて通れないのが生産現場で発生する膨大なデータの収集と見える化の推進である。オムロンの苗村氏は、世界の標準技術と先端技術を採用した同社のソリューションによって多業種の期待に応えたい、と語った。

生産現場を行き交う情報は、今著しい変化を遂げようとしている。生産設備から様々なデータを取得し、生産の見える化を図り、効率化や経営判断に活用する取り組みは以前から進められてきた。初期には、稼働率やライン停止など生産継続に必要なデータの見える化が中心のテーマだった。ところが、最近では個体情報に基づく品質管理システムが強化されていることもあり、生産現場で取り扱うデータ量が急激に増えつつある。

マシンビジョンなどで得た画像データの管理が当たり前になってくると、現在より数桁多い大量のデータを取り扱う必要性が生じる。このほか、将来的に他工場の生産状況、販売や受注状況、顧客クレームなど、様々な情報が現場にもたらされる。苗村氏はこの可能性を指摘し、「現場においても、いわゆる“ビッグデータ”への備えが必要な時代に突入しているのです」と話す。

オープン技術、業界標準という強み

つまり、ビッグデータ時代にも対応できる「見える化」の重要性が、生産現場においてにわかにクローズアップされているのである。その対策として苗村氏が提案したのは、同社の「Sysmacオートメーションプラットフォーム」の一つである「マシンオートメーションコントローラNJシリーズ」(以下「Sysmac NJ」と記載)である(図1)。

図1●マシンオートメーションコントローラ「Sysmac NJ」シリーズ
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同社の「Sysmacオートメーションプラットフォーム」は、生産のグローバル化を見据えて開発されたFAシステム。様々な最先端技術と世界標準技術を盛り込んでいるのが特徴である。生産のグローバル化や製品サイクルの短期化など、メーカーが抱える様々な経営課題を生産オートメーションの立場から解決しようとの狙いで2011年から展開されている、オムロンを代表するソリューションの一つだ。

生産データの収集に「Sysmac NJ」シリーズを注目すべき理由として、苗村氏は次の3点を挙げた。一つめが上流のMicrosoft SQL Serverに直結できる点である。世界標準技術を活用するという「Sysmac」のコンセプトに基づいて、上流との通信に標準的なEtherNet/IPを装備するとともに、業界標準のプログラミング言語であるIEC 61131-3を採用した。

SQLの知識がなくてもファンクションブロックを並べていくだけで、収集したデータを上位のSQL Serverに転送するプログラムが組める。またIEC 61131-3の採用はプログラムの可読性を高めるとともに、海外拠点に配備した場合でも開発エンジニアを確保しやすいというメリットもある。

なお、マシン制御ネットワークには同じく業界標準のEtherCATを別に装備しており、情報系のEtherNet/IPと互いが干渉しないよう工夫されている。

二つめの理由がデータ転送の確実性である。情報系ネットワークや上位サーバーに障害が発生して通信ができなくなった場合は、収集したデータから生成したSQL文を「Sysmac NJ」内部にスプールしておき、通信回復後にまとめて転送する。そのためデータの欠落が生じないという。

三つめの理由が処理性能である。「Sysmac NJ」はモーション制御やロジック制御などの機能も備えているが、上流との通信負荷によってそうした制御に影響が出ないよう、高速な通信アーキテクチャを採用した。最速で20ミリ秒ごとにデータを送信できるため、タクトタイムの短縮化にも余裕を持って対応する。パソコンをゲートウェイとして用いる従来のやり方に比べて、およそ50倍のデータ量を扱えるという。

カイゼンのプロも「目からウロコ」

実際の生産データの収集事例を見てみよう。苗村氏は、プリント基板の実装ラインを持つ同社の草津工場を紹介した(図2)。多品種・少量生産を扱う段取り替えが多いラインである。

図2●オムロン草津工場での生産データ収集および見える化の事例
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まず手掛けたのは、ラインの稼働状況の見える化だった。はんだ印刷機、マウンター、リフロー炉などの各工程を流れる時刻を「Sysmac NJ」を使って収集し、それを上流のSQL Serverに上げ、集約したデータをMicrosoft Excelを使って閲覧できるようにした。

その結果、基板がきれいにラインを流れていれば等間隔でグラフが描かれるのに対して、隙間の多いところ(ラインの空きや停止)や、傾きが変化しているところ(滞留やミス)などが一目で分かるようになったという。「経験や勘をベースに、長年にわたってカイゼンを担当してきたベテラン社員ですら目からウロコが落ちたと言います。まだまだカイゼンの余地があると、新たな気付きが得られたそうです」(苗村氏)。さらに、こういうデータが取得できれば次なるカイゼンにつながるかもしれない、といった新たな議論のきっかけにもなっているという。

また、草津工場にある「つなぎラボ」には、製品の良否判定に用いる画像処理システム「Sysmac FH」で撮影された画像データと「Sysmac NJ」経由で収集したデータとをひも付けし、分析する仕組みを構築し、検証システムとして展示している。

不良品として判断された画像を対象に、ロット番号や加工工程での各機械の動作結果などのひも付けデータをキーにフィルタやソートをかけることで、不良が多発する条件や実際の不良状況が視覚的かつ簡単に把握できるようになるという。なお、データのビジュアライゼーション処理はマイクロソフトと共同で開発したという。

多業種、国内外で導入が進む

オムロンでは、オープン技術への対応力と産業用コントローラとしてのロバスト性・信頼性を両立したプラットフォームとして、「Sysmac NJ」シリーズをあらゆる業種に提案中である。「食品、医薬品、自動車、自動車向け部品などを扱うお客様が、品質管理水準の向上や生産トレーサビリティの強化を目的に導入されるケースが増えています」(苗村氏)。国内工場への導入だけではなく、新興国での工場立ち上げの迅速化にも有効だという。

さらに苗村氏は、モーション制御のプログラミングにも業界標準のIEC 61131-3を採用しているほか、PLCopen準拠のセーフティプログラミング、PLCと同等のRAS機能など、様々な特徴があることも併せて紹介。OPC UA準拠のセキュリティ機能にも積極的に取り組む意向を示した。

苗村氏は「オープンな技術によって可能になったこうした見える化を通じて、お客様の品質向上のお手伝いをしていきます」と話す。同時に、パートナーベンダーとタッグを組みながら、例えばモバイル端末との連携などを通じて、ビッグデータ時代のデータ活用をさらに進めていく考えである。

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