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量産対応のモジュール式半導体テスタ登場、ミックストシグナルICのテストコスト低減に貢献

量産対応のモジュール式半導体テスタ登場、ミックストシグナルICのテストコスト低減に貢献

ナショナルインスツルメンツ(NI)は、モジュール式計測システム「PXI(PCI eXtensions for Instrumentation)」をベースにした量産対応の半導体テスタ「NI半導体テストシステム(STS:Semiconductor Test System)」を発売した。検査対象(DUT:Device Under Test)に合わせて機能を自由にプログラミングできる同システムは、「More Than Moore」のトレンドとともに進化するアナログICやミックストシグナルICのための効率的かつ低コストのテスト環境を提供する。

久保法晴氏
日本ナショナルインスツルメンツ
テクニカルマーケティングマネージャ

STSは、従来の量産用ICテスタのテスト・ヘッド部に近い形状の筐体に、ロードボードや計測システムを組み込んだものだ(図1)。「これまでの一般的なICテスタは、テスト・ヘッドと計測システムが分離されており、しかも計測システムはラック型の大きなものでした。STSは、これらの機能を一体化して大幅に小型化しています。このため工場の限られたスペースを有効活用できます」(日本ナショナルインスツルメンツ テクニカルマーケティングマネージャ 久保法晴氏)。小型のSTSは、既存のICテスタ用マニュピレータにテスト・ヘッドの代わりに取り付けて使うこともできる。

図1 「NI半導体テストシステム(STS:Semiconductor Test System)」の外観
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DUTに合わせて機能を最適化

STSの大きな特徴は、内部に組み込まれた装置が、PXIシステムで構成されていることだ(図2)。PXIシステムは、モジュール式のハードウェアと、制御ソフトウェアの開発環境から成る。各種I/Oインタフェースやコントローラなどのモジュールと、モジュールを連結するバックプレーンの機能を提供するシャーシが用意されており、これらを組み合わせて、ハードウェアをユーザが自由に構築。さらに、それに合わせて開発した制御ソフトウェアを実装することで、ユーザが必要とする計測システムを自由に実現できる。

図2 STSの構成
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STSは、NIが提供しているPXIシステム(モジュール、シャーシ)で構成されている。実装するテストプログラムやハードウェアの制御ソフトウェアは、同社のシステム開発ソフトウェア「LabVIEW」やテスト管理用アプリケーション・ソフトウェア「TestStand」を使って開発した。

小型で安価なICテスタ

PXIシステムをベースにしたことによる利点は、小型で安価な量産用ICテスタを実現できることだ。「あらかじめ用意されている汎用のモジュールやシャーシを組み合わせるので、専用にハードウェアを開発する従来のATE(Automated Test Equipment:半導体自動テスト装置)に比べて格段にコストを抑えられます」(久保氏)。実際、大手半導体メーカの米Analog Devices社は、PXIシステムを使って独自に構築したICテスタを量産ライン向けに導入している。ATEに比べて、この装置のコストは約11分の1。設置面積は15分の1。重さは66分の1になった。しかも、消費電力も16分の1に削減することができた。

さらに、もう一つPXIシステム・ベースのICテスタの重要な利点は、ハードウェアやソフトウェアがプログラミングできるので、必要に応じて機能や性能を随時最適化できることだ。「特に最近はICの機能や性能の進化が加速していることから、従来よりも短い期間でATEの機能が要求に追随できなくなる可能性があります。そのたびにATEを更新していたのでは、テストコストが上昇する一方です。しかも、これまでの微細化とは別の『More than Moore』と呼ばれるトレンドに沿って進化する半導体デバイスが登場し、テストに対する要求は一段と多様化します。それに柔軟に対応できるテスト環境が必要になるでしょう」(久保氏)。

テストコストの問題が浮上

実は、テストコストは半導体業界にとって大きな問題になりつつある。「WSTS(World Semiconductor Trade Statistics)が指摘しているように、半導体の製造コストが年々下がっている一方で、テストコストはほとんど変わっていません。このトレンドが続くと半導体の価格の中でテストコストが支配的になるという事態になりかねません。テストコスト削減は着実に大きな課題になりつつあります」(久保氏)。低価格で、しかも柔軟にシステムを最適化できるSTSは、こうした問題の解決に確実に貢献する。

特にSTSは、PXIシステム・ベースのICテストの利点を、より多くの半導体メーカが享受できるように設計されている。つまり、標準的なシステムをあらかじめ構築。さらに既存の装置と速やかに入れ替えやすいように、現場が使い慣れたテスト・ヘッドに近い形状の筐体に組み込んだ。

ただしSTSは、決して既存のICテスタをすべて置き換える製品ではない。「高集積化や高性能を追求したLSIで量産規模が大きい場合は、従来のATEが向いているでしょう。STSの利点が生きるのは、使用するICテスタに求められる機能が多様で、しかも技術の進化が早いアナログICやミックストシグナルICのテストです」(久保氏)。

モバイル機器の普及に加えて、IoT(Internet of Things)の概念が登場したことで、無線通信機器などのRF回路を搭載したミックストシグナルICの市場が拡大する。これとともに、ニーズの変化に応じてシステムを再構成できるSTSのようなICテスタのニーズは高まるはずだ。

最終的にSTSを選択

図3 米Integrated Device Technology社がいち早くSTSを導入
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実際にミックストシグナルICを得意とする米Integrated Device Technology社は、いち早く出荷テストにSTSを導入した(図3)。同社は、製品の進化に対応できる量産用テストシステムを実現するのと同時に、テストコストの上昇を抑えるのが目的だ。

当初市販のATEを導入していたが、同社の要求に対応できる高性能なATEは、同社にとって余分な機能も備えていたことから割高に見えてきた。そこで、自社でテストシステムを構築したものの、満足できる装置を実現できなかった。そこで、比較的安価なATEと独自に開発した拡張システムを組み合わせたハイブリッド・システムを開発。これで必要としていたパフォーマンスを確保できたものの、製品の進化に合わせたシステムの再構築にかかるコストや手間が大きかった。こうした経験を経た後に同社が選択したのがSTSだった。

今後、IoTの概念が広がるにつれて通信機能を備えた電子機器が一気に多様化する。これにともなってRF回路搭載のミックストシグナルICやアナログICの需要が高まる可能性が高い。STSは、こうした状況の中で浮上するICテスタに対する要求にいち早く対応した製品と言える。STSに対する半導体メーカの関心は、今後ますます高まるに違いない。

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