日経テクノロジーonline SPECIAL

第2回:エキスパートならではの電源ソリューション、モジュールからシステムまで幅広く網羅

伊東洋一氏
サンケン電気 技術本部
PS事業部長補佐 兼 
開発部長 工学博士

「Power Electronics for Next "E" Stage.」をスローガンとして掲げ、電源とモーション・コントロールの分野を中心にビジネスを展開しているサンケン電気。長い歴史を持つ「半導体製品」とともに同社の事業を支えているのが、電源関連の装置を中心とした「パワー・システム(PS:Power System)」と、様々なシステムに組み込む「パワー・モジュール(PM:Power Module)」である。同社は、売り上げの75%を占める半導体製品の事業を引き続き積極的に展開する一方で、パワー・システム事業およびパワー・モジュール事業の成長を一段と加速することで、同社全体の事業を伸ばす考えだ。そのための原動力となる同社の強みは、電源技術のパイオニアならではの豊富な経験やノウハウである。「これらを駆使して個々のお客様のニーズに応じた最適なソリューションを提供します」(同社技術本部 PS事業部長補佐兼開発部長 伊東洋一氏)。

新エネルギーへと領域拡大

パワー・システム事業については、太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及を足がかりに事業を伸ばす考えだ。「従来は、社会を支えるエネルギー・サイクルの中で、主に『消費』および『変換』といった領域で事業を展開していました。現在はこれに加えてエネルギーの『発生』『貯蔵』という領域にも手を広げています」(伊東氏)(図1)。

図2 主なパワー・システム製品
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具体的には、通信システムやデータ・センターなどに向けた整流器/直流電源や無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)といった従来からの主力製品に加えて、太陽光発電システム向けのパワーコンディショナー(PCS:Power Conditioning System)や電力貯蔵システム(ESS:Energy Storage System)を積極的に展開している(図2)。PCSは、太陽電池が発電した直流電力を既存系統に供給するために交流に変換する機器である。ESSは蓄電池を内蔵しており、系統電力の平準化ができるように電力を充放電する装置である。電力消費が少ない夜間に充電、多い昼間に放電する「ピークカット」にも利用できる。いずれも、新エネルギーの導入が進むとともに需要が高まる。

図2 主なパワー・システム製品

「1GW~1TWといった大容量の電力を扱う発電システムには、なかなか手が出せませんでしたが、太陽光発電システムなど再生可能エネルギーを利用する発電システムならば、扱う電力が比較的小さく1MW以下です。この領域ならば私たちが得意としてきた電源の技術がふんだんに生かせます。再生可能エネルギーの普及は、私たちにとって大きなビジネスチャンスと捉えています」(伊東氏)。

先行技術開発にも注力

すでに同社は、新エネルギー関連の市場で着実に実績を築いている。PCSについては、定格出力10kWの「PSSシリーズ」を中心に展開。「現在公共産業用市場で約10%のシェアを獲得しています」(伊東氏)。これに加えて2014年中に、家庭用に展開する定格出力5kWの製品もPSSシリーズのラインアップに加える。「PSSシリーズでは、電力変換回路の中核を担うスイッチング回路に、高効率を追求するうえで有利な共振型を採用しています。これは私たちが得意としている技術の一つ。共振型の長所を徹底的に引き出して高効率のPCSを実現します」(伊東氏)。

ESSでは、定格出力容量10kVA~200kVAの範囲を網羅する「EMUシリーズ」を提供している。「様々な場所に設置できるように屋内タイプと屋外タイプを揃えています」(伊東氏)。同社のESSは、埼玉県下の小学校に防災設備として納入されるなど、着実に市場で実績を築いているという。

同社は、引き続き市場のニーズに合わせてPSSシリーズやEMUシリーズの製品展開を進める考えだ。「お客様の要求に応じたカスタマイズに迅速に対応できるのは、当社の強みの一つです。カスタマイズにともなうリードタイムの長期化やコストアップを最小限に抑えられるような設計を提案しながら、できるかぎり柔軟にお客様の要望に対応するようにしています」(伊東氏)。

製品開発を進める一方で、先行技術の開発や情報収集にも力を入れている。「競合他社に先駆けて技術力を高めるために、電源に関連する学会や技術者の会合には積極的に技術者を送り込んでいます」(伊東氏)。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進している「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」の委託を受け、フライホイールの慣性力を利用して蓄電するユニークな技術の研究にも取り組んでいる。「先行技術の開発にもリソースを割くことで、エネルギー関連の技術開発力にさらに磨きをかける方針です。これによって、この分野については『相談すればなんとかしてくれる』と言われるようになりたいと思っています」(伊東氏)。

確かな技術力で雷サージに新たな対策

パワー・システム事業とともに、半導体製品以外の事業を支えているパワー・モジュール事業の主力製品は、ACアダプタと様々な機器に組み込むスイッチング電源ユニットである。いずれも幅広い用途の多様なニーズに応じた製品を提供している。

ACアダプタについては、液晶テレビ、パソコン、家庭用のインクジェットプリンタ、通信機器や医療機器などの用途に向けた数多くの種類を扱っている。この中で、同社の高い技術力がうかがえるのが、「雷対策通信用ACアダプタ」である。

麻生真司氏
サンケン電気 技術本部
PM事業部
回路開発グループリーダー

電力線に雷が侵入したときに発生するサージ電流がACアダプタを通り抜けると、その先につながっている機器に大きなダメージを与える。このため雷サージ電流を阻止するための対策が施されているACアダプタは多い。従来はこの対策に、電源回路に「パターンギャップ」と呼ばれる技術が使われていることが多かった。これは、サージ電流が流れるプリント基板のパターンと、二次側の接地との間に放電用のギャップを設けて、ここで放電させることでサージ電流のエネルギーを押さえ込む方式だ。

一方、同社では雷サージ対策として「絶縁方式」を採用している。1次側と2次側を高耐圧で分離させ、雷サージ電流が機器側に流れることを防ぐ方式だ。通常のアダプタでは1次側と2次側間の耐圧は3kV程度なのに対し、雷対策通信用アダプタの耐圧は8kV~15kVだ。この高耐量を実現するためには次の3つの技術が必要となる。まず一つめがトランスの1次・2次間の高耐圧化と密結合を両立させるトランス巻線技術。二つめが、フォトカプラを使わず2次側のフィードバックなしで1次側のみで2次電圧を高精度で制御する電源ICの制御技術。そして三つめがYコンデンサレスで世界各国のEMC規格を満足させる低ノイズ技術だ。

「これらすべての技術に習熟する必要があるため、雷サージ対策に絶縁方式を採用しているアダプタはそう多くありません。お客様からも高い評価をいただいています。同技術を採用したACアダプタを他の用途にも展開可能です」(同社技術本部PM事業部回路開発グループリーダー 麻生氏)。

最高レベルの高効率基準を達成

パワー・モジュール事業のもう一つの主力製品である電源ユニットでも様々な製品を提供している。具体的には、ノイズを抑えた「HWBシリーズ」、定格出力電流の2倍のピーク出力を可能にしたピーク負荷対応電源「SWFシリーズ」、小型の「SWGシリーズ」、セミカスタム・マルチ電源「Cシリーズ」、高電力密度と高効率を徹底的に追求した「PT slimシリーズ」といった製品を標準品として揃えているほかに、市場のニーズに応じた数多くのカスタム品を様々な用途に向けて提供している。「オーディオ機器、OA機器、アミューズメント機器、産業用機器などに向けた電源ユニットを手掛けてきました」(麻生氏)。

その中で、いま同社が特に力を入れているのがサーバー用電源である。この分野の市場を有利に開拓するための戦略製品として同社は、コンピュータ用電源ユニットの電力変換効率に関する規格「80 PLUS」の中で、変換効率の基準がもっとも厳しい規格「チタン(Titanium)」の認証を取得した電源ユニット「TN162M1212Y」を開発した(図3)。80 PLUSには変換効率の基準がことなる五つの規格がある。その中の最高レベルにあたる「チタン」は、負荷率50%のときの変換効率が96%以上と、極めて高いハードルが定められている。「次世代材料SiCを使ったパワー半導体をスイッチング回路に採用したほか、高度なノウハウを必要とするブリッジレスPFC(力率改善回路)、インターリーブ方式の共振コンバータ回路など、電源関連の先進技術を駆使して96%という高い変換効率を実現しました」(麻生氏)。

図3 最も厳しい変換効率の規格「80 Plus Titanium(チタン)」の認証を取得したサーバー用電源ユニット「TN162M1212Y」
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半導体デバイスだけでなく、その応用の領域に踏み込んだパワー・システムやパワー・モジュールの事業を展開し、豊富な技術やノウハウを蓄積しているサンケン電気。技術者にとって、デバイスからシステムまで広い範囲で頼りにできる数少ない企業の一つと言えよう。

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