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ITとものづくりの新時代を展望する「MCFrame Day 2015」が開催

生産管理システムの「MCFrame」を展開する東洋ビジネスエンジニアリング株式会社は、2015年2月20日に虎ノ門ヒルズフォーラムに於いて、「日本の製造業に、ものづくりのためのITを。」をテーマとする「MCFrame Day 2015」を開催した。イベントのオープニングを飾ったのが製造業とITを巡るトークセッションである。「インダストリー4.0」など製造業とITを巡る最近の動きを概観したうえで、日本のものづくりが進むべき方向とITの役割について展望した。

ドイツが産官学の大型プロジェクトとして推進する「インダストリー4.0」をはじめ、「IoT/M2M」や「ビッグデータ」といった新しい概念のITを駆使して、製造業の大規模な革新に取り組む動きが先進国を中心に加速してしている。

こうした変化を踏まえ、「MCFrame Day 2015」の「スペシャルトークライブ」では、ベッコフオートメーション株式会社代表取締役社長の川野俊充氏、法政大学デザイン工学部教授の西岡靖之氏、東洋ビジネスエンジニアリング取締役兼プロダクト事業本部長の羽田雅一氏をパネリストとして迎え、「ITとものづくりの新時代を展望する」をトークセッションのテーマに、製造業とITを巡る最近の動きを概観したうえで、日本のものづくりが進むべき方向と新たなITの役割について展望した。モデレータは日経BP社技術情報グループ企画編集委員の三好敏氏が務めた。

競争力強化を目的にITとものづくりとの融合が進む

トークセッションではモデレータの三好氏から三つのテーマが示された。最初のテーマは、現状認識として、「ITと製造業を巡る最近の動きの本質は何か」である。

このテーマに対して、本社があるドイツの産業事情に詳しいベッコフオートメーションの川野氏は、「インダストリー4.0」には狙いが二つあるとの見方を示した。ひとつが、工場の技術を競争領域と協調領域に分け、そのうちの協調領域を標準化してドイツ国内に展開し、工場間・企業間・業界間をつなげてバリューチェーン全体を最適化することで、企業の競争力と輸出製品の付加価値とを高めようという狙いである。

もうひとつはスマート工場の技術をブラックボックス化し、ドイツ企業が海外に工場を建てるときにそうした生産システムを輸出し、生産技術の海外流出を少しでも食い止めようという狙いである。

「さまざまな業界から支持が得られるように、競争領域を標準化するのではなく、イノベーションの源泉を定義づけようといのがインダストリー4.0の考え方」と、川野氏は説明した。

法政大学で教鞭をとるかたわら、生産やものづくりに関連するコンソーシアムなどの活動を行っている西岡氏は、「アトム(物理)の世界」のものづくりと「ビットの世界」であるITとの融合は海外を中心に確実に進んでいるとの見方を示した。

一方で、ITによるオープン化やモジュール化は日本の製造業にはなじみにくいという意見を挙げながら、日本の強みである「すり合わせ」文化とオープン化とをどう融合するかが、日本の製造業が抱える問題の本質ではないかと指摘した。

東洋ビジネスエンジニアリングの羽田氏はITの観点から現在の状況を述べた。会計業務などはほぼ100%の日本企業がIT化を進めているのに対して、生産管理やサプライチェーンのIT化はおよそ50%にとどまっていると述べ、その理由として、ITを使わなくてもなんとかなる、といった属人的なカルチャーが現場には根強いことを指摘した。

ただし、市場競争の激化を背景に、ブームではなく経営改善のためにITを導入しようという機運が最近になって再び高まってきており、たとえば滞留在庫が意味ある滞留なのか廃棄すべき滞留なのかを見える化するために在庫管理システムを活用する、といった事例が増えつつあると述べた。

企業を超えたバリューチェーン全体の最適化が課題

続いてモデレータの三好氏から、オープン化やつながる工場といったキーワードに対する課題やアプローチを見ていきたいとの主旨から、「ものづくりの新しい時代に向けたアプローチと課題」というテーマが示された。

西岡氏は標準化の課題について触れた。工場の標準化やオープン化を推し進めると独自技術が失われて海外との競争力が低下してしまうのではないか、という懸念が根強くある一方で、そういった波に乗っていかないとマーケットが広がっていかないという見方もあると指摘。強制力の強い標準化ではなく、リファレンスモデルを参考にしながら企業それぞれがつながるためのルールを決めていくような緩やかなアプローチが、ITとものづくりの融合の最善の策ではないかと提唱した。

合わせて、販売した製品、製造に関連したデータ、および知財など、さまざまな情報のトレーサビリティの仕組みを構築していくことが重要と述べた。

川野氏は、製造現場のIT化を進めるにあたってのそもそもの課題として、日本だけではなく世界的にも、まだまだつながっていないのが実情との認識を示した。たとえば、工場で使われているフィールドバスも物理層やプロトコルのレベルでさまざまな規格が乱立しており、「オープンな規格はあっても、業界を統一する規格にはなっていないのが現実」と述べた。

その結果、現在のスマート工場は特定の製品を生産するために局所最適化されているだけで、バリューチェーンの全体最適になっていないと指摘し、競争領域は既存のまま残しながら、協調領域を切り出してバリューチェーン内で相互に接続する仕組みを考えるべきと提案した。

羽田氏は、製造業のITはオープン化が進む一方で、リアルタイム性、信頼性、堅牢性などは業種や顧客によって要件が異なるため、独自システムの優位性は当分は続くだろうとの見通しを示した。ただし、オープン化や標準化が進むとスマート工場を支えるシステムを安価に構築できるようになるので、中小企業にこそメリットが大きいのではないかと述べ、まずはつないでから次の展開を考えてもいいのではないかと提案した。

ものづくりとITとの戦略的な融合で日本企業も勝機を

最後に「競争力を維持するために日本企業は何をすべきか」がテーマに掲げられた。

川野氏は、企業、業界、学会、国がそれぞれの立場で、守るところ、攻めるところ、組むところを戦略的に明確化することが重要と提唱した。また、中堅企業に対する長期的な投資を促進するような政策や、日本企業同士が連合を組む場合の利害調整が必要になるだろうと述べた。

西岡氏はアカデミックの役割として、「つながるものづくり」を推進する「インダストリアル・バリューチェーン・イニシャティブ」というコンソーシアムを2015年中に発足させる計画や、日本機械学会にて製造現場のリファレンスモデルの策定を進めている活動を紹介した。「サプライチェーンとエンジニアリングチェーンの両方を合わせたバリューチェーンの視点で、日本の工場のデジタル化をお手伝いしていく」(西岡氏)。

羽田氏は、生産活動から生まれるビッグデータを適切に解析する同社のBIツール「MCFrame BI」や、さまざまな情報を現場で閲覧できるようにするスマートデバイス向けツール「MCFrame for iPad/iPhone」を紹介し、ソリューションサプライヤの立場から、エンジニアリングチェーンのIT化を支援していきたい考えを示した。

「MCFrame Day 2015」では以上の「スペシャルトークライブ」のほか15の個別セッションが開催され、いずれも多くの聴講があり、盛況裏に幕を閉じた。

お問い合わせ
  • 東洋ビジネスエンジニアリング株式会社


    MCFrame Day 2015 事務局
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    URL http://www.mcframeday.com/