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組み込みの進化をリードするRTOS、存在感を高める「INTEGRITY」

コンシューマをはじめ産業機器、自動車、航空宇宙など、いまや組み込みシステムの応用は多岐に広がる。こうした中、中核技術であるリアルタイムOS(RTOS)の市場で大きな存在感を示しているのがGreen Hills Software 社の「INTEGRITY」である。このリアルタイムOSが高い評価を受ける理由や今後の可能性などについて、テクニカル・パートナーとして、20 年以上前から日本でGreen Hills Software 社の製品を展開しているアドバンスド・データ・コントロールズに聞いた。

名知 克頼氏
アドバンスド・データ・コントロールズ
営業本部 ビジネス開発 FAE

高度な制御と優れた応答性を両立させたリアルタイムOSは、いまや産業機器をはじめとしてさまざまな機器や装置に搭載されている。

かつては機器メーカーが、自前のリアルタイムOS を開発することも珍しくなかったが、最近では商用製品が使われることがほとんどである。マイクロカーネルタイプの小規模タイプからミッションクリティカルな用途にも対応した高機能タイプまで、さまざまな商用版リアルタイムOSが市場に登場している。この中で、Green Hills Software 社のINTEGRITYが幅広い分野で多くの技術者から支持を集めている大きな理由は優れた特徴を数多く備えているからだ。

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例えば、カーネル空間とアプリケーション空間の完全な分離、アプリケーションプログラムごとの独立した物理メモリ割り当て、タスクに対するCPU時間の保証、高速な割り込み応答、デターミニスティックな動作、強固なセキュリティおよび安全性(機能安全を含む)、高速起動、マルチコア対応、仮想化テクノロジーのサポートなどである。つまり、現在のリアルタイムOSに求められるあらゆる要件を高次で実現している(図1)。

INTEGRITYの採用実績は、民間航空機、防衛、人工衛星、鉄道システム、テレコミュニケーション機器、医療機器、FA 機器などの産業機器、農業機器、金融システム、放送機器、セキュア・スマートフォン、業務用プリンタおよびコンシューマ用プリンタなどのほか、自動車のクラスタディスプレイ(デジタルコックピット)やインフォテイメント機器など多岐にわたる。「INTEGRITYは、商用リアルタイムOSのグローバルマーケットにおけるシェアでは、トップ3社の一つです。しかも、いまもかなりの勢いで市場が拡大しています」(アドバンスド・データ・コントロールズ 営業本部 ビジネス開発 FAE 名知克頼氏)。

機能安全にいち早く対応

INTEGRITYの開発元であるGreen Hills Software 社は、もともとはコンパイラの開発からスタートした米国のソフトウエア会社である。創業は1982 年。INTEGRITYの提供を開始したのは1997年のことである。リアルタイムOS ベンダーとしてすでに20年近い実績を持つことになる。

INTEGRITYは、航空宇宙などきわめてクリティカルな用途への展開を前提にしている。このため、信頼性、堅牢性、応答性、セキュリティなどを重視しながら開発が進められてきた。その特徴は、航空・宇宙、防衛、医療、産業全般などさまざまな分野で最高レベルの認証を取得済みであることからも分かる。

とくに、セキュリティについては、NSA(米国家安全保障局)が定める評価保証レベル「EAL6+」の認定を唯一取得した商用OSとしても知られている。機能安全については、産業分野を対象にした「IEC 61508:SIL3」の認証を取得済みのほか、自動車の機能安全を定めた「ISO 26262 ASIL-D」の認証取得を第三者機関と協議中だ。

自動車の進化とともに用途が拡大

分野を問わずに採用の動きが広がっているINTEGRITYだが、最近は自動車分野において注目度が高まっているという。「ADAS(先進運転支援システム)や統合コックピットなど、新たな機能の実現には高い堅牢性など高度な要求に合理的に対応できるソフトウエア・プラットフォームが不可欠です。これがINTEGRITYに対するお問い合わせが増えている大きな理由の一つだと思います」(名知氏)。

例えば、クルマの機能安全規格「ISO26262」では、異なるレベルのASIL 認証の対象となっているソフトウエア・コンポーネントを共存させる場合は、コンポーネントの中でもっとも高いレベルの基準にそろえなければならないと規定されている(パート6・パラグラフ7. 4. 11)。

INTEGRITYならば、こうした厳しい条件にも素早く対応できる。実は、ソフトウエア・コンポーネント間の非干渉が保証されればそれぞれの基準に対応したままで共存させることが可能だ(パート9・パラグラフ6)。

INTEGRITYは、カーネル空間の完全な保護とアプリケーション空間同士の完全な独立性を保証しており、異なるソフトウエア・コンポーネントを共存させても互いに一切の干渉が及ばないという特徴がある(図2)。つまり、ソフトウエア・コンポーネントのすべてをASILの最上位レベルに合わせる必要がなくなる。「それぞれの空間が完全に分離されているため、プログラムが開発しやすく、また信頼性も高められます。こうした特徴は自動車メーカーやサプライヤからも高く評価されています」(名知氏)。

技術パートナーの実績は20 年以上

INTEGRITYの日本国内における技術サポートを受け持っているのがGreen Hills Software 社のアジア太平洋地域における販売代理店兼テクニカル・パートナーであるアドバンスド・データ・コントロールズ(ADaC)である。両社の関係は1992 年から始まっている。つまり、20 年以上にもわたって協業を続けており、両社の信頼関係は固い。

同社は、INTEGRITYそのものの技術サポートだけではなく、ユーザシステムの機能安全認証取得に向けた幅広いサポートを提供している。「ドキュメントの提供やトレーニングを含め、さまざまな形でお客様をサポートしています」(名知氏)。INTEGRITYや、統合開発環境「MULTI」を含むGreen Hills Software社製品に関する技術的な問い合わせについては、経験豊かな同社のエンジニアが窓口となって対応する。そのうえで必要に応じてGreen Hills Software 社の専任部隊と連携して対応する体制を設けている。

組み込みシステムに対するニーズの多様化が進むにつれて、リアルタイムOSをはじめとする基本技術の選び方はますます重要になる。これとともにリアルタイムOSを選択する技術者の目は一段と厳しくなるだろう。幅広い業界で多くの実績を誇るGreen Hills Software社のINTEGRITYに注目する技術者は、ますます増えるに違いない。

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