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IoTのゲートウェイとして存在感増すMECHATROLINK

ものづくりの自動化推進に大きな力を発揮するのがロボット。ロボットをいかに高精度に活用できるかで、自動化とそれによる効率化のレベルは変わってくる。そのロボットや工作機械などのモーション制御に特化したフィールドネットワークとして知られるのが「MECHATROLINK」だ。MECHATROLINK協会の三輪氏は、モーション制御のためにMECHATROLINKが備えている機能について紹介。さらにMECHATROLINKによるM2Mのコミュニケーションが、IoTの世界で果たす役割などについても解説した。

三輪 卓也氏
MECHATROLINK協会
事務局代表

MECHATROLINKは、ロボット大手の安川電機がロボットや工作機械の高機能化をはかるために開発したフィールドネットワーク。2003年にオープン化されたことで、ユーザの拡大に弾みが付き、2005年には対応機器ベンダやユーザによるMECHATROLINK 協会が発足している。会員数は2015年2月時点で2339社にのぼり、そのうち1135社を占める中国での普及が著しい。

マスタ機器のコントローラと現場のサーボやロボット、ステッピングモータなどスレーブ機器をつなぐフィールドネットワークのMECHATROLINKは、モーション制御に特化している。モーション制御は従来、アナログのパルス制御が一般的だったが、パルス制御ではマスタとスレーブを直接つながなくてはならず、配線も軸の数だけ必要だ。ユーザが高精度を求める中で制御対象のスレーブや軸数は増加しており、マスタのモジュールや配線が増大し構成が複雑化している。多様な情報の伝送ニーズも高まっており、位置決め以外に応用が利きにくくノイズにも弱いアナログのパルス制御は、現在のものづくり環境では力不足の感が否めない。

省配線でコスト低減や高速化や拡張性を追求しやすいネットワーク型のモーション制御は、そうした背景をもとにユーザのニーズを引きつけている。中でもロボットメーカとして定評のある安川電機で開発されたMECHATROLINKは、高精度のモーション制御を必要とする生産現場に広く採用されている。MECHATROLINKには、RS-485ベースのMECHATROLINK-IIとEthernetベースのMECHATROLINK-IIIがあり、MECHATROLINK-IIIは伝送速度100Mbps、伝送周期31.25マイクロ秒という高速の通信を実現している。

リトライ機能を専用ASICで提供

MECHATROLINKが高精度の制御を行える理由の一つが、コマンド・レスポンス方式による同期性の保証だ。MECHATROLINKでは各軸に対してコマンド送信とそれに対するレスポンス受信をした後、同期フレームを一斉同報する。それぞれの軸は同報された同期フレームを受信したタイミングで、その前に受信したコマンドを一斉に実行するため、コマンドの実行を同期させることができるようになっている。

MECHATROLINKが正確な同期を可能にしている仕組みにはもう一つ、リトライ機能もある。ノイズなどによりコマンドが伝送されず、一部の軸が正しく制御できず位置ずれが起きそうな場合に、コマンドを再送信する機能だ。再送信は同一伝送周期内で自動的に行われるため、動作が遅れることなく正確な制御を維持できる。またリトライ時のコマンドのやり取りは専用のASICがつかさどっており、「ユーザがアプリケーションの方で意識する必要がない」(三輪氏)という。

リトライ機能による信頼性の確保は、コスト削減ももたらしていると三輪氏は指摘する。ライン型のトポロジでもリトライ機能により通信を維持できるため、リング型でスレーブをつなぐ必要がなく、ケーブルやマスタの機能開発にまつわるコストを抑えられるとしている。

遠隔保守を可能にするメッセージ通信

MECHATROLINKは高精度化を推進する一方で、位置決めに限らない情報伝送のニーズにも応えようとしている。その役割を担うのが、MECHATROLINK-IIIが備える「メッセージ通信」機能だ。同期フレームから次の同期フレームまでの伝送周期の中に、軸の制御のためのコマンド送信などとは別に空き時間を確保し、その部分を使ってデータを読み書きするコマンドをやり取りする。コマンドはベンダが独自に規定することも可能だ。

三輪氏はメッセージ通信機能を活用する例として、スレーブ機器の調整作業をあげた。一般にスレーブ機器の調整や設定変更を行う場合、ベンダ提供のエンジニアリングツールをインストールしたパソコンを、スレーブ機器のUSBインタフェースなどに直接つなぐ必要がある。しかし軸ごとに接続を切り替える必要があるうえに、機器が狭いところにあると接続自体が難しい。メッセージ通信機能を使うと、調整のための書き込みをコントローラ経由で行えるため、「コントローラに接続したパソコンから一括して調整ができ、作業工数を大幅に削減できる」(三輪氏)という。

同様にスレーブ機器のデータトレースも、個々のスレーブ機器に直接つなぐことなく、コントローラ経由で吸い上げることが可能としている。通常、スレーブ機器内部の通信周期は、マスタ機器のコントローラとスレーブ機器の間の通信周期より短いため、コントローラで収集するデータは間引きしたものになってしまう。しかしメッセージ通信機能を使うことで、コントローラの通信周期に左右されることがなくなり、正確なデータを取得できるわけだ。

メッセージ通信機能に無線通信機能を組み合わせれば、リモート対応も実現できる。クリーンルーム内のネットワークにWiFiのアクセスポイントをつなぎ、クリーンルームの外から装置を調整したり、3G回線を使ったM2Mモジュールで、遠隔地の工場のトラブル対応にあたったりすることなどが可能という。特に海外の工場の場合は「日本国内のマザー工場から技術者を派遣したりする必要が少なくなり、迅速な対応とコスト削減を進めることができる」(三輪氏)ことになり、そのメリットは大きい。三輪氏は「MECHATROLINKに対応したマスタ機器が、IoTのゲートウェイとして機能できるようになる」と強調し、新しいものづくりの環境として推進していく意向を示した。

MECHATROLINKのメッセージ通信機能では、エンジニアリングツールによるスレーブ機器のメンテナンスを、コントローラ経由で行うことができる
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