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老朽インフラ監視に最適なDust Networks、電池だけで7年から10年の動作が可能:リニアテクノロジー

2014年2月20日に開催された「Trillion Sensors Summit Japan 2014」でリニアテクノロジーは、「Dust Networks:予測可能な高信頼性スケーラブル・ワイヤレス・センサ・ネットワーク(WSN)」と題してDust Networksのテクノロジーを紹介した。電池だけで数年以上も動作可能な超ローパワーと通信の堅牢性が特徴である。国内で課題となっている老朽インフラの状態監視に最適なワイヤレスネットワークとして国内での展開を加速する。

小林 純一 氏
リニアテクノロジー株式会社
ダスト・エバンジェリスト

Dust Networks社は米カリフォルニア大学バークレー校でコンピュータサイエンスの教授を務めるKris Pister教授らによって2004年に設立され、2011年12月にリニアテクノロジーに買収され傘下となった。「Dust」の名前の由来は、ワイヤレスネットワークのノードがホコリのようにあらゆるところに点在することをイメージしたものである。

メッシュトポロジーで構成されるワイヤレスネットワーク「SmartMesh」がDust Networksのテクノロジーであり、通信の堅牢性が高く、かつ、電池での長時間動作が可能な超ローパワーが特徴だ。周波数は2.4GHz帯を使用する。IEEE 802.15.4に準拠したIPベースのソリューションと、プロセス制御などで用いられるWirelessHARTベースのソリューションとがある。

米国を中心に100件以上の導入実績

小林氏は講演の前半でDust Networksの応用事例を紹介した。はじめに米ロサンゼルス市が進めている「LA Express Park」を取り上げた。Dust Networksチップが組み込まれたマグネティックセンサーモジュールを同市が管理するおよそ6000箇所のパーキングスペースの路面に設置し、クルマの有無をセンシングしてDust Networksを介してセンターで収集したのち、パーキングスペースの混雑状況などをスマートフォンアプリを通じて利用者に提供するとともに、利用の平準化を図るために時間帯料金制度などを導入したプロジェクトである。センサーモジュールは内蔵電池だけで5年ないし10年間動作するという。

プラント向けのプロセスコントロールなどを展開する米Emerson Process Management社は、プラントの遠隔監視のデータ収集にDust Networksを採用している。一般にプラントは数平方kmにも及ぶ広大な敷地に建設されることが多いため、監視用のセンサーデバイスを有線ネットワークで接続するのはコスト的にも困難である。小林氏は「こういった目的や条件において、ワイヤレスネットワークを採用するメリットは計り知れない」と述べた。複数のプラントで累計でおよそ20万ノードが稼働中だという。

エネルギーを扱う米Chevron社は太陽熱発電設備の遠隔監視にDust Networksを採用した。パネルの姿勢をモニタリングするために、およそ一万枚のパネルそれぞれにDust Networksデバイスが取り付けられているという。

以上のような事例が米国を中心にすでに100件ほど稼働中であるという。日本においても、ソーラーファームでのパネルの遠隔監視や、農業の自動化における環境監視のセンサーネットワークとして、引き合いがあることを明らかにした。

時刻同期により平均50μAの超ローパワーを実現

後半ではDust Networksを実現するテクノロジーを説明した(図1)。最大の特徴である電池のみで数年に亘る動作を実現するために、すべてのノードはあらかじめ決められた時刻に一斉に起動し、きわめて短いタイムスロットの間に通信を行ったのち、すぐにスリープ状態に入って待機中の消費電力を極限まで抑えるという、TDMA(時分割多元接続)に基づく独自の方式を採用した。

図1. TDMA方式を採用して超ローパワー動作を実現したDust Networks
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各ノードの時計は最初の通信確立時に互いに同期が行われ、その後は正確に維持される。ノードチップに内蔵されているクロック回路の消費電流は約1μAと小さく、ネットワーク上でノードが5ホップ離れている場合でも互いの時刻の誤差が±20μs程度に収まるほどの高い精度があるという(図2)。

図2. 5ホップ離れたノード間での時刻同期誤差
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センサーネットワークとしてDust Networksと比較されることの多いZigBeeの場合、エンドデバイスの上位にあたるルーターは受信を常時待機しているため30mA程度を消費し、電池駆動には適さない

一方でDust Networksは、「20秒に一回通信を行った場合で、平均電流はおよそ50μAと小さい」(小林氏)。また、通信間隔によって消費電流が決まるため、電池の消費が決定論的に求められ、動作寿命を算出できるのも特徴だという。

使用するセンサーデバイスにもよるが、センサーノードに外部電源を供給する必要がなく、かつ、電池交換のスパンを数年から10年と長くとれるため、設置コストやメンテナンスコストを抑えられるというメリットがある。

プラント監視などにも適した高い堅牢性

通信の堅牢性が高いのもDust Networksの特徴である。通信エラーが発生した場合は次のタイムスロットで異なるチャネルを使って通信を行い、それでも再度エラーが発生した場合は、その次のタイムスロットでさらに異なるチャネルで再度通信を試みる。

「通常は1回目の送受信で90%以上が成功するため、2回ないし3回とリトライをするケースは稀であり、消費電力の増加もわずかです」と小林氏は述べる。なお、「冗長度3」はもっともバランスに優れるとの判断で採用したという。

また、メッシュ型トポロジーを採用しているため通信の代替ルートが常に確保される。ZigBeeの場合はエンドデバイスはひとつのルーターとしか通信できない。

このような周波数冗長性(チャネルホッピング)と空間冗長性(メッシュトポロジー)によって高い堅牢性を実現しており、小林氏は「プラントの監視など、通信エラーが許されないようなシビアな用途にDust Networksが使われている理由がここにある」と強調した。

コンソーシアムを結成し普及を推進

現在、ノードを構成する「LTC5800-IPM」チップおよび「LTP5901-IPM/LTC5902-IPM」モジュールや、ネットワークマネージャである「LTC5800-IPR」チップなどを供給中である。

リニアテクノロジーでは、こうした特徴を持つDust Networksの応用を広げるために、センサーメーカーやITインテグレータなどを交えたコンソーシアムを結成する計画であることを明らかにした。

最後に小林氏は、「インフラの維持補修を担う人的リソースが限られている現状を考えると、劣化の兆候をセンシングして条件ベースでメンテナンスをしていくことが老朽化が進むインフラ問題を解決するには有効」との認識を示し、結成予定のコンソーシアム活動などを通じて関連企業や関連団体・自治体と連携を密にしながら、国内のインフラの維持管理の一助を担いたいとの意向を示した。

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