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高付加価値のセンシング技術を追求、MEMSを軸に先進ニーズに対応

「ビッグデータ」や「IoT(Internet of Things)」など大量のデータを扱う大規模システムの話題が増えている中、オムロンのセンサ事業についての社会の関心が高まっている。MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やICなどの半導体デバイスを軸に、高付加価値のセンシング技術を追求しているからだ。同社が展 開する技術や製品が、大量のセンサとICT(情報通信技術)を融合した次世代情報システムの実現に貢献する。

湯上 勝行 氏
オムロン 経営基幹職
マイクロデバイス事業部 営業推進部長

日本におけるオートメーションのパイオニアとして知られるオムロンは、制御機器・FAシステム、電子部品、車載電装部品、社会システム、健康医療機器・サービスなど幅広い事業を手掛けている。それらの中で新規事業として位置付けられているのが半導体技術をベースにした先進的なセンサを扱うマイクロデバイス事業である。  同事業を担当するマイクロデバイス事業推進本部が掲げている事業ビジョンが「Beyond the Semiconductor」である(図1)。「長年培ってきたMEMS、IC、パッケージングの技術を融合して、新たな付加価値をお客様に提供することを目指しています」(同社マイクロデバイス事業部営業推進部長 湯上勝行氏)。つまり、圧力、慣性力、流量、温度、音、光など様々な自然界の現象を捕捉する微小な機構系MEMS。MEMSを制御するために必要なIC。さらに、これらの技術を使いやすい形で市場に提供するためのパッケージング技術を一貫して手掛ける。市場のニーズに応じて、これらの技術を最適な形で融合することによって、付加価値の高い製品を実現するというのが同社のビジョンである。「オムロンは、MEMS、IC、パッケージングを一貫して手掛けている数少ない企業の一つ。これはMEMSデバイスを展開するうえで大きな強みと言えるでしょう」(湯上氏)。

図1 オムロン マイクロデバイス事業推進本部のビジョン
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開発設計から量産まで一貫体制

マイクロデバイス事業の中核拠点が、同社野洲事業所(滋賀県)である。マイクロデバイス事業の全機能が同事業所に集まっている。「開発設計、量産試作、信頼性評価、量産まで一貫した体制を設けています。これは市場ニーズに応じた製品を、速やかに開発して市場に投入するうえで有利です」(湯上氏)。

同事業所の敷地内にある野洲工場は、国内でも有数の規模を誇るMEMSの生産設備として知られている。大口径の8インチ・ウエハを使った高効率のMEMS製造ラインと5インチ・ウエハ対応のMEMS製造ライン。さらにMEMSとともに展開するアナログICやパワーICの生産ライン、MEMSモジュールの組み立てラインも同工場内に設けている。

高付加価値と大口の両方を狙う

MEMSに対する同社の取り組みの歴史は長い。1980年代に研究開発に着手。1990年代に入って業界でいち早くMEMSを応用したセンシング・デバイスの製品展開を始めた。血圧計用圧力センサ、車載用加速度センサ、ガス・メータ用圧力センサを皮切りに、気流を測定するフローセンサや赤外線を検知するサーマルアレイセンサなどを製品化。2000年代後半になると半導体テスタ用RFスイッチ、超小型マイクロフォン、モバイル用RFスイッチなど一段と品種を増やしている。このころから周辺回路と一体にした集積型圧力センサや高機能マイクロフォンなども製品化した。「『環境』『医療』『セーフティ/セキュリティ』の分野をターゲットにした高付加価値製品の市場と、『モバイル』や『ヘルスケア』など単品デバイスで大きな需要が見込める市場の両方に向けて製品を展開します」(湯上氏)。

最近ではICTの進化を背景に、電力網など社会を支えるインフラストラクチャや工場などの大規模施設を、大量のセンサを使って制御・監視するシステムを実現する動きが活発化している。ここで浮上する新しいニーズにも積極的に対応する。「センサの技術を追求しているだけでは需要は生まれません。新しいセンシング技術の“出口”となる可能性があるサービスや事業、システムを手掛ける方々との接点を設けて、市場のニーズを掘り起こす考えです」(湯上氏)。

高付加価値の複合センサを実現

大規模システムを意識した同社の開発成果の一つが、「環境複合センサ」である(図2)。複数のセンサを一つの筐体に収めたものだ。内蔵バッテリで動作し、測定データは無線通信を使ってリアルタイムで外部に送信する。「複数のセンサを組み合わせることで、単品のセンサでは得られない情報を収集することができます。さらに、これを広い地域に多数設置することで、新しい価値を持った『ビッグデータ』を創出できる可能性があります」(湯上氏)。同社は実際に、MEMS絶対圧センサ、MEMS非接触温度センサ、風量と風向が測定できるMEMSフローセンサ、温湿度センサ、照度センサの五つを一体化した環境複合センサを試作。展示会に出展するなどして環境複合センサがもたらす付加価値をアピールしている。「オムロンのMEMSセンサだけでなく社外の技術も採り入れながら、新しいニーズに対応した高付加価値の環境複合センサを提供するつもりです」(湯上氏)。

図2 環境複合センサの試作品
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ユニークな加速度センサを展開

大規模なシステムに向けたユニークな特長を備えたMEMSセンサも用意している。0.1Galの検出が可能な分解能を備え、0.1Hzと低い周波数の加速度を検出できる加速度センサだ(図3)。MEMSで実現した微小なおもりが、慣性力によって動く仕組みを利用して加速度を検出する。検出加速度は最大4Gで、2万Gの耐衝撃性を備える。「バルクMEMSプロセスを採用し、従来品より高い慣性力を備えたおもりを実現することで低周波の測定を可能にしました。ビルや橋梁など大規模な構造物の振動をマルチポイントで測定し、耐震性をモニタリングするシステムなどに展開できるでしょう」(湯上氏)。

図3 0.1Hzと低周波を検出できるMEMS加速度センサ
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ビッグデータの時代を迎え、センサの用途が一気に広がる機運が高まってきた。こうした中で、MEMSの技術を軸にしたユニークなセンシング技術を展開するオムロン。センサに対するニーズが広がるにつれて、事業を通じて社会課題を解決することに取り組む同社の存在感はますます高まるに違いない。

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