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アルプス電気

車載市場とスマートフォン市場で好業績を上げるアルプス電気。好調なこれら既存事業に加え、「環境・エネルギー」「ウエアラブル」「ヘルスケア」の分野でまいてきた種が次々と芽吹き始めているという。新しい市場での斬新なアイデアと確かな知見を持った企業とのコラボレーションで、同社の強みが織り込まれた製品が相次いで市場に投入される。同社 代表取締役社長の栗山年弘氏に、既存市場の見通しとさらなる拡大を見せる新市場の育成戦略を聞いた。

――2014年度上期の決算は、売り上げ、利益ともに予想を上回る結果です。

栗山 車載とスマホ市場向け製品が好調で、為替効果を差し引いても予定通りの実績を上げることができました。ただし、確かに足元は好調ですが、当社の売り上げの3/4を占める海外市場の景況感が薄れる方向にあり、来年以降の事業は少し慎重に考えています。

――とはいえ、車載市場では、衝突回避システムの普及など電子化が拡大しているのは明るい要因です。

栗山 車載市場が電子部品の売り上げの約50%を占める当社にとって、自動車の電子化は確実にプラスです。さらに安定した事業を進めるためには、5年後10年後の製品を創出し続けていくことが重要です。今年のCEATEC JAPANではその一例を紹介し、高い評価を得ることができました。

――もう1つの軸であるスマホ市場の先行きをどう見ていますか。

栗山 スマホ市場は、ここ数年2桁成長を続け、電子部品の売り上げの約25%を占めるまでになりました。しかし、スマホの機能に成熟感が出ているため、これまでのような高成長はあまり期待できないものと捉えています。

芽吹き始めた新市場

――安定した成長が期待できる車載市場と、瞬発力のあるスマホ市場、それぞれのよい部分がかみ合って2014年の好業績を生み出しているのですね。

栗山 今好調だからといって、車載やスマホ市場に偏り過ぎると、将来の大きなリスク要因となることは明白です。好調な時期だからこそ、次の主軸事業を生み・育てることが重要だと考えています。幸い2014年は、新市場の開拓に関して、手応えを感じる1年になりました。「環境・エネルギー」「ウエアラブル」「ヘルスケア」の分野で、ここ数年まいてきた種が芽吹き始めてきたのです。

――「環境・エネルギー」では、どのような成果が出ているのですか。

栗山 詳細は明らかにできませんが、省エネルギー化に向けた技術・製品を、海外企業と共同開発する契約を締結しました。エネルギー関連のビジネスはスマホなどと異なりデバイス単品ではなく、半導体やファームウエアも含めたモジュールとして提供する必要があります。既に当社は車載市場でモジュール事業の経験を豊富に蓄積しており、これが生きてくる市場だと思っています。

――既存市場の経験が新市場の強みにつながるのは、好ましい方向ですね。「ウエアラブル」関連ではいかがですか。

栗山 斬新なアイデアを持つ企業とコラボレーション開発してきたウエアラブル機器が、今年末から来春にかけ商品化できる段階になりました(下写真)。これは、当社が培ってきたセンシングやワイヤレス通信デバイスなどを活用したもので、スタイリッシュでありながら画期的な機能を盛り込むことに成功した商品に仕上がっています。

プライベートショーで好評を得たモバイル・ウエアラブルゾーン
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CEATEC JAPAN 2014米国メディアパネルイノベーションアワード部門賞を受賞
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 さらに「ヘルスケア」の分野でも、多くの企業とのコラボが同時進行しています。こうした取り組みを進めるのは、当社の技術力に医療業界などの専門的な知見を取り入れることで、これまでにない新しい商品の開発や画期的な新機能を実現できると考えているからです。

新旧市場に貫かれる2つの指針

――既存市場の経験を生かしつつ、新たな知見も取り入れ新市場を開拓する。これからどのような花を咲かせるのか、とても興味深いですね。

栗山 アルプス電気の強みを生み出す源泉である事業指針は、既存市場であっても、新市場であっても一貫しています。当社では、自社の強みを発揮できる製品を生み出すために、「外は擦り合わせ、内は標準化」と「しみだし」という2つの事業指針を掲げています。

 「外は擦り合わせ、内は標準化」は、多様なお客様の要求に、できるだけ効率よく応えるための指針です。例えば車載市場では、車種ごとの個性・グレードを表現するために、ユーザーの目に入り、手で触れる部分に特徴を出すことが求められます。この部分に使う製品の仕様は、お客様と徹底的に擦り合わせる必要がありますが、共通化できる機能は徹底的に標準化を進めます。

 一方「しみだし」は、これまで培ってきた技術・事業の強みを生かした製品を連鎖的に開発していくことを狙った指針です。当社の技術の強みは、「ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)」「センシング」「コネクティビティー」の分野にあります。例えば、自動車での採用が進む電子シフターは、その機構、操作フィーリングなど重要な商品特性は、これまで手掛けてきたHMIやセンシング技術などを融合させ実現しています。当社は、長年にわたり多種多様な操作デバイスを民生や車載機器において製品化し、技術とノウハウを蓄積してきました。こうした知見を生かすこと、すなわち、自社の持つ強い技術の延長線上で新たな技術・製品を開発していくことが重要になるのです。

――既存市場の成長維持と新市場の育成には人材面の活用も重要になります。

栗山 その通りです。当社では、「Veterans at Experienced Job, Youngers at New Job」を人材の活用と育成の指針とし、新市場の開拓には極力若い人材を充てるようにしています。ベテランは勝手の分かった市場をその経験やノウハウで効率的に、若い人はアグレッシブな視点や思考で臨むことがよいと考えています。また、新卒採用の約3割を女性に、1割を海外からの留学生にするなど、多様な発想ができる環境作りも進めています。

日本を基点とする海外展開

――新市場の育成を鑑みて、これからのグローバルな事業体制をどのように考えていますか。

栗山 例えば「ヘルスケア」は、高齢化の進んだ先進国が大きな市場となり、そこで技術や事業のイノベーションが起こるでしょうし、日本もその一国だと思っています。そういう意味で、技術とビジネスモデルの開発は日本を中心に進めます。一方、海外現地法人は、グローバルでの一体経営は保ちながら、日本に頼らず自ら新製品を立ち上げ改善し、さらにローカルビジネスを創出する。すなわち、今まで以上に自立した姿を目指す。これらが、アルプス電気の考える「グローバルカンパニー」なのです。

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  • アルプス電気株式会社


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