日経テクノロジーonline SPECIAL

アナログ・デバイセズ

B2CからB2Bへとビジネスの軸足を移しつつあるアナログ・デバイセズ(ADI)が、新しい市場での業績を着実に伸ばしている。センサーや無線技術など同社の競争力が高い技術の応用先に、IoT(Internet of Things)のような生活や社会活動に大きなインパクトをもたらす新しい動きが出てきた。通信、自動車、産業機器といった同社製品が多く使われているアプリケーションを中心に、今後の市場の方向性とそこでの同社の役割を、同社代表取締役社長の馬渡修氏に聞いた。

――2014年はどのような年でしたか。

馬渡 世界的には、堅調に伸びる車載機器向けと投資が活発だった基地局向けが好調で、前年比で9%成長しました。近年注力してきたヘルスケアも、売り上げはまだ小さいのですが、通信分野に次いで伸びています。

 日本市場は、売り上げの約25%を占めていた民生機器向け市場が急速に縮みましたが、それでも4%成長できました。車載機器向けと産業機器向けの伸びが成長を支えました。特に産業機器向けは、売り上げの約40%を超えています。

事業の軸足をB2Bに移す

――民生機器向けの落ち込みを補って余りある成長があったわけですね。

馬渡 ADIは、世界的にB2Bビジネスを強化しています。継続的な成長ができる領域で、優れたソリューションを、安定的に提供できる会社を目指しています。ただし民生分野をやめるわけではありません。事業領域を「ライフスタイル」という新しい区分で捉え直し、生活の質の向上への貢献度合いを評価しながら事業を進めます。スマートフォン向けやヘルスケア向けは、ここに含めます。

 技術領域から見た場合のADIのミッションは、アナログ情報で満ちた自然界とデジタルな世界を結ぶ役割を担うことです。センサーやアンテナから入った情報を、分析や制御、加工を行うデジタル回路にキッチリと受け渡します。

――現在好調な基地局向けを含む通信関係では、今後どのような技術・製品を提供していくのでしょうか。

馬渡 基地局では、部品の小型化と高集積化が急激に進んでいます。ADIは、RF回路部の高集積化を推し進めます。LTE Advancedや第5世代には、特に高集積化したチップで対応していく方向です。未公表の最先端技術を活用した製品が2015年に登場する予定です。

 また、ミリ波関連の製品を強化し、アプリケーション拡大を促進します。今年、Hittite Microwave社という、優れたミリ波技術を保有する会社を買収しました。ミリ波技術は、2020年の実現を目指す第5世代携帯電話やADAS向けの77/79GHzレーダー・システムの中核技術です。Hittite社のモジュール化技術を活用すれば、機器設計を容易にできます。RFコンバーター、PLL、VGA、DSPなどADIが保有している基地局向け製品と合わせて、ミリ波システム用の製品を包括的なソリューションとして提案していきます。

図 アナログ・デバイセズの製品がカバーする周波数帯域とそのアプリケーション
[画像のクリックで拡大表示]

――車載機器関連ではいかがですか。

馬渡 日本には世界の自動車業界をリードする企業が数多くあります。ADASなど電子化の分野では、今のところ欧州メーカーが先行していますが、電気自動車やハイブリッド車など電動化の分野は確実に日本のメーカーが先行しています。パワートレイン、安全、インフォテインメント、ADASなどそれぞれの機能について、日本の先進的なお客様のニーズに応える技術・製品を開発していきます。

センサーと無線でIoTに貢献

――日本市場で重要な産業機器は。

馬渡 「IoT」「M2M」「Industry 4.0」といったキーワードで、産業機器の新時代が語られています。これらは、センサーと有線/無線を中心としたコネクティビティーが重要になる点で共通しています。建造物やインフラ、製造装置などにセンサーと無線機能が組み込まれ、稼働状況をリアルタイムで把握したり、老朽化を事前に察知したりする手段として広く活用されることでしょう。

 センサーでは、これまで加速度や角速度など物理情報を主に収集し、応用されてきました。これからは、ガスやpHなど化学情報を取得するセンサーの応用も広がります。当社でも、このようなセンサー信号処理の技術開発を進めています。

 コネクティビティーで、現在ADIが特に推している技術が、超低消費電力の近距離無線技術「Wi-SUN」です。これまで国内市場でスマートメーターやビル内などでの通信技術として使われていましたが、世界中で使える規格として、FAメーカーや計測器メーカーの注目を集めています。

――IoTは、ヘルスケアでも新市場を創出しそうです。

馬渡 ヘルスケアでは、データ分析の分野でADIの強みが生きます。CTスキャン、超音波診断など医療機器の診断装置では、高度なデータ変換と信号処理が求められるからです。ADIは、こうした医療機器向けのコンバーターとアンプで、既に高いシェアを誇っています。こうした技術の蓄積と市場での実績が、ウエアラブル端末やバイタル・サイン・モニターのような新しいアプリケーションにも生かされます。日本は、医療費の高騰、高齢化など、解決すべき課題をこの分野で多く抱えています。IoTとクラウドを活用することで、病気の早期発見や、生活習慣を見える化して効果的な健康管理が可能になります。

 ヘルスケアにIoTを応用する場合、個人情報である生体情報を守るためのセキュリティーの確保が欠かせません。超低消費電力でセキュリティー機能を実現できる技術が必要になります。加えて、EMIに対するロバストネス(堅牢〈けんろう〉性)も求められます。ここでの対策にも、ADIが培ってきたノウハウと経験が生かされます。

――システム開発に踏み込んだ技術を提供していくことになりそうですね。

馬渡 最近のお客様は、デバイスの性能が優れているのは当たり前、加えて、いかに設計しやすい環境やIPなどがそろっているかを採用の基準とします。さらに、機器開発の初期段階で活用する、地域ごとの技術規格の違いなどの情報も要求されるようになりました。

 こうしたお客様が求める情報を、必要なときに、的確に把握し提供して、「Customer Experience」の質を上げます。ADIには、世界中に約30カ所のデザインセンターがあります。それぞれ特色のある技術、各地域のニーズを反映した技術を持っています。こうした世界の情報をタイムリーに届け、お客様が価値ある機器を開発していくためのお手伝いをしていきます。

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