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アラス

日本の製造業は改善活動の繰り返しで変化を重ね、強さを増してきた。しかしそのビジネスプロセスを支えるPLMは、大掛かりすぎて変化に即応できる仕組みになっていないのが現状だ。PLMソリューション「Aras Innovator」を提供するアラスジャパン 社長の久次昌彦氏は、製造業が将来にわたって強さを発揮し続けるには、PLMにはしなやかさが必要と強調。それを可能にするモデルベースSOAによって、ユーザーの成長を支えていくとした。

――日本法人設立から2年半余りがたちました。これまでの事業を振り返っていただけますか。

久次 2012年5月に米Aras社の日本法人として事業を開始し、最初に取り組んだのは、当社のビジネスモデルを理解していただくことでした。当社はPLMで一般的な製品のライセンス販売ではなく、製品の将来的な拡張も含めた長期的なシステムの成長と安定稼働を確約するサブスクリプション形態を採っています。パートナーや顧客にその仕組みを説明するところからのスタートでした。

 サブスクリプションという形態を採っている理由は、PLMのユーザーである製造業は常に改善と成長を続けており、システム基盤もそれに合わせて変化を続けていく必要があると考えるからです。ユーザーが事業を拡張しようとしているのに、固定的なシステムが足かせとなってしまっては本末転倒です。結局ユーザーはシステムをバージョンアップせざるを得ず、そのたびに膨大な構築費用が掛かっていました。

 サブスクリプションは、顧客が成長してビジネスモデルが変わっても、システムを継続して使い続けられるようにする新しいソリューションの提供形態です。システムの将来的な成長をサポートするサブスクリプションサービスを有効活用できるように、当社のPLM「Aras Innovator」は、「モデルベースSOA」という仕組みを採っております。

――モデルベースSOAとはどのような考え方なのでしょうか。

久次 ベースとなるウェブサービスとソリューションモデルを統合し、ビジネスプロセスをグラフィカルな環境で定義すれば、それがリアルタイムでソースコードに反映されるアーキテクチャーです(図)。ビジネスの変化に合わせて柔軟にシステムを変更できる点が特徴で、コンパイル作業なども不要なため、迅速に新しいシステムを導入できます。

図 Aras Innovatorはソリューションモデルでシステムを定義できる「モデルベースSOA」を採用している
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 設計のプロセスは各社各様であり、各社の強みの源泉もそのプロセスにあります。しかもプロセスに日々磨きをかけて、新たな付加価値創造を目指しています。ならばシステムにはそのプロセスに合わせられる柔軟性が必要なはずです。しかし現実には、多くのPLMがCADのデータ管理目的で生まれたため、使えるCADに制約があるなど、PLMのシステムを立ち上げた後は柔軟性が十分確保できないのが実情です。

 Aras米国本社が2000年に設立されたのも、そうした背景を受けたものでした。ベンダー側に囲い込まれていては、製造業をはじめとするPLMシステムの利用企業は将来にわたって強さを発揮し続けることができない。その問題を解決するために生まれたのが、Aras InnovatorのモデルベースSOAという仕組みなのです。

サプライチェーン全体を最適化

――成長のために導入したPLMが、成長の妨げになりかねない。そこからAras Innovatorが登場したわけですね。

久次 その通りです。PLMシステムでのデータ管理は長期間にわたります。しかしその間に、導入したPLMがサポート切れなどを迎えると、ユーザーは否が応でもアップグレードやデータの移行を行わなくてはなりません。ユーザーが導入したPLMシステムに左右されず事業を継続できるようにするために、サブスクリプションという形態を採っているのです。

 製造業がPLMを導入し始めてから十数年が経過し、導入時には見えなかった機能の拡張性やアップグレードおよびシステム間のインテグレーションにまつわる問題が、具体的に表面化しつつあるようです。そうした問題が再発しないように、モデルベースSOAで構築できるPLMソリューションを提案していく方針です。日本法人設立から2年半で、ソリューションを提供するパートナーや成功事例も十分集まり、その体制は整ったと考えております。

――具体的には2015年、どのようなことをお考えですか。

久次 PLMそのものだけでなく、PLMに蓄積したデータを効果的に活用する方法も含めて提案していきます。そのひとつとして、ユーザーの社内だけでなくサプライチェーンも巻き込んだPLMを、顧客とともに追求していきます。

 ものづくりの世界ではサプライチェーンがグローバル化しています。調達から製造、物流といった横方向のサプライチェーンだけでなく、それぞれに関わるサプライヤーやパートナーなど縦方向のサプライチェーンも広がっており、複雑化が進んでいます。一方でPLMのユーザーは設計領域だけにとどまらなくなり、ものづくりに携わるあらゆる関係者が使うことを考えなくてはならなくなりました。マトリックス状に広がったサプライチェーンを最適化できるPLMをAras Innovatorで実現していきます。

 そのための具体的な機能強化のひとつとして、大規模ユーザー向けの設計情報基盤としてのスケーラビリティーの強化も行っています。通常、Aras Innovatorを含めたPLMでは数百、せいぜい1000程度の同時アクセスが可能であれば十分なのですが、ユーザーの広がりに合わせてAras Innovatorは50万ユーザーの同時アクセスを担保できるようにテストを行い、スケーラビリティーのある稼働状況の実績を積み上げ、ホームページで情報を公開しています。

 メカニカルCAD管理だけでなく、電気CADの管理やBOMなど個別アプリの充実、マルチデバイス対応も進めていきます。ユーザーが広がれば、必要な機能に特化したアプリケーションや使う端末も多様化が求められると考えられるからです。使う端末を選ばないことでSNSが急速に普及したように、Aras InnovatorもiOSやAndroid用ライブラリーを提供してスマートフォンからも使えるようにしていく方針です。

 ユーザーを見ていると、PLMで管理したいのは設計データだけではないようです。実際、Notesのような文書管理データベースから移行してきた顧客もいます。一般的にPLMはCADとERPの間に位置するものと考えられていますが、当社はCADからERPまでのフロー全体を支えるインフラとして、Aras Innovatorを提供していきたいと考えています。

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