日経テクノロジーonline SPECIAL

日本シーバ

携帯電話のベースバンド処理、常時オンの音声処理、デジカメや監視カメラの画像処理など、さまざまな機器の中核機能を担う超低消費電力DSPコアを提供するベンダー。それがシーバである。外からは見えない電子機器の中核部に置かれた同社のコアは、意外なほど身近なところに、驚くほど多く使われている。日本シーバ 代表取締役の日比野一敬氏に、車載機器など現在注力している応用分野の動向と新市場開拓の方向性、そしてそこでの同社の強みについて聞いた。

――ワールドワイドでの今年の総括をお聞かせください。

日比野 事業の柱である「通信」「コネクティビティー」「音声」「画像」の4分野全てで、過去最高のライセンス実績を上げることができました。特に、売り上げの6割を占める通信の分野で、好調だった中国市場での携帯電話が業績を押し上げました。アジアで作られる携帯電話に採用されているアプリケーションプロセッサーやベースバンドチップのほとんどに、当社のDSPコアが搭載されています。これが10億個を超える出荷を達成しました。

日本は新市場開拓の拠点

――日本市場ではいかがでしたか。

日比野 日本市場も好調でした。それにも増して、これまでお付き合いのなかった会社との取引が生まれたこと、新しい分野での取引ができるようになったことが将来につながる成果となりました。日本市場では、画像用や音声用の引き合いが非常に多く、シーバの中では新市場の開拓拠点と位置付けられています。音声用では、話し掛けることでスリープ状態から立ち上がる常時オンの音声センサーを実現できるDSP「CEVA-TL410」、音声認識、ビームフォーミングなど高度な音声処理を実行できるDSP「CEVA-TL421」が、画像処理ではコンピュータービジョン向けのDSP「CEVA-MM3101」が、着実に採用を広げています(図)。

図 さまざまな用途で活用されるシーバの超低消費電力DSPコア
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――現在、どのような機器に採用されているのですか。

日比野 例えば、CEVA-MM3101は、産業分野では監視カメラ、民生分野では高級デジカメなどの画像処理エンジンとして使われています。業界標準のコンピュータービジョン向け仕様「OpenCV」や同アクセラレーション向け仕様「OpenVX」などに準拠したライブラリを既にそろえており、効率よく最大の効果が得られる開発環境を強みにして、さらに採用の拡大を狙います。

――今後は、どのような機器での利用を期待していますか。

日比野 車載機器分野に期待しています。先進運転支援システム(ADAS)の発展と普及に伴って、コンピュータービジョンの活用が、予想よりも速いペースで広がっています。この分野でも、低消費電力化が可能で、開発環境が整備されていることをアピールし、業界標準を目指したいと考えています。

――車載機器は、他の分野にはない独特の参入条件があります。

日比野 その通りです。例えば、機能安全の認定を受けることが採用の条件になります。シーバはDSPコア、対応OS、開発環境など利用に必要な要素全てで、2015年中に他社に先駆けて「ISO26262 ASIL B-D」の認定を取得する予定です。さらに、長期にわたる技術開発の継続やサポート体制の維持も求められます。シーバの財務状況は極めて健全であり、10年間のサポートを要求されても、「Yes」と即答できます。

 また、ADASに限ったことではありませんが、車載機器では、シーバがグローバル企業であることの強みを生かしてお客様に貢献したいと考えています。現在、ADAS分野でのアルゴリズム開発は、欧州の自動車業界がリードしています。また安全テストでの「EuroNCAP」のように、欧州市場で対応すべき基準もあります。私たちは、シーバの欧州チームが現地で培った経験を日本に伝えていきたいと考えています。

IoT市場での日本企業の強みを支える

――日本での事業が広がりますね。

日比野 楽しみな分野は他にもあります。シーバは、圧倒的な消費電力の低さを生かし、IoT(Internet of Things)市場でのDSPコアの利用促進に注力していきます。

――IoTのどのような部分にシーバのDSPコアを活用するのでしょうか。

日比野 データを収集するセンサー・モジュールに当社のDSPコアを搭載して、データ処理を先に行い、転送するデータ量を削減し、システム全体の低消費電力化と効率化に貢献します。また、Bluetoothなどの近距離通信、4Gなど遠距離通信の部分でも、当社の超低消費電力DSPコアが効果を発揮します。2014年、RivieraWaves社を買収し、Wi-Fiでも当社の低消費電力コアを利用できるようになりました。

 センサー・モジュールの低消費電力化で、ウエアラブル機器は大きな進歩を遂げることでしょう。また、センサーをさまざまな場所に、置きっぱなしにできるようになります。これによって、土の中に埋め込んで、畑の状態を常時監視して農業の効率化に役立てたり、家庭内の各所に配置し、温度や湿度を監視して快適な環境とエネルギー効率の向上を両立させたりできます。

――2015年に予定しているトピックスをお聞かせください。

日比野 画像処理用のDSPコアの次世代版をリリースする予定です。ベクター浮動小数点演算機能を搭載し、インテリジェントなマルチコアのシステム構成が可能になります。また、単純計算を繰り返す演算の効率を向上させるため、その演算に向けた専用ハードをDSPコアに直結できるようになります。

――新しいコアは日本でのニーズに合いそうですね。

日比野 シーバのDSPコアは、一つひとつのコアの命令セットや内部構成などを、想定したアプリケーションに最適化して作られています。どの部分をハードで対応し、どの部分をソフト処理できるようにすべきなのか。キッチリと見極めて開発しています。

――日本のお客様に向けてメッセージをいただけますか。

日比野 日本には画像処理とIoTの分野で力を発揮する優れた会社が数多くあります。超低消費電力DSPコアの提供を通じて、日本のお客様が元気よく、世界に打って出るお手伝いをしていきたいと考えています。

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