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イマジネーションテクノロジーズ

スマートフォンやタブレット端末のグラフィックス・コントローラーIPの定番である「PowerVR」のほか、「MIPS」プロセッサーIPコアや通信用IPコア「Ensigma」などをトータルで提供する英イマジネーションテクノロジーズ。同社のソリューションは、IoTやウエアラブル機器など、新たなアプリケーションの基盤としても注目を集めている。日本の半導体ベンダーやシステム・メーカーとの関係も深い同社の取り組みを、最高経営責任者(CEO)を務めるホセイン・ヤサイ氏に聞いた。

――2014年のビジネスを振り返ってください。

ヤサイ 当社では、グラフィックス制御やビデオ処理向けのIPコア「PowerVR」シリーズ、組み込み用の高性能プロセッサーIPコア「MIPS」シリーズ、ネットワーク用IPコア「Ensigma」を中心にソリューションを展開しています(図)。これらのビジネスを測る指標であるライセンシー数やデバイスの出荷数などを見ると、当社の会計年度である2013年5月から2014年4月までの1年間でいずれの事業も十分な成長を見せています。ご採用いただいている企業の規模や分野も多岐にわたっています。

図 最新MIPSコア「I6400」を搭載したSoCのコンセプト
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 例えば、ワールドワイドの数字として、ライセンシー数は30%もの伸びを示し、MIPSシリーズの出荷数は約7億個を数え、PowerVRシリーズとEnsigmaシリーズの合計も約5億3000万個に達しました。

――イマジネーションテクノロジーズは、2013年2月にMIPSテクノロジーズを買収しました。プロセッサー・ビジネスの状況と戦略について教えてください。

ヤサイ 組み込み用のプロセッサーやマイコンは、携帯電話、タブレット端末、テレビ、産業機器、自動車といった従来の応用分野に加えて、新市場として期待されるIoT(Internet of Things)の実現においても重要な役割を担います。現在のプロセッサーIPコアの市場規模は、年間で約100億個です。今後はIoT関連がローエンド・マイコン市場を、ADAS(先進運転支援システム)がハイエンド・マイコン市場の拡大をけん引していくと見ています。数年後には、市場規模は数百億個に拡大するでしょう。

 プロセッサーIPコアの分野では、英ARM社が大きな勢力を持ち、約80%ものシェアを得ています。しかし、一極化はあまり健全とはいえません。どんな市場でも1社による独占はあまり好まれないものなのです。

 当社は2013年2月からMIPSアーキテクチャーのプロセッサーIPコアを提供しており、2013年度には48社の新たなライセンシーを獲得しました。消費電力が小さく、セキュアーで、かつ性能の高いMIPSアーキテクチャーに、多くのお客様が将来の可能性を感じ取っている証しといえるでしょう。

 さらなるアーキテクチャーの開発やエコシステムの拡充に向けて積極的な投資を進めていきます。同時に、IoT分野の拡大などを追い風に、今後5年の間にシェアを30%程度にまで高めていきたいと考えています。

――ネットワークIPコアの「Ensigma」について教えてください。

ヤサイ モバイル機器はもちろんのこと、組み込み機器にしてもIoTシステムにしても、一般に「コネクティビティー」と呼ばれるネットワーク機能の搭載が不可欠です。ただし、これまでネットワーク・コントローラーは、IPではなく単体チップとして供給されることが一般的でした。このため、SoCに組み込んで小型化を図ることができませんでした。

 当社の「Ensigma」はWi-FiやBluetoothなどのさまざまな通信規格をプログラミングできるフレキシブルなネットワーク用IPコアです。かつて単体チップとして供給されていたグラフィックス・コントローラーが、今ではIPを使ってSoCに統合するのが当たり前になっています。コネクティビティーにも同じようなことが近い将来に起こるでしょう。数年以内には極めて大きなマーケットに成長すると期待しています。

IoTなど新市場に注目

――そうしたビジネスの先行きを見極めるうえで、近年のエレクトロニクス市場の動きをどのように捉えていますか。また、どのような分野に注力していく予定ですか。

ヤサイ タブレット端末やスマートフォンなどのモバイル分野は、若干の減速傾向が見られます。ただし、ペースが緩やかになったというだけで、成長は依然として続いています。一方で、4Kテレビ、ウエアラブル機器、IoT、ADAS、ホーム・コネクティビティーなど、いくつかの新市場の成長が顕在化しつつあります。当社としても、そうした新しい分野に注目しています。

 例えば、当社のMIPSプロセッサーIPコアは、既に多くのウエアラブル機器に採用されています。加えて、コンパクトな「OpenGL ES」を実現するPowerVRグラフィックスIPコアと、ワイヤレス・コネクティビティーに向けた「Ensigma」も提供しています。つまり、ウエアラブルという新しいマーケットに対応できる高い競争力を持ったソリューションと技術を保有しており、業界内では極めて強力なポジションにいると考えています。

 IoTも大きく成長していくでしょう。既存の技術の延長だけではなく、これまでにない技術との連携によって、社会が抱えているさまざまな課題を解決することこそが、IoTが目指すべき方向だと思います。例えば、高齢化に伴うヘルスケア、省エネを実現するエネルギー・マネジメント、食料危機に向けた農業の効率化など、さまざまな分野の課題解決にIoTの価値が発揮されると考えています。

日本メーカーの復権に寄与

――日本市場への取り組みを教えてください。

ヤサイ 日本の半導体産業はここ数年間にわたって難しい時代を過ごしてきました。しかし、最近になって各社ともに事業の選択と集中が明確になり、いよいよ苦境を脱しようとしています。ルネサス エレクトロニクス、富士通セミコンダクター、東芝など、日本の主要な半導体ベンダーと築いてきたパートナーシップを基盤としながら、お互いのさらなる成長に向けて協力関係を一層進めていきたいと考えています。また、社名はまだ出せませんが、「PowerVR」だけではなく、「MIPS」や「Ensigma」に関心を持つ日本のお客様も増えてきています。

 グラフィックスとビデオ、プロセッサー、そしてコネクティビティーという3本の柱によってお客様のソリューション構築をお手伝いすることが当社の使命です。その一環として、IoTアプリケーションを手軽に構築できる「FlowCloud」というサービスも提供しています。日本のメーカーには世界の新しいトレンドを上手に捉えて成長の波に乗っていただきたいと思っています。当社がそこで何らかのお手伝いができれば幸いです。

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