日経テクノロジーonline SPECIAL

キーサイトテクノロジー

キーサイト・テクノロジーは2014年8月、アジレント・テクノロジーの電子計測事業が分離独立して誕生した。75年前に計測器メーカーとして創業したヒューレット・パッカード(HP)社を源流とする世界最大の計測器メーカーだ。会社分割によって、計測器開発に経営資源を集中させて、よりニーズに合致した製品を提供できる体制が整った。分社で何が変わり、何が変わらないのか。日本法人を率いる梅島正明社長に、同社の目指す先や事業戦略について聞いた。

――分社後の業績はいかがですか。

梅島 アジレントの事業のうち、ライフサイエンス・診断・応用市場(LDA)事業を残し、電子計測事業を分社化してキーサイトとして独立しました。キーサイトは、1939年のHP社創業時の事業に戻った形になります。業績は非常に好調で、ワールドワイドの売上高は2014 年度通年で2%、第2四半期は8%伸びました。日本法人も第4四半期は7%と大きく成長しました。

幅広い計測器のニーズに応える

――分社化して何が変わりましたか。

梅島 まず、検討すべき分野が絞り込まれているため、意思決定のスピードが非常に速まりました。また、計測器の幅広いニーズに対応するための技術開発に大きく投資できるようになりました。

 分社前は、成長しているLDA事業への投資が優先される傾向がありました。ニーズがあっても投資できない計測器のテーマがあったのです。計測器業界をリードすべき当社がこうした状態にあることは、お客様にとって好ましい状況ではありませんでした。計測器に特化したキーサイトであれば、幅広い分野のニーズにきめ細かく対応できます。

自動車と5Gの分野を伸ばしたい

――今後どんな分野に注力しますか。

梅島 まず移動体通信システムでは、第5世代(5G)向けの測定器に注力します。5Gは、東京オリンピックが開催される2020年の実用化に向けた技術開発が進められています。

 5Gはまだ初期のリサーチ段階ですが、2017年までには商用を見越した開発段階へ移ると見込んでいます。規格の詳細は未定ですが、超高速かつ大容量のデータ通信が必須となり、ミリ波周波数の利用や広帯域信号、超多チャンネル・アンテナ技術など、これまで以上に高度な技術が用いられると考えられます。

 当社では、業界で初めて5Gに特化したデザイン検証環境用EDAソフトとして「5GベースバンドExplorationライブラリ」をリリース。キーサイトの持つ伝搬チャンネル推定、新規通信システム方式をシミュレーション可能な設計支援ツール、ミリ波多チャンネル測定などトータルな評価環境で、5Gの主要技術開発をサポートしていきます。

自動車の高度化を支える

――他の分野ではいかがですか。

梅島 自動車分野では、販売数と高度な技術ニーズの両方が見込めます。日本では、2020年での自動運転技術の実用化に向けて動き始めており、高度な通信やレーダー技術に向けた計測ニーズが生まれます。また、車載ネットワークの規格が従来のCANを高速化したCAN FDに置き換わりつつあり、ここでも新しい計測技術で貢献できます。

 ただし、欧米市場では標準規格に沿った技術が採用されることが多いのですが、日本の自動車メーカーは長年培ってきた独自規格への対応を求める傾向があります。日本固有のニーズに、どう応えられるかが課題です。

――自動車関連の具体的な製品をいくつか教えてください。

梅島 2014年10月末に衝突防止用レーダーのテストに利用できるマイクロ波信号発生器「N5193A UXGアジャイル信号発生器」と、スペクトラム・アナライザ「N9040B UXAシグナル・アナライザ」を投入しました。いずれも独自技術によって、位相まで変えた模擬信号の発生や、広帯域でダイナミックレンジの高い解析が可能です。これまで不可能だったより現実に近いテストができます。

 その他、CAN FD向けには不具合原因の切り分けを迅速に行えるオシロスコープなどを提供します。それ以外の車載ネットワークや、これから規格が決まる車々間通信や路車間通信についても、迅速に対応できる準備を進めています。

 搭載数が増えているパワー半導体では、スイッチング速度や変換効率の評価が厳しくなっています。高精度の半導体特性チェッカーとして半導体デバイス・アナライザーを用意しています。

お客様の技術開発の先で待つ

――キーサイトの強みはどこでしょうか。

梅島 長年にわたり培ってきた最先端の技術に加え、自前の半導体工場を持っている点が大きな強みです。計測器のコア部品を自分で作れるメーカーは多くありません。時代の先端を行く計測器には、市場で売っていない部品が必要になります。このため、自分で作る力を持った計測器メーカーだけが、新しい時代を切り開くことができます。

 例えば、自動運転を実現するためには車両周辺の歩行者を検知できるように、衝突防止用レーダーの分解能を現在の1mから10cmに上げる必要があります。この測定には、信号の周波数を4GHz幅で振らなければなりません。従来は数MHzから数十MHzですから10倍以上の振り幅です。弊社の独自部品を使わない限り実現できません。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

梅島 2つあります。ひとつは、これまで以上に多くのニーズにお応えできるようになりましたので、是非ご相談いただきたいこと。もうひとつは、当社の製品を導入しているお客様に、使用状況を検証させていただきたいことです。測定対象が高度化するにつれ、測定技術の難易度も上がっています。HP創業から75年間に積み上げてきた当社の膨大なノウハウや経験を活用すれば、もっと精度よくもっと速く計測できる方法をお伝えできます。「HARDWARE+SOFTWARE+PEOPLE=INSIGHTS」(ハード+ソフト+人が、新しい洞察を生む)を標榜する当社の人材をぜひご活用ください。

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