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マキシム

ユニークな特徴を備えた製品を数多く提供しているアナログ半導体大手の米Maxim Integrated社。同社の最近の動きや日本市場に向けた取り組みなどについて、日本法人マキシム・ジャパンの代表取締役社長 滝口修氏に聞いた。同社は、ビジネス基盤の安定化を図るため、2013~2014年に世界全体の分野別売上比率を戦略的に最適化。「車載」の売り上げの急成長が続く日本では、ビジネス拡大に向けて新たな一手も打つ考えだ。

――Maxim Integrated(以下、Maxim)のグローバルなビジネスの2014年を総括してください。

滝口 Maximのビジネスに関する2014年の大きな動きのひとつは、分野別の売り上げ比率が大きく変わったことです。

 Maximは、「モビリティー」「通信/データセンター」「産業/医療」「車載」「コンピューティング」の大きく5つの分野に注力しています。その中でも特に近年は、産業/医療と車載に力を入れてきました。

 2014年の売り上げの中で、産業/医療と車載が占める割合は35%で、前年の27%から急伸しています。通信/データセンターの売上比率も、15%から24%に大きく伸びています。

 相対的に、これまで売り上げの大半を占めていたモビリティーの比率が、前年の46%から36%に、従来から市場で高い存在感を示してきたコンピューティングの比率が、12%から5%に変化しました。これは、これまでモビリティーの分野の急成長をけん引していた、スマートフォン向け市場での需要が落ち着いたことも影響していると思います。

 こうした分野の構成比率の変化は、戦略的な取り組みの成果です。ビジネスの基盤強化を図るために、この1年の間に分野別売り上げのバランスの最適化を図りました。

日本では「車載」の急成長続く

――日本市場での成果は。

滝口 日本市場では、2014年の売り上げ全体は2013年とほぼ変わりありません。ただし、引き続き車載が好調で、売り上げ全体を力強くけん引しています。

 日本の車載市場に本格的に参入したのは5年前のことです。これ以降、年平均成長率50%以上と急ピッチで成長しました。最近の売り上げは、5年前の10倍に達しており、既に世界全体の約4分の1を日本市場での売り上げが占めるようになりました。

 さらに、産業/医療の売り上げも年率20%強とハイペースで伸びています。産業用ではPLC(programmable logic controller)、医療用では超音波断層装置の市場が当面のターゲットです。目下のところは汎用品を中心に展開していますが、その中でも特に独自の特徴を備えた製品を中心に拡販を進めています。代表的には、堅牢(けんろう)性が重要な産業用インターフェースRS-485製品で、35kVのESD耐圧を実現し、お客様の製品の市場での不良発生率改善に貢献しています。

――日本の車載市場での成果は。

滝口 車載市場に新規参入した当初は、比較的参入しやすい「インフォテインメント」の領域を狙いました(図)。具体的には、ドライバーIC、電源用IC、テレビチューナー用ICです。これらに加えて、最近ではADAS(先進運転支援システム)などセーフティー分野やボディー分野にも注力しており車載カメラ用高速シリアル通信やLED照明用のICなど、インフォテインメント分野以外の製品分野の売り上げが伸びてきました。

図 Maximの自動車向けソリューション
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厳しい品質管理体制を構築

――車載向けは、品質に対する要求が最も厳しい製品カテゴリです。

滝口 厳しい品質の要求に応えるための取り組みを進めています。そのひとつが米国本社で、事業部門、評価部門、品質部門をまたぐ形で展開している「ゼロ・ディフェクト・キャンペーン」です。これは厳しい車載向けの品質要求を念頭においた製品設計と評価検証を徹底するための活動です。

 2012年から、新製品の立ち上げ時に厳しく品質を管理する「Safe Launch Program」も導入しました。量産を始めてから一定の期間、あらかじめ設定した品質レベルに達するまで高いレベルの厳しい品質管理を実施するというものです。

 こうした全社の取り組みに加えて、日本法人のマキシム・ジャパンでは、全ての関連部門に車載業務に精通した専任部隊を設置し、お客様を強力にサポートしています。

日本で基幹部品の生産強化

――2015年以降に向けた展開について教えてください。

滝口 車載については、新規分野の売り上げを伸ばす考えです。現状では標準品を提供していますが、カスタム品の提供を始めることも考えています。現在そのための準備を進めているところです。この狙いは「動く」「止まる」「曲がる」といった自動車の基本機能を支えるシステムに使われる最重要保安部品の市場に進出することです。この領域の製品には、カスタムICが使われる場合が多いです。

 最重要保安部品の品質を維持しながら安定供給できる体制を構築するための取り組みの一環として、製造パートナー企業のひとつであるエプソン酒田事業所に、最小加工寸法0.18μmの車載向け最先端BCD(Bipolar、CMOS、DMOS)プロセスラインを立ち上げます。現在、Maximの車載向け認証手続きを進めているところです。

――車載以外の分野については。

滝口 産業/医療の市場を開拓するための取り組みとして、日本のお客様のニーズをベースにした製品の開発も始めたいと思っています。いわば“Defined in Japan”と呼べる製品です。現在提供している製品は、主に欧米市場のニーズを基に開発したものです。このため日本のお客様が製品の仕様に合わせて設計しなければならない場合がありました。日本市場のニーズを丁寧にくみ取って開発した製品を提供し、産業/医療など新しい分野の市場を開拓するつもりです。まずは、標準インターフェース向けやセキュリティー用など実現しやすいところから始める考えです。

 Maximのミッションは、ユニークな特徴を備えた高品質の製品を安定して供給することで、お客様が開発する製品の市場競争力強化に貢献することです。今後の展開に是非期待していてください。

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