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村田製作所

村田製作所が好調だ。主力事業であるスマートフォン(以下、スマホ)向け電子部品では、市場の変調が指摘される中でも安定した収益を上げている。成長過程にある自動車向けも、電子化と電動化の波に乗って伸びしろは十分だ。既存市場での強みをベースに、新市場の開拓にも余念がない。新市場の知見を集め、部品単体だけでなくシステムにも踏み込んだ技術開発を進めている。同社代表取締役社長の村田恒夫氏に2014年の総括と新市場開拓への取り組み状況を聞いた。

――今年の業績が好調です。

村田 2014年度は、好調なスマホ向け製品と安定成長している自動車向け製品がけん引し、売上高9650億円、営業利益1700億円の増収増益を見込んでいます。特に全売り上げの40%弱を占めているスマホ向け製品の生産はフル稼働の状態です。一方、自動車向けは自動車の生産台数が確実に増加していることに加え、電子化と電動化の進展によって今後も堅調な成長が期待できそうです。

スマホ市場が変化しても事業は安定

――コモディティー化の進展や格安機を扱う中国企業の台頭など、スマホ市場の先行きを懸念する声が聞かれます。

村田 スマホ向け製品は、アップグレードシフトで小型品を中心とした搭載数の増加により電子部品の需要が拡大しており、まだまだ有望な市場です。当社の製品は、高周波回路など通信機能の根幹部分を担っています。流行に左右される機能ではないため、確実な需要を見込めます。

 特に、新しい通信規格が導入されれば、大きな商機が生まれます。2014年、China Mobile Communication Corp.(CMCC)が5モード対応機を推奨し、中国市場でLTEが一気に普及。表面波フィルターなどの需要を押し上げました。また、携帯電話機(フィーチャーフォン)からスマホへの買い換えが進めば、それが低価格機でも、データ通信用の高周波部品の点数が2倍に増えます。

――変化が激しい市場での安定感は驚きです。

村田 通信機能の根幹部分での強みがあります。当社は、スイッチ・デバイスで豊富な実績を持つPeregrine社の買収を決めました。これによって、アナログ・フロントエンド全てのデバイスについて、開発、設計、生産、販売まで一貫して自前で賄える世界で唯一のメーカーになります。また、短納期での大量供給が求められるスマホ向けでは、要求に応じた数量を確実に供給できる体制が求められます。2014年12月から福井で新生産棟の建設を始め、供給能力を増強し対応力を強化します。

――自動車向けの先行きをどのように見ていますか。

村田 自動車向けは参入には長い時間がかかります。ただし、一度参入できれば息の長い安定した市場になります。当社の売り上げに占める自動車向けの比率は、2008年度には約10%でしたが、現在は約15%まで上がっています。現時点での自動車1台当たり電子部品の搭載数は、平均3000個に達しています。将来的には、電子化や電動化の進展によってさらなる増加が確実です。

――どの用途で成長していますか。

図1 MEMSジャイロコンボセンサー
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村田 特に、センサーがさまざまな車種、さまざまな部分に使われ始め、業績にハッキリと反映されるようになりました。駐車支援システムに使われる超音波センサーが代表例です。今後、多くの国や地域で衝突回避システムが義務化される方向であり、センサーはさらに伸びそうです。安全性の面からも、横滑り防止などに向けた加速度・ジャイロセンサーがESCに搭載されるようになりました。ここには、2012年に買収したフィンランドのMEMSセンサ・メーカーの技術が生きます(図1)。

――新市場に向けても、活発な提案をしていますね。

村田 これまではプロダクトアウトでの技術開発が多かったのですが、新市場の開拓に向けては「自動車」「ヘルスケア」「環境・エネルギー」に絞って、マーケットインでの技術開発を進めています。これらの新市場はいずれも、「無線技術」「センサー技術」、そして小型・高機能を可能にする「モジュール化技術」という当社の強みを生かせる市場です。ただし、自信過剰は禁物です。それぞれの市場に精通するお客様の声をよく聞き、技術開発と事業の方向性を逐次修正していきます。まだ数値目標を掲げる段階にはありませんが、事業の姿を明確にしていく予定です。

――ヘルスケアに向けたウェアラブル端末が登場し始めました。

村田 ウェアラブルの最初の具体的なニーズは、ヘルスケア分野から出てくると考えています。これまでコードをつながないと計測できなかった生体情報が、ウェアラブル端末から無線を経由して、リアルタイムで計測可能になります。患者の負担軽減や日々の健康状態の記録ができるため、こうした利便性が認知されれば必ず普及すると考えています。

システム・ソリューションを提供

――環境・エネルギーは、村田製作所の事業としては異色に見えます。

村田 確かに、エネルギーは重電のイメージがあり、弱電に強い当社とは合わないように見えるかもしれません。ところが、電力の需給バランスを精緻に制御する省エネルギー化システム「HEMS」や「BEMS」は、センサー技術や無線技術が重要であり、当社の強みが生かせる分野です。「横浜スマートコミュニティ・スマートセル」のような場を借りて、スマートハウスを実現する技術「EMS(Energy Management System)」の実証実験を行っています。製品化を見据え、実証実験で着実に知見を蓄積しています。また、データセンター用の電源部品事業も強化しています。

――新市場では、電子部品にとどまらない広い知見が必要になりますね。

図2 村田製作所チアリーディング部
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村田 その通りです。近年、お客様のニーズに応えるソフトやハードを含めたシステム技術の開発に注力しています。2014年9月、ロボットの4代目、球乗りのロボット10体によるダンス・パフォーマンスを繰り広げる「村田製作所チアリーディング部」を発表しました(図2)。初代の「ムラタセイサク君」のときから、ロボット開発は、現場が自発的に企画し、楽しんでやっています。最新ロボットに用いられているセンサーと通信技術は、人とモノが高度に融合していくスマート社会のコアインフラになると考えています。このロボットは、私たちの生活を豊かにするエレクトロニクスの可能性を示しています。

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