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スパンション

米Spansion社の動きが活発化してきた。車載用マイコンやフラッシュメモリー製品などのラインアップを拡充する一方、2015年には、同社が富士通セミコンダクターから引き継いだマイコンとアナログ分野で、新たな世代の製品投入を予定している。独自の組み込み用メモリーに、マイコンやアナログの技術を組み合わせてシナジー効果を発揮させる。こうした取り組みの背景にある戦略や2015年の事業展開について同社日本法人 代表取締役社長の後藤信氏に聞いた。

――現在の事業体制を教えてください。

後藤 当社は、2013年8月に富士通セミコンダクターからマイコンとアナログの事業を引き継ぎました。しかし、それに伴う大きな体制変更をいきなり実行すると、それまで約束していた製品のロードマップの実現に、お客様が不安を抱きかねません。そこで事業を取得した直後は、あえて体制を変えませんでした。顧客から見ての変化はないというメッセージを伝えるためです。

 半年間その状態を維持した後、グローバルな組織を、フラッシュメモリー、マイコン、アナログの3つの事業部門に再編し、融合を進めました。それを受けて日本法人も、2014年3月にそれぞれ分かれていた営業部門を一体化。事業の融合でそろった3つの製品を、顧客に総合的に提案できる体制が整いました。

――製品開発についてはいかがですか。

後藤 これまでマイコンとアナログ製品については富士通セミコンダクターが提示していたロードマップを維持することに専念していました。しかし融合が進んだ今、それぞれのリソースを活用し、新製品を投入できる時期が来たと考えています。

 融合の結果生まれる新製品のひとつとして2015年に投入を予定しているのが、40nmフラッシュマイコンです。

 当社はこの40nmのフラッシュマイコンを、スパンションが持つ独自技術「embedded Charge Trap(eCT)」を使って、2015年の前半に民生機器用、同年半ばに車載用にそれぞれエンジニアリングサンプルを出荷する予定です。

 eCTは、従来のフラッシュメモリーに比べて構造が簡素で、集積度を高めやすく、読み出し速度が速い点が特徴です。スパンションのフラッシュメモリーの技術と富士通セミコンダクターが培ったマイコンの技術が組み合わさった、初めての製品として具現化することになります。

 今後、マイコンはARMコアを搭載した製品を展開しますが、競合の多いARMコアは、コア以外の部分で他社との差異化が欠かせません。eCTというスパンションの独自技術は、差異化の大きな武器になると考えております。

 一方55nm世代以前のプロセス技術で製造する製品については、現在、富士通セミコンダクターに生産を委託していますが、今後は、スパンション自社工場およびファウンドリーを活用した生産体制の最適化を進めていく方針です。

実質的に半分は日本の会社

――アナログ分野では、どのような展開をお考えですか。

後藤 アナログ技術にスパンションの組み込みシステムの技術を融合させ、具体的なアプリケーションに合わせた電源ICを提供していきます。

 ひとつはエナジーハーベスティング用の電源ICです。エナジーハーベスティングは、センサーを多用するIoT(Internet of Things)の実現に効果的な技術とされます。その実現に必要なマイコンと電源ICの両方の技術を持つ当社は、レファレンスキットの提供などで、具体的なソリューションも提供していく方針です。

 既に2014年秋からは、大日本印刷様と共同で、商業施設などで顧客向けに情報を配信するビーコン端末による実証実験を行っています。この端末には当社の電源ICが搭載されており、光によるエナジーハーベスティングで電池レスを実現しています。

 また、Xilinx社の「Zynq 7015 FPGA」向けの電源ICも発表しました。これは、FPGAの複雑なパワーアップ・シーケンスに対応し、柔軟な出力電圧設定が可能な高集積、高効率、マルチチャンネル電源ICです。

 さらなる電源ICのソリューションは、LED照明用のドライバーICです。特に人感センサーなども組み合わせたインテリジェントな照明をターゲットとしています。光の制御やDC-DCコンバーターなど必要な機能を1チップ化したICを提供することで、開発コストの削減や期間短縮を実現していきます。

――車載向けソリューションへの対応を教えてください。

後藤 車載用マイコン「Traveo™」ファミリとアナログ製品との融合も図り、お客様の車載システム開発のニーズに対応できることを目指します。特にクラスター向けのS6J3200シリーズは、独自の高速メモリーインターフェース技術「HyperBus™」を搭載しており、メモリーとの高速な接続を実現できます。また、独自グラフィックスコアを搭載し、外付けのビデオRAMなしに高品位な描画を実現します。これらを核に車載向けソリューションの幅を広げます。

図 Traveoファミリー ロードマップ
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――製品の開発体制は。

後藤 スパンションは米国の会社ですが、現在の成り立ちをたどれば、実質的には半分日本の会社です。日本には900名強のスタッフがおり、そのうち約650名は開発部隊です。開発機能が海外の本社だけにあり、日本にいるのは営業とフィールドアプリケーションエンジニアだけという外資系の半導体メーカーが多いなか、当社のような規模の開発機能を日本に持つ外資系半導体メーカーは極めて珍しいといえます。それだけ日本の顧客を重視しているわけで、日本のお客様の意見を十分取り入れる体制ができているといえます。

 サプライヤーの意思決定機能が海外のヘッドクオーターに集約されており、自分たちの意見がなかなか通らず、もどかしい思いをした日本のユーザーもいることでしょう。しかしスパンションはグローバルでの売り上げの40%、マイコンやアナログに限れば70%を日本のユーザーが占める会社です。当社が日本を重視した製品/サービス提供を継続するのは当然のことであり、日本のユーザーの期待に今後も応えていきたいと考えております。

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