日経テクノロジーonline SPECIAL

STマイクロエレクトロニクス

モバイル、自動車、産業からIoT、ウエアラブル、ロボットまで、幅広い分野のニーズに対応できるさまざまな半導体ソリューションを提供しているSTマイクロエレクトロニクス。同社の最新状況や、日本市場に向けた取り組みなどについて、日本法人社長と本社エグゼクティブ・バイスプレジデントを兼任するマルコ・カッシス氏に聞いた。同氏は、市場のニーズに丁寧に対応することで、顧客との確かな関係を築くという地道な取り組みが、ビジネスの拡大につながると強調する。

――最近の業績や市況は。

カッシス 2014年第3四半期までの状況を見ると、当社は「センス&パワー/自動車製品(SPA)」部門の売り上げが車載用製品やパワー製品にけん引され、前年比で成長しました。「エンベデッド・プロセッシング・ソリューション(EPS)」部門は、引き続き旧STエリクソン製品の影響を受けているものの、マイコンに関しては力強く成長しています。世界的に需要は軟化していますが、市場は私たちがコントロールできるものではありません。市況に左右されず安定した売り上げを確保できるよう、顧客ニーズを把握したうえで、継続的なイノベーションによる付加価値の提供を加速させることが大切です。

――事業戦略に動きはありますか。

カッシス 戦略は従来と変わっていません。SPAとEPSの2つの製品部門を構え、成長ドライバーと定めた5つの製品分野を軸に事業を展開しています。具体的には、(1)MEMS&センサー、(2)スマートパワー、(3)車載用製品、(4)マイクロコントローラー、(5)アプリケーション・プロセッサーです。2014年第3四半期を終えた時点では、これらの中で、車載用製品、スマートパワー、マイコンの3製品の売り上げが、かなり好調に推移しています。

ARMマイコンが急成長中

――汎用マイコンの成長が著しいようですが。

カッシス 汎用マイコンの売り上げが、この数年間に急増。市場における存在感がぐっと高くなっています。IHS社がまとめている世界の汎用マイコンおよびセキュアー・マイコン売り上げランキングを見ると、2007年は11位でしたが、2013年は2位まで上がりました。

 マイコン事業が躍進する契機となったのが、ARMコアの採用です。以前は、独自コアを含む複数のコアを軸にさまざまなシリーズのマイコンを展開していました。これを数年前に32ビットの汎用マイコンはARMコアに一本化する方針を打ち出し、製品ラインアップを整理しました。この結果、製品の付加価値や市場競争力の強化に取り組むお客様が、積極的に当社のマイコンを採用してくださるようになりました。

 また、競合他社に先駆ける形で、革新的な新製品をタイムリーに市場投入しています。例えばARM社が、2014年9月に新しい32ビット プロセッサーコア「Cortex-M7」を発表しましたが、当社はその発表と同時に世界で初めて同コアを搭載したマイコン「STM32F7シリーズ」をリリースしました。

 さらには、開発ボードやミドルウエアなどの開発環境の強化を図り、お客様の製品開発に必要なハードウエアやソフトウエアを広く網羅した強力なエコシステムを充実させています。こうしてサポート体制を固めたうえで、マイコン事業のさらなる成長を狙います。

革新的な技術でお客様の製品開発に貢献

――日本の市場に対する、取り組みを教えてください。

カッシス 日本における目標はとてもシンプル。「お客様にST製品を愛していただく」ことです。そのために重要なことは、当たり前ですが日本市場のニーズに適した製品とサービスを提供し、お客様が開発する製品の付加価値や市場競争力の向上に貢献することです。このところの厳しい市場環境により、ビジネス機会が減少し、競争が激化する傾向にありますが、こうした状況下でもひるまず挑戦しています。

 また、日本市場には、最先端の技術や、それを応用した製品を展開するメーカーが数多く存在します。当社は、高い処理能力と低電圧が両立できる「FD-SOI」(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)をはじめ、革新的なプロセス技術を保有すると同時に、ユニークな技術アプローチを得意としています。こうした両者が協力し合えば、必ず良い結果が得られるものと信じています。

スマートアグリやロボットの成長に期待

――IoT(Internet of Things)といった分野で、新しい需要が生まれることが期待されています。

カッシス 確かにIoTに関連する半導体の市場は、これから大きく成長することが予測されており、当社は良いポジションにあると思っています。低消費電力のマイコン、Bluetoothなどの無線通信用IC、多彩なセンサー、アナログ・デジタル変換を行うアナログ・フロントエンドIC、低消費電力動作を可能にする電源IC、さらには情報を守るセキュリティーICと、IoTの分野で必要とされる基本技術を当社がフルに網羅しているからです。こうした企業は、世界でも少ないと思います。

 例えば、当社が提案しているスマートアグリ向けソリューションを考えた場合、マイコン、Sub-1GHz通信用IC、温湿度センサー、圧力センサー、加速度センサーおよびMEMSマイクがセンサー端末に搭載されており、農場や植物工場などの環境情報を遠隔モニターすることで、リアルタイムに生産効率の向上に役立てます(図1)。

図1 スマートアグリなどに応用できるセンサー端末とワイヤレス・アクセス・ポイント
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図2 パートナーであるイタリア技術研究所が開発した人型ロボット
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 このような使い方は、農業に限らず、私たちの身の回りに存在するさまざまな「モノ」への応用も可能なため、半導体の潜在需要を大きく伸ばす可能性があります。また、当社はロボットの市場動向にも注目しています。ロボットは、徐々に産業や消費者の生活への広がりを見せており、社会において重要な役目を担いつつあります。1体のロボットには数多くの半導体が使われており、当社の製品ポートフォリオには、マイコン、モータ制御用IC、各種センサーなど、ロボットを構成するシステムで必要なキーデバイスがそろっています。

 当社は、2014年の「組込み総合技術展」に、パートナーシップを締結しているイタリア技術研究所が開発した人型ロボットを展示しました(図2)。人間と対話しながら学習する高度なアルゴリズムを実行できる人工知能を備えたこの最先端ロボットの随所に、さまざまなST製品が使われています。

 こうした新しい分野のニーズにも積極的にお応えしていきます。今後の当社の展開にぜひ注目してください。

お問い合わせ
  • STマイクロエレクトロニクス株式会社


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