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ストラタシス

近年、大きな盛り上がりを見せる3Dプリンター市場。特に工業用の分野で世界をリードしてきたのがストラタシスである。これまでは試作が主な用途だったが、最近では工具作りや最終製品の製造でも活用されるケースが増えている。パーソナルユース分野に強いMakerBot社、クラウド型のCADプラットフォームを提供するGrabCAD社、さらに複数社のサービスビューローなどを買収したことによって、ストラタシスが提供する価値は一層幅と深みを増している。

――ストラタシスは、工業用3Dプリンターの分野で世界をリードしてきました。昨今の3Dプリンターへの関心の高まりをどのように見ていますか。

片山 最近はさまざまなメーカーから低価格な製品が登場し、工業用だけでなく、パーソナルユースの市場も広がっています。当社が開発したFDM®(熱溶融積層:Fused Deposition Modeling)方式、インクジェット方式を含めて多様な3Dプリンターが提供されることにより、活用される産業分野やアプリケーションの幅も拡大。お客様にとっては、非常に使いやすい環境が整ってきたと思います。

――工業用の分野でいうと、従来は「試作のための3Dプリンター」というイメージが強かったように思います。

片山 そうした状況は大きく変わりつつあります。これまでは試作(ラピッドプロトタイピング)が主な活用領域でしたが、最近は製品の製造(ラピッドマニュファクチャリング)、あるいは工具の製造(ラピッドツーリング)でも使われ始めています(図)。これらはデジタルデータから直接、最終製品を作るという意味で、「DDM(Direct Digital Manufacturing)」と呼ばれています。当社の3Dプリンターは総活用件数自体も急増していますが、特にDDM領域での活用の伸びが目立ちます。2009年に12%だったDDM領域での活用の割合が、2013年には30%まで拡大。この領域への取り組みを強化しています。

図 ストラタシスが整備した3Dプリンターのエコシステム
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――DDMへの取り組みとは、具体的にはどのようなものでしょうか。

片山 当社はグループ会社のRedEye社を通じて、世界各地でサービスビューローを展開してきました。それはお客様の要望に応じて、試作品や最終製品などのものづくりサービスを提供する工場(デジタルファクトリー)です。先ごろ、同じサービスを提供するSolid Concepts社、Harvest Technologies社の2社を買収。RedEye社を加えると、各地の工場で稼働する3Dプリンターの台数は約600台に達します。現時点では、世界最大規模のサービスビューローといえるでしょう。

DDMの3つのメリット

――企業にとって、DDMにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

片山 従来型の製造と比べた場合、DDMには大きく3つのメリットがあります。第1に、スピードです。これまでは金型作りなどに相当の時間がかかっていましたが、DDMなら金型は不要。大幅なスピードアップにつながります。特に小ロットで多品種のものには、非常に有利です。第2に、変化対応力。製品の修正が必要な時には、データの修正だけで対応できます。第3に、金型などの移動をデータの移動に置き換えることができる。例えば、設計部門から世界各地の工場にデータを送れば、輸送の時間やコストは大きく低減できます。

――DDMのメリットを享受したい企業は3Dプリンターを購入してもいいし、RedEye社などのサービスビューローを活用することもできるということですね。

片山 両方に対応できることはストラタシスの大きな強みです。もう1つの強みは、CADのプラットフォームを持っているということ。中核的な役割を担うのは、2014年当社が買収したGrabCAD社です。同社が育てたCADコミュニティーサイトには、約150万人のプロの設計者が登録しており、50万以上のCADファイルをダウンロードできる環境があります。こうしたクラウド型のCADプラットフォームにより、将来的には開発のオープンソース化が進むのではないでしょうか。

――3Dプリンターの普及をさらに進める上でも、CADとの連携は重要ですね。

片山 3Dプリンターは、3DのCADデータがなければただの箱です。現状では、CADデータが圧倒的に足りません。この課題を解決するためのひとつのアプローチが、GrabCAD社のようなCADコミュニティーです。実は、もう1つのコミュニティーを持っています。主として個人がCADデータを共有するWebサイト「Thingiverse(シンギバース)」、ストラタシスが買収したMaker Bot社によって開設されたオープンソースコミュニティーサイトです。例えば、「iPhone」で検索すれば、スマートフォンのケースなど9000種類以上のCADファイルが表示されます。

リアルタイムプロトタイピングを実現

――MakerBot社はパーソナル用途の3Dプリンターでリーダー的な存在です。ストラタシスとの経営統合により、どのようなシナジーが生まれますか。

片山 ストラタシスは5000米ドル以上の工業用3Dプリンターの分野で、世界No.1のシェアを誇っています。これに対して、低価格のパーソナル分野で同じくNo.1シェアがMakerBot社です。両社の強みを合わせることで、大きな価値創出につながります。例えば、ストラタシスの3Dプリンター1台に対して、CADの設計者が100人いれば、プリンターの前には出力したい設計者が長い列を作ることになるでしょう。これでは非効率です。かといって、工業用の3Dプリンターを増やすにはそれなりの投資が必要。ならば、低価格のパーソナルな製品を多数、できれば各設計者の机の脇に設置して、アイデアをその場で形にできるような環境を作ればいい。思い立ったら、すぐに形にする。これがリアルタイムプロトタイピングです。

――3Dプリンターはスピードアップに貢献するだけでなく、新しいアイデアを生み出したり育てたりする部分でも大きな力になりそうですね。

片山 例えば、設計者が思い立って形にしたプロトタイプがあったとします。それを設計チームで囲んで議論すれば、いろいろな改善点や新しいアイデアが出てくるはずです。CADデータに比べると、手で触れらるものの訴求力は圧倒的に強いですから。品質の高さで定評のある日本の製造業が、3Dプリンターを使いこなしてスピードを獲得すれば、まさに鬼に金棒だと思います。日本のものづくりをさらに進化させるため、私たちはこれまで以上に貢献をしていきたいと願っています。

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