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【総論】ものづくりは「B to C」から「B to I」へカギを握る3Dデータの活用方法

この1年で3Dプリンターはハードウェア・ソフトウェア両面で大きな進化を遂げた。それとともに、3Dデータ活用を軸に据えたものづくりの動きにも一層拍車が掛かっている。2014年11月25日に開催された「3Dプリンティング&3Dスキャニング ものづくりを変える3Dデータソリューション」では、3Dプリンティングとスキャニングの両面から3Dデータを取り巻く最新動向が紹介された。

原 雄司氏
ケイズデザインラボ  代表取締役社長

ものづくりにおける3Dデータの必然性は年々大きくなっている。冒頭の基調講演に登壇したのはケイズデザインラボ代表取締役社長の原雄司氏である。3Dプリンティングや3Dスキャニングのビジネスに携わる原氏が、次世代の製品づくりのキーワードとして示したのが「B to I(indivisual)」だ。これは「B to C」、すなわちあるセグメントの消費者に向けてではなく、個人に向けて製品を提供するという意味だ。30年前に顧客が選んだのは、機能性、利便性に優れた製品だった。続く段階で重要視されたのがデザインである。そして今注目されているのは、ストーリー性、意味性といったものを持ち合わせた製品だという。具体例として多くの愛飲者を持つ「レッドブル」を挙げた。そしてここでキーワードになるのが「B to I」というコンセプトでであり、「自分のための唯一の製品は、それ自体がストーリー性のある魅力的な製品になるのではないか」と原氏は語った。この実現に密接に関わってくるのが3Dデータ、そして3Dプリンターや3Dスキャナーといったツールである。 

米Google社はスマートフォンのパーツを3Dプリンターで作るという「Project Ara」を進行中である。このスマートフォンはブロック型のパーツを組み合わせることで、センサーやバッテリー、CPUの性能などもすべて自分でカスタマイズすることを目指している。また米L o c alMotors社はオリジナルの自動車を作りたい人に向けて3Dプリンターを活用しながら実際に動く電気自動車を制作、提供する。「3Dプリンタで自動車を作ることが注目されがちだが、根底にあるのは個々のユーザーに合わせた製品を作る仕組み作りの模索だ。この発想はこれまでの製造業にはなく(既存のメーカーにとっては)ある意味怖いスタイル」と原氏は言う。 

3Dスキャナーも3Dプリンターと併せて重要なツールになってくる。同社が協力してプロセス改善を行ったラジコンのコントローラの例を紹介した。コントローラは握り心地が非常に重要な要素になる。今までは3D CADでモデリングしていたが、握り心地がしっくりこなくてもCAD上ではなかなか思い通りに直すことができず妥協せざるをえなかった。そこで3Dモデルを3Dプリンターで出力し、設計者やデザイナー、金型担当者で出力物の「さわれる回覧」を実施したという。そして出力物に粘土を盛ったり削ったりして、再度スキャンし直すというサイクルを何回も繰り返した。これにより関係者間のコミュニケーションが密になるとともに、手戻りがない金型作成が可能になったという。このプロセスの採用によってデザインはずいぶん変わり、年間当たりに出すモデル数も大幅に増えたという。

セミナーでは続いて3Dプリンター大手のストラタシスやデスクトップ加工機を提供するローランド ディー.ジー.、切削加工や射出成形によるラピッドプロトタイピングを提案するプロトラブズが登壇。また日経ものづくりにより切削とのハイブリッド化が進む金属3Dプリンターの最新動向が語られた。3Dプリンターの進化が3Dデータの活用をけん引し、ものづくりの形を変化させていることを強く感じさせるセミナーとなった。