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【ストラタシス・ジャパン】本格化するDDM(Direct Digital Manufacturing)活用の領域を広げる3Dプリンティングテクノロジー

3Dプリンターの活用領域が広がっている。3Dプリンター本体の機能の向上や、利用できる素材の進展などにより、製造プロセスにおける3Dプリンティングの利用が着実に増え始めている。それを牽引するのが、グローバルでトップシェアを誇るストラタシスだ。

小山 丈博氏
ストラタシス・ジャパン
営業開発部

ストラタシスは2012年に米Stratasys社とイスラエルObjet社が合併して誕生した3Dプリンターベンダーである。米調査会社Wohlers Associates社によると、5千米ドル以上の3Dプリンターの出荷台数は1988年から累計で約6万7千台、2013年だけでみると1万台近くが出荷されている。ストラタシスはそのマーケットにおいて55%のシェアを占める。同社はさらに2013年に個人向け3Dプリンターのパイオニアである米Makerbot社を買収して、ローエンドからハイエンドまでのラインナップを揃えるに至っている。また3Dプリンター以外にも、サービスビューローの米RedEye社、Solid Concepts社、Harvest Technologies社といった子会社で3D関連サービスをグローバルで展開している。

ストラタシス・ジャパン営業開発部の小山丈博氏は「3Dプリンターを導入するメリットは、大きく4つに分けられる」と説明する。1つ目が製品開発に掛かる時間の短縮である。試作時間の短縮によって製品の市場投入を素早く行うことができるようになる。2つめがコスト削減である。金型による試作の代わりに3Dプリンターを活用したり、外注から内製に変更することで従来掛かっていたコストを低減することができる。3つ目はアイデアを素早く形にできることによる創造性の向上だ。4つ目は機密保持である。3Dプリントを内製化することにより、試作や製造を外注に出さず自社完結するため、データ漏えいのリスクがなくなる。

この3Dプリントを行う際に必要になるのが3Dデータである。データは設計者が使うCADやデザイナーが使うCGソフトで作成、またはスキャナ、とくに医療分野ではCTやMRIで取得される。「こういったツールやデータがなくては3Dプリンターを使うことはできません」(小山氏)。さらに3Dプリンター出力物は、積層造形と言われる1層ずつ材料を積み重ねる方法で作られる。CADデータは三角形の集合体であるSTLデータに変換し、3Dプリンターに付属するソフトにインポートする。続いてそのソフトでスライスデータを作り、プリンタに送ることでプリンタがデータ通りに造形するという手順になる。

具体的な用途として小山氏は4つのカテゴリを示した。1つ目はコンセプトモデルでの利用、2つ目は機能試験モデル、いわゆる一般的な試作で、この2つは以前から利用が確立されているカテゴリである。さらに3つ目が最終製品を作るための補助ツールである冶具・固定器具など、4つ目は最終製品への利用である。この2つはデジタルデータから直接目的物を生産するため、DDM(Direct Digital Manufacturing)と呼んでいる。「最近、この製造する段階における3Dプリンターの活用例が非常に多くなってきている」と小山氏は言う。「ストラタシスではアイデアの段階から試作、最終製品までに使えるさまざまな製品ラインナップを用意しており、ものづくり全般を支援できる」と強調する。

新製品を続々と投入

ストラタシスでは、コンセプト段階で使われる「Ideaシリーズ」、試作などを想定する「Designシリーズ」、製品パーツなどに利用できる「Productionシリーズ」として全26機種の3Dプリンターを展開しており(図1)、その技術は大きく2つに分けられる。1つは「PolyJet」と呼ぶ、液体の紫外線硬化樹脂をノズルからインクジェット方式で吐出していく技術だ。もう1つは熱可塑性樹脂のフィラメントを融かしてヘッドから押し出していく熱溶解積層(FDM™:Fused Deposition Modeling)技術である。PolyJetTM方式は微細な形状を表現でき、材料に多様性がある。FDM方式は実際に最終製品に使われるプラスチックを使うことが可能であり、精度や耐久性が優れているのが特徴だ。デザイン重視のものはPolyJet方式、高精度のものや最終製品にはFDM方式が向く傾向があるが、用途によってはどちらでも使用可能である。

図1 ストラタシスの3Dプリンターのラインナップ。コンセプトモデルから最終製品の生産まで3Dプリンティングを幅広くカバーする
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PolyJetは最小14μmのピッチで積層する。材料は硬い材料から柔らかい材料、透明のものやPPライクのような靭性のある材料など、幅広く利用することができる。また特殊なものでは、アメリカ認可の材料だが生体適合性の樹脂がある。補聴器専用樹脂や歯科専用樹脂、体内に埋め込むといったものがあるという。

またPolyJetで提供する特徴的な技術にデジタルマテリアルがある。これは複数の材料を混ぜ合わせることで、新たな物性や色の材料を提供できる技術だ。プリンターに任意の材料をセットして同時に噴射することで、任意の配合率で材料を混合し、所定の物性や色を得ることができる。例えば硬い材料と柔らかい材料を混ぜて任意の硬さを得ることが可能だ。もちろん混ぜずに、異なる色や物性の材料を組み合わせた出力物を作ることも可能である。

さらにストラタシスは、従来は2種類しか使えなかったカートリッジを3種類に増やしたモデル「Objet500 Connex3」を2014年2月に発売した。同時にマゼンタ、シアン、イエローの3色の材料の提供も開始した。これによりシングルジョブで全DMは1000種以上、最大46色を表現することが可能になった。これらは従来から用意されている透明の樹脂と混ぜることで、カラーのクリア樹脂のプリントも可能である。「クリアと柔軟性をもつマテリアルに対して色を付けられるのは3Dプリンター業界においてストラタシスだけ」(小山氏)だという。2014年11月25日には「Objet260 Connex3」など新Connexシリーズをはじめ12製品を発表。マルチカラー/マルチ材料対応機種のラインナップが強化された。

先進的な使用事例も増加

図2 3Dプリンティングは大きく4つのカテゴリに分けられる。デジタルデータを直接生産に活用する概念をDDM(Direct Digital Manufacturing )と呼ぶ
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小山氏はDDM(Direct Digital Manufacturing)が浸透しつつあるとともに、3Dプリンターの使い方も変わってきていると指摘する。同社が実施するアンケートでも数年前と比べて、設計プロセスに対して製造プロセスにおける3Dプリンターの使用比率がかなり増えてきている。小山氏は新しい場面で活用される具体例を紹介した。

試作段階の中でも先進的な使用例が、RT(Rapid Tooling)と呼ばれるものだ。例えば試作品を作るための金型を3Dプリンターで出力するといった使い方が挙げられる。高耐熱、高強度の材料を使うことにより、射出成型にも耐えられる代替金型を作成し、金型試作に掛かる時間とコストを大幅に低減できる。修正も金型に比べて容易だ。試作品自体を3Dプリンターで出力するのとは違い、試作品に最終製品と同じ材料を使うことも可能になる。

さらにこれからの3Dプリンターの活用方法、すなわちDDMとして例に挙げたのが、レッドアイの事例だ。同社では工場内に3Dプリンターを100台近く並べ、オンデマンドで受注した最終製品を、ほぼ無人の体制で24時間生産している。冶具や固定具などの使用例もある。ある自動車メーカーでは、もともと金属部品を組み立てた冶具を使用していた。直線的で手にフィットしにくく、金属のため重量も大きかった。そこで3Dプリンターを利用することにより、持ちやすく軽い冶具を作り、作業者の負担を減らすことができたという。

「3Dプリンターは市場投入のスピードアップ、コストダウン、需要の変化に対する柔軟性、リスク対策といったところで活躍してきた。今後は3Dプリンターでデジタルデータから直接最終製品がつくられるようになる」と小山氏は言う。「3Dプリンターはどんどん次のレベルに進んでいきます。我々も世界ナンバーワンのメーカーとして、新たな3Dプリンターの使い方をたくさん提案していきたい」(小山氏)。

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