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【Industry & Medical】進化のカギを握る「Smarter Vision」、要求が厳しい産業・医療で採用が加速

ザイリンクスが展開するビデオ画像処理アプリケーション向けソリューション「 Smarter Vision 」が幅広い分野で注目を集めている。「リアルタイム解析」「高速データ伝送」や「高精細の画像表示」など最先端のシステムで求められる機能を合理的かつ効率よく実現できる環境を提供するからだ。重点分野の一つである「産業・医療」については、組み込み用リアルタイムOSの大手ウインドリバーと連携し、「堅牢」「高信頼性」を特長とする強力なソリューションを用意。着実に採用実績を伸ばしている。

遠山和徳氏
ザイリンクス
テクニカルセールス部
Zynq ビジネス開発マネージャー

Smarter Visionは、FPGA と ARM® Cortex-A9 プロセッサ・コアを統合した先進的なデバイス「 Zynq® -7000 All Programmable SoC (以下、Zynq SoC )」、検証済みの IP 「 SmartCORE 」、高い生産性を実現した開発環境「 Vivado 」の三つを柱に構築したビデオ画像処理システム向けのソリューションである(図1)。ザイリンクスは、 IP 、 OS やミドルウエアなどのソフトウエア、開発ツールなどを提供するエコシステム パートナーとも連携を図りながら Smarter Vision を展開しており、これによってシステム開発に必要な技術を幅広く網羅する包括的なソリューションを実現する。「ザイリンクスは、Zynq SoC を核にしたプラットフォームを利用して、システムの高いパフォーマンスを追求する『 Smarter Solution 』を積極的に展開しています。その先駆けとも言えるのが Smarter Vision です。このソリューションを通して、安全性、セキュリティ、生産性、採算性、効率性の向上を提供し、お客様の製品を1世代先の製品にするお手伝いをさせていただきます」(ザイリンクス テクニカルセールス部 Zynq ビジネス開発マネージャー遠山和徳氏)。

図1 Smarter Vision で実現するテクノロジ
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広がるインテリジェント・ビジョン

同社が、ビデオ/画像処理に特化したソリューションを先行した背景には、高解像度の映像をリアルタイムで処理するシステムに対するニーズが高まっていることがある。すでに、イメージ・センサーで捉えた映像をリアルタイムで解析し、その情報を基にした制御情報を瞬時に出力するシステムの応用が始まっている。いわゆる「インテリジェント・ビジョン」である。

例えば、市販車にも搭載されている自動車の先進運転支援システム( ADAS : Advanced Driving Assistant System )もその一つだ。追突事故を起こしそうになった瞬間に自動的にブレーキを作動させて停止する緊急自動ブレーキや、前を走る車に続いて走行する自動追従システムなどである。このほかにも、撮影した映像から不審者の侵入などの情報を検出して警報を鳴らす信号を出力する監視用のインテリジェント・カメラも製品化されている。カメラでキャプチャした画像を処理して外観に異常がないかを自動的に検出するマシンビジョン・システムも、すでに多くの工場で稼働中だ。こうしたカメラと画像処理システムを組み合わせたシステムの応用は、様々な分野に着実に広がりつつある。

処理システムの負荷が増大

ところが、この一方でこうしたインテリジェント・ビジョンの設計において大きな課題が浮上している。より高度な機能や性能を追求するにつれて、要求に応じたパフォーマンスを提供するシステムを実現することが難しくなっていることだ。一般に画像処理を扱うシステムの場合、扱うデータ量は多い。しかも、より高度な処理とリアルタイム性を両立させようとすると、データ処理の負荷は一気に大きくなる。同時に、入力回路や出力回路のデータ伝送速度も高めなければならない。様々な機器に組み込むならば、小型化や低消費電力化を進める必要もある。

さらに、HDTV ( High definition television ) の約4倍の画素数を備える「4K2K」、約8倍の画素数を備える「8K4K」など高解像度の画面フォーマットが登場したことで映像処理回路が扱うデータ量はますます膨れあがる。「これらの要求や課題を両立させる合理的なソリューションを提供するのが Smarter Vision です」(遠山氏)。具体的には、①リアルタイムの画像解析アルゴリズム処理(「 Real-Time Analytics 」)、②高速データ伝送(「 Intelligent Transport 」)、③映像の高精細化(「 Immersive Display 」)といった三つの課題を解決するうえで Smarter Vision が威力を発揮する。

ウインドリバーと強力に連携

ザイリンクスは、大きく四つのアプリケーションをターゲットに Smarter Vision を展開する考えだ。すなわち、「産業用機器と医療( Industrial & Medical )」「自動車( Automotive )」「放送機器とコンシューマ( Broadcast & Consumer )」「航空と防衛( Aerospace & Defense )」である(図2)。この中で、 Smarter Vision に対する引き合いが、いち早く活発化しているのが、産業用機器と医療だ。「約2年前から出荷を始めた Zynq SoC は、着々と採用が進んでいますが、いまのところその約4割を産業用機器と医療機器が占めています」(遠山氏)。従来、産業用機器や医療機器は、同社が提供する FPGA が数多く使われていた分野だ。こうしたユーザーがリードする形で、 Smarter Vision が、これらの分野に浸透し始めている。

図2 Smarter Vision の主なターゲット
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産業用機器と医療機器に向けた Smarter Vision に関する同社の取り組みで注目すべきは、組み込みシステムの市場で業界随一のシェアを誇るリアルタイムOS 「 VxWorks® 」や商用グレードの「 Wind River® Linux 」を提供するウインドリバーと連携を図っていることだ。

嶋津東彦氏
ウインドリバー
営業技術本部
第三営業技術部
産業機器・医療機器担当
シニアエンジニア

ウインドリバーは、ザイリンクスが Zynq SoC を最初に発表した2011年の翌年、2012年3月に VxWorks およびその開発環境 Wind River® Workbench で Zynq SoC をサポートすることを発表している。さらに現在は、Zynq SoC 向け評価キット「 Zynq-7000 ZC702 」および「同/ZC706 」向け BSP ( Board Support Package )を VxWorks と Wind River Linux のそれぞれでサポートしている。「デュアルコアの ARM® Cortex-A9 プロセッサの優れたパフォーマンス、省電力メリット、さらに FPGA の高い柔軟性を兼ね備えたユニークな Zynq SoC に対し、ウインドリバーは早い時期からザイリンクスと連携を図ってきました」(ウインドリバー営業技術本部 第三営業技術部産業機器・医療機器担当シニアエンジニアの嶋津東彦氏)。

医療機器の分野でも長年の実績

1981年に設立されたウインドリバーは、産業用機器、情報ネットワーク、航空・防衛を中心に幅広い分野に向けてOS ( Operation System )やミドルウエア、開発ツール等各種ソフトウエアを提供している。1989年には日本法人も設立している。「『モノのインターネット( IoT:Internet of Things )』が普及する機運が高まってきたことから、最近では IoT に向けたプラットフォーム・ソリューションや、長年培った組み込みシステムの技術を生かした M2M ( Machine to Machine )向けソリューションの展開に力を入れています」(嶋津氏)(図3)。

図3 ウインドリバーの事業構想
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同社の主力製品である VxWorks は、高信頼性を要求される産業用組み込みシステムの分野で高いシェアを誇る。ここで鍛えた技術を足がかりに同社は、比較的早い時期から医療機器の分野にも VxWorks を展開している。「医療機器では信頼性を要求されるのはもちろんですが、厳しい規格に対応するために開発プロセスまでさかのぼる詳細な情報を提供するなど、医療分野ならではの丁寧なユーザー・サポートも求められます。ウインドリバーは、こうしたサポートの実績も十分に積んでいます」(嶋津氏)。同社の場合、受託開発の体制が整っていることも大きな強みだ。「産業用機器や医療機器の場合、お客様がソフトウエアの実装を外注するケースが少なくありません。開発要求事項に機能安全や医療レギュレーション対応が含まれることも多くなってきています。こうした開発を引き受けられるOSベンダーは業界でもなかなか見当たらないと思います」(嶋津氏)

このように産業用機器や医療機器の分野で豊富な経験と実績を持つウインドリバーと連携することで、ザイリンクスは、これら分野の顧客に強力なソリューションを提供できるわけだ。

素早く評価できるキット提供

両社のコラボレーションによる最近の大きな成果の一つが、「 VxWorks/Zynq All Programmable SoC Live USB 評価キット」である(図4)。ザイリンクスが提供している Zynq-7000 ZC702 評価キットで、VxWorks の性能を評価するためのキットだ。キットには、Fedora 環境上に Wind River® WorkBench3.3 が収められた USB モジュール「 Live USB 」、VxWorks ブートローダを格納した SDカード、サンプルソースコード付きの学習ガイド、VxWorks 6.9/Workbench 3.3 評価ライセンス(30日間無料)が含まれている。「お手元の Zynq-7000 ZC702 評価キットに SDカードを装着。さらに Live USB を Zynq-7000 ZC702 を接続したホストワークステーションの USB 端子に挿入すれば、VxWorks の評価環境が整います。この一連の作業に要する時間はわずか10分です」(嶋津氏)。ウインドリバーは、このキットを無償で提供しており、Webサイトおよび電話(03-5778-6001 代表)やメールによる申し込みを受け付けている。

図4 VxWorks/Zynq All Programmable SoC Live USB 評価キット
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より高度なマシンビジョン・システムの導入が進んでいる産業用機器。画像診断システムや遠隔医療システムなど、画像を利用した機能の進化が加速している医療機器。どちらの分野においてもザイリンクスの Smarter Vision に対するニーズは高い。しかも、ウインドリバーをはじめ有力なエコシステム パートナーとの連携を図りながら、Smarter Vision は着実に強化されている。ザイリンクスは2013年11月20~22日に開催される「 Embedded Technology 2013 / 組込み総合技術展」に出展、Live USB 評価キットを含む最新の取り組みを披露する。Smarter Vision の可能性を、自分の目で確かめることができる絶好の機会と言えよう。

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