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【Automotive】「Smarter Vision」が自動車の進化を後押し、強力なハードIPで画像処理の高速化を追求

ザイリンクスが提供するビデオ画像処理アプリケーション向けソリューション「 Smarter Vision 」が、進化に大きく貢献する分野の一つが「自動車( Automotive )」である。画像処理技術を駆使した先進的な制御システムを搭載する動きが進んでいるからだ。ザイリンクスは、画像処理回路の設計で高い技術力を誇るIPベンダーのザイロンと連携。高い信頼性と優れた処理能力を兼ね備えた車載機器を効率よく実現できる開発プラットフォームを提供している。

遠山和徳氏
ザイリンクス
テクニカルセールス部
Zynq ビジネス開発マネージャー

ザイリンクスの Smarter Vision は、FPGAと ARM® Cortex-A9 プロセッサ・コアを統合したデバイス「 Zynq® -7000 All Programmable SoC(以下、Zynq SoC )」、検証済みのIP「SmartCORE」、高い生産性を備えた開発環境「 Vivado 」の三つを包括した画像処理システム向けソリューションである。

ザイリンクスは、ソフトウエアとハードウエアの両方のプログラミングができる Zynq SoC の特性を活用して高いパフォーマンスを追求する「 Smarter Solution 」を積極的に展開している。その中で、いち早く具体化したのが Smarter Vision だ。「画像データをリアルタイムで分析して、そこから得られた情報を基にシステムを制御する、いわゆる『インテリジェント・ビジョン』の応用が急速に広がっています。しかも、インテリジェント・ビジョンで求められている画像処理能力は高まる一方です。こうした要求に応えるうえで有利なソリューションが Smarter Vision です」(ザイリンクス テクニカルセールス部 Zynq ビジネス開発マネージャー 遠山和徳氏)

自動車で着実に高まるニーズ

査錚氏
ザイリンクス
マーケティング部 プロダクトマーケティング スペシャリスト

Smarter Vision の採用が、先行している分野の一つが自動車である。「この背景には、近年、自動車の電子化が加速していることがあります。特に、画像を扱うシステムを搭載する動きが活発化してきたことから、Smarter Vision に対するニーズがどんどん高まっています」(同社マーケティング部 プロダクトマーケティング スペシャリスト 査錚氏)。例えば、すでにナビゲーション・システムを搭載している自動車は多い。計器類に代わり、液晶ディスプレイに様々な情報を表示するダッシュボードの採用も進みつつある。最近では、緊急自動ブレーキ、白線検出システム、自動追従システムなどの先進運転支援システム( ADAS : Advanced Driving Assistance System )や、複数のカメラで撮影した車体の全周囲を一つの映像にして見せる全周囲カメラを搭載する車両も増えている。

欧州メーカーがいち早く採用

友杉伸一郎氏
ザイリンクス
エンジニアリング本部 フィールド アプリケーション エンジニア(車載製品担当)

実際に、欧州の大手自動車メーカーを中心に Smarter Vision の採用が進んでいる。「複数の大手自動車メーカーが、新開発の ADAS に Zynq SoC を搭載しています」(査氏)。ADAS に相次いで採用されているのは、画像処理回路の性能を高めるうえで有利だからだ。高速で移動している自動車を瞬時で制御しなくてはならない ADAS システムの場合、入力画像を処理して制御信号を出力するまでの時間を最小限に抑えたい。このため、ワンチップに多くの機能が集積できるうえに、ソフトウエアやハードウエアを柔軟に最適化しながら性能を追求できる Zynq SoC の特長が役立つ。「現状では、ASIC ( Application Specific IC )/ ASSP ( Application Specific Standard Product )と FPGA( Field Programmable Gate Array )を組み合わせたシステムも多いようですが、複数チップで構成した画像処理回路はチップ間の通信が高速化のボトルネックになる恐れがあります。高速化を追求するならばワンチップの方が確実に有利です」(同社エンジニアリング本部 フィールド アプリケーション エンジニア 友杉伸一郎氏)。

独自技術で高度な信頼性を実現

自動車メーカーの間で、いち早く Smarter Vision の採用が進んでいる背景には、以前から同社の FPGA を車載向けに積極的に展開していたことがある。「車載用途にザイリンクスの FPGA が採用されるようになったのは2006年ごろからです。これに先駆けて車載製品を扱ううえで必要な様々な標準規格の認証を取得。そのうえで特に厳しい評価基準に対応した『 オートモーティブグレード(XA)』の製品をそろえました。車載電子部品の品質評価基準 AEC-Q100 については、規格よりもずっと厳しい基準を設定して評価しています」(友杉氏)。こうした高度な自動車メーカーの要求に応えるための取り組みは、そのまま Zynq SoC にも受け継がれている。

同社の FPGA のように、回路のプログラミングに SRAM の技術を使ったデバイスで懸念されている、ソフトウエアに起因する故障、いわゆる「ソフトエラー」を徹底的に抑える独自技術を開発したことも、信頼性を重視する自動車業界で同社製品が高い評価を受けている理由だ。「ザイリンクスのソフトエラー対策は、競合メーカーはなかなか追随できない高度な技術です」(友杉氏)。

小面積で優れた性能を発揮する IP

鈴木量三朗氏
ザイロン社 日本支店
ディレクター

ザイリンクスは、Smarter Vision が提供するソリューションの強化を図るために、IP、OS やミドルウエアなどのソフトウエア、開発ツールなどを提供するパートナー企業と積極的に連携を図っている。その中で、車載アプリケーションに向けたソリューションの開発で大きな役割を担っているパートナー企業の一つが、IPベンダーの ザイロン社( Xylon d.o.o.) である。クロアチアの首都ザグレブに本社を置くザイロンは、主に IP コアの開発と FPGA デザイン・サービスを手掛ける。同社の設立は1995年で、ドイツと日本にも事務所を構えている。同社は、ザイリンクスが提供するデバイスに合わせて最適化した IP コアを提供しており、特に GUI( graphical user interface )、ビデオ、ネットワーク関連の IP コアの開発を得意とする。

同社が提供している IP コア・ライブラリ「 logicBRICKS™ 」には、グラフィックに特化した IP コアが多数用意されているほか、メモリ・コントローラ、モーター・コントローラ、CAN、MOST、SPI、I2Cや UART のインタフェースなど多彩な IP コアがそろっている。「ザイロンが提供する IP コアは、実装面積が小さく、レイテンシが短いのが大きな特長です。特定の機能を実現するために必要な複数の IP コアを組み合わせたターン・キー・ソリューションも用意しています」(ザイロン社 日本支店ディレクター 鈴木量三朗氏)。

全周囲カメラを効率よく実現

自動車に Smarter Vision を展開するうえでザイロンは、重要な役割を担っている。「 Smarter Vision を採用する方針をいち早く決めた一部の大手自動車メーカーや車載機器メーカーには、開発段階の Zynq SoC を先行して提供し、システム設計とデバイスの開発を同時に進めていました。このメンバーにザイロンも加わっていました」(鈴木氏)。

こうした取り組みの中から生まれた具体的なザイロンのソリューションの一つが、全周囲カメラを実現するためのIPコア群「 logiVIEW 」である。この IP 群を利用することで、4台のカメラで撮影した自動車の全周囲を一つの映像で見せる機能を効率よく Zynq SoC に実装できる。こうした同社の IP 群を利用して効率よく車載機器を開発できるように、Zynq SoC 評価キット「 ZC702 」をベースした車載用マルチカメラ・アプリケーションの開発プラットフォーム「 logiADAK ( Automotive Driver Assistance Kit )」もザイリンクスと共同で開発し、提供している(図) 。

図 車載用マルチカメラ・アプリケーションの開発プラットフォーム「 logiADAK ( Automotive Driver Assistance Kit )」
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自動車の新しい技術をリードする欧州で、いち早く高い評価を受けたザイリンクスの Smarter Vision 。このソリューションに対する関心は、画像処理を応用したシステムを搭載する動きとともに、自動車業界にますます広がるに違いない。

両社は、2014年1月15~17日に東京ビッグサイトで開催される展示会「カーエレクトロニクス技術展~カーエレ JAPAN ~」に出展。自動車に関連する Smarter Vision の全貌を紹介する予定だ。ザイリンクスとザイロンのコラボレーションから生まれた最新ソリューションを間近に見ることができる絶好の機会だ。車載機器の開発にかかわる技術者は、ぜひ足を運ぶべきだろう。


ザイリンクス車載アプリケーション向けソリューション

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