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強みは包括的な製品ラインナップとツール TI、モーター駆動/制御ソリューションの品ぞろえを拡充

図1 モーターの種類
白物家電やオフィス機器、コンピュータ、玩具、産業用電子機器、自動車などに使われるモーターには、ステッピング・モーターやブラシ付きDCモーター、ブラシレスDCモーターなどがある。今回紹介するモーター・ドライバ製品の対象は、この三つのモーターである。
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モーターを搭載する電子機器は数多い。白物家電やオフィス機器、コンピュータ、玩具、産業用電子機器、自動車など多岐にわたる(図1)。それだけに、モーターを駆動するドライバ製品に求められる性能もさまざまだ。

図2 CPUを使ったモーター駆動の例
CPU(演算エンジン)では、フィードバック信号(電圧や電流)を使って複雑なアルゴリズムを実行し、PWM信号を生成する。そして、ドライバ回路(降圧型コンバータや昇圧型コンバータ)を使って実際にモーターを駆動する。
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半導体メーカー各社は、こうしたユーザーの多種多様な要求に応えるモーター・ドライバ製品群を取り揃えている。テキサス・インスツルメンツ(TI)もその1社である。同社がモーター・ドライバICの汎用品を製品化し始めたのは2008年。競合他社と比べると汎用品の歴史は浅い。しかし、それまではカスタム品をユーザー企業に供給しており、その歴史は15年をゆうに超える。さらに、同社は、HDD(ハードディスク装置)や光ディスク装置に向けたモーター・ドライバICでは世界市場をリードしている。実は、TIはモーター・ドライバICの老舗メーカーなのである。

それだけに品ぞろえも豊富だ。一般に、モーター・ドライバ製品は、コントローラICとドライバICの二つに大きく分けられる(図2)。コントローラICでは、取得したさまざまな情報を基に、モーターの回転数や回転方向、回転角などを制御するPWM信号を算出してドライバICに送る。そしてドライバICは、このPWM信号を使って実際にモーターを駆動する役割を果たす。なお、コントローラICの機能を集積したドライバICも存在する。

同社は、このコントローラICとドライバICの両方を市場に投入している。今回は、同社が提供するコントローラICとドライバICを紹介しよう。

モーター駆動に最適化し、低価格化を実現

図3 低価格化を実現した「Piccolo™」の製品ラインナップ
処理性能や周辺機能の違いで4品種を用意した。CPUのクロック周波数は50MHz、もしくは40MHzである。モーター駆動用途には十分な性能だ。
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TIは2012年4月に、モーター駆動に向けた32ビット・マイコン「C2000™」の新製品として4品種「TMS320F2802x0」を市場に投入した(図3)。いずれも、「Piccolo™(ピッコロ)」シリーズに含まれる製品だ。

特長は、CPUコアの処理性能やアナログ周辺(ペリフェラル)機能をモーター駆動用途に最適化することで低価格化を実現した点にある。1000個購入時の米国での参考単価は1.50米ドルで、同社従来品に比べて約半分の価格を実現した。同社によれば、「低価格の家電用マイコンでは、アナログ周辺機能の性能やCPUコアの処理性能が不足する場合があり、実現可能なアプリケーションに制約があった。一方、従来のPiccolo™は性能が高いものの価格も高かったため、用途によっては適用が難しい場合があった。このため、Piccolo™の低価格化が市場から求められていた」(日本テキサス・インスツルメンツ 営業・技術本部 マーケティング統括部 組込みプロセッサ・コネクティビティ マーケティングMCUチーム 主事の菅原勇介氏)。主なアプリケーションとしては、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電におけるモーター制御を挙げており、デジタル電源への採用も期待していると言う。

Piccolo™の従来品との違いは、CPUコアの処理性能とアナログ周辺機能にある。CPUコア自体は、従来と同じ「C28x」である。ただし、クロック周波数が異なる。同社従来品は60MHzだったが、今回の製品は50MHz、もしくは40MHzに設定した。アナログ周辺機能については、ePWM(拡張パルス幅モジュレータ)とA-D変換器の性能を最適化した。ePWMの最小分解能は同社従来品では150psだったが、今回の製品は20ns(50MHz品の場合)。A-D変換器の分解能は、従来品と同じ12ビットだが、最大サンプリング周波数は、同社従来品の2~4.6Mサンプル/秒よりも低めに設定した。1.25Mサンプル/秒、もしくは1Mサンプル/秒である。アナログ周辺機能の性能は「モーター駆動用途には十分なレベル」(同氏)という。

このほか、32Kバイト、もしくは16KバイトのフラッシュROMと、8Kバイト、もしくは4KバイトのRAMを搭載する。入出力インターフェイスとして、SPIとSCI、I2Cを各1チャネルずつ用意。パッケージは、38ピンTSSOPと48ピンQFPの2種類がある。

高耐圧が特長のモーター・ドライバIC

モーター・ドライバICは、モーターの種類によって、さまざまな製品を取り揃え、新製品の投入によりさらに品揃えを充実している。同社の製品ラインナップは具体的には、ステッピング・モーター向けとブラシ付きDCモーター向け、ブラシレスDCモーター向けといった三つのカテゴリーに分けられる(図1)。

いずれのカテゴリーも耐圧が高いという特長を持つ。こうした対応が可能な理由は、同社独自の高耐圧BiCMOS(バイポーラCMOS)技術にある。最新版はこうした独自技術を使うことで、比較的低いコストで高耐圧品を実現できる。

豊富な品ぞろえを用意

図4 ステッピング・モーター用ドライバICの製品ラインナップ
四つの品種で、全部で10製品を用意した。
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それでは、各カテゴリーの詳細を見ていこう。ステッピング・モーター向けは全部で4品種ある(図4)。一つは、大電流品である。6A出力の「DRV8412」と12A出力の「DRV8432」がある。入力電圧範囲はいずれも0~50V。コントローラとして機能するC2000™やMSP430™、ARMマイコンなどと組み合わせて使う。

二つめは、ステートマシンで構成した最大32マイクロステップ対応のインデクサ(indexer)を集積した品種である。従って、外付けマイコンは不要だ。1.9A出力で8マイクロステップに対応した「DRV8811」と、最近発表した2.5A出力で8マイクロステップに対応した「DRV8818」、1.6A出力で32マイクロステップに対応した「DRV8824」、2.5A出力で32マイクロステップに対応した「DRV8825」の4製品がある。

三つめは、出力電流の大きさは二つめの品種と同じだが、インデクサの役割を果たすマイコンの外付けが必要なタイプである。1.6A出力の「DRV8812」と、2.5A出力の「DRV8813」がある。入力電圧範囲は8.2~45Vである。

図5 ブラシ付きDCモーター用ドライバICの製品ラインナップ
四つの品種で、全部で9製品を用意した。
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四つめは、低電圧駆動に対応した品種だ。プロジェクターや一眼レフ・デジタル・カメラ、玩具などに向ける。入力電圧範囲が2.7~10.8Vで2A出力の「DRV8833」と、入力電圧範囲が2.5~10.8Vで2A出力の「DRV8834」の2製品を用意した。DRV8833はフルステップとハーフステップに、DRV8834は32マイクロステップに対応する。

次のカテゴリーであるブラシ付きDCモーター向けドライバICも四つの品種を用意している(図5)。一つは、大電流出力対応品で、12A出力の「DRV8412」と24A出力の「DRV8432」がある。入力電圧範囲はいずれも0~50Vで、1個もしくは2個のモーターを駆動できる。二つめは、出力電流が低い品種だ。1.6A出力で2個のモーター駆動に向けた「DRV8802」と、2.5A出力で2個のモーター駆動に向けた「DRV8814」、1.5A出力で4個のモーター駆動に向けた「DRV8822」である。三つめは、1個のモーター駆動に向けた品種である。2.2A出力の「DRV8800」と5A出力の「DRV8840」がある。四つめは、低電圧駆動品である。2.75~6.8V入力で1A出力の「DRV8832」と2.7~10.8V入力で4A出力の「DRV8833」がある。

図6 ブラシレスDCモーター用ドライバICの製品ラインナップ
二つの品種で、全部で4製品を揃える。
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最後のカテゴリーであるブラシレスDCモーター向けは2品種を用意する(図6)。一つは、MOSFETを集積したタイプである。6.5A出力の「DRV8312」と13A出力の「DRV8332」がある。入力電圧範囲は0~50V。C2000™やMSP430™、ARMマイコンなどと組み合わせて使用する。もう一つは、MOSFETを外付けで用意する必要があるタイプだ。同社は「3相プリドライバ」と呼ぶ。使用するMOSFETに依存するが、最大で60Aを供給できる。SPIインターフェイス経由で制御できる「DRV8301」と、端子設定で制御可能な「DRV8302」の2品種がある。

プログラム開発なしですぐに評価可能

図7 モーター・ドライバ製品の評価キット
センサレス方式のブラシレスDCモーターの開発に向けた評価キット「InstraSPIN™」。コントローラには、Piccolo™のほか、MSP430™とStellaris®も使える。
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モーター搭載機器を設計する場合は、実際にコントローラとドライバを組み合わせ、プログラム・コードを記述し、モーターの動作状態を確認する必要がある。TIでは、こうした作業の負担を軽減する評価キットを提供中だ。

例えば、センサレス方式のブラシレスDCモーターに向けた「InstaSPIN™-BLDC」がある(図7)。ボードには、モーター・ドライバIC「DRV8312」が実装されており、これに所望のマイコン・サブボードを組み合わせられる。マイコンは、C2000™(Piccolo™)のほか、16ビット・超低消費電力マイコンであるMSP430™や32ビットARM Cortex-M3/M4Fマイコン「Stellaris®」のいずれかを選択できる。プログラム・コードやモーター制御向けのライブラリはあらかじめ用意されており、実際にユーザーが記述する部分は最小限である。後は、実際にモーターを動作させ、パソコンの画面上で動作パラメータを調整するだけで、最適な状態にチューニングできる。

さらに同社は、各モーター・ドライバICに対して評価キット(評価モジュール)を用意している。これらを活用すれば、開発に費やす労力を軽減し、開発期間を短縮することができるだろう。

テキサス・インスツルメンツでは、モーター・ソリューションの分野での総合力、具体的にはモーター駆動と制御の二つの分野での包括的な製品ラインナップと、使いやすさに優れた強力な開発サポートツールなどを生かし、今後も市場のニーズにきめ細かく対応していく方針である。

(2012/6/1公開)
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