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無限に広がるNFCの可能性、その具現化を後押しするTIソリューション

NFC(Near Field Communication)は、13.56MHzの周波数を使用し、数cm程度の距離での無線通信を実現する技術である。NFCの機能を備える機器であれば、それをかざすだけで、機器間でのデータのやり取りや機器同士の接続などを実現できる。具体的には、非接触ICカードと同様に電子決済を行ったり、スマートフォン端末同士で画像データの授受を行ったりすることが可能になる。国内では電子決済用の非接触ICカード技術「FeliCa®」が広く認知されてきたが、現在ではそのFeliCaを包含するかたちでNFCの国際標準規格がいくつか策定されている(図1)。NFCのコンセプトは、NFCに対応するデバイスの自由な形状を許容しつつ、NFC規格に対応したデバイス同士が国際的なレベルで相互運用できるようにすることである(図2)。

図1 NFCの各規格の概要
NFCの標準規格には、一般にType Aとして知られるISO/IEC 14443/18092、Type Bとして知られるISO/IEC 14443、FeliCaがある。「代表的な応用例」を見ると、NFCはすでに国内でも広範な用途で利用されていることがわかる。
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図2 NFCのコンセプト
複数種の規格が存在するだけでなく、NFCに対応するデバイスの形態としても、ICカード、RFIDタグ、携帯電話/スマートフォン、パソコン、民生用機器など、さまざまなものが考えられる。
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現在では、スマートフォンがNFC対応機能を備えているのは当たり前のこととなった。それにより、NFCは広く全世界に普及した。調査会社の米ABI Research社によると、2011年の時点でNFC対応機能を備えるスマートフォンは約3500万台。これが2015年には5億台以上に成長すると予想されている。また、NFCを搭載する機器はスマートフォンに限られるわけではない。そのため、NFC対応ICの出荷数量は、2012年には1億個、2013年には3億個、2014年には7億個にも達する見込みだ。この数字を裏付けるように、多くの半導体メーカーがNFC対応ICの製品化を進めている。

米テキサス・インスツルメンツ(TI)社もそうしたメーカーの1つだ。TIの場合、NFC対応製品は、大きく以下の2種類に分けることができる。

NFCタグ:RFIDアプリケーションにおけるタグ用のIC製品として、NFC対応の「Tag-it™ HF-I」を提供している。いわゆるパッシブ・タグに向けた製品であり、リーダ(またはリーダ/ライタ)からの電波を電力に変換して動作する。なお、TIは「ダイナミック・タグ(アクティブ・タグ)用ICの製品化も予定している」(日本TI 営業・技術本部応用技術部 MCU・コネクティビティマネージャ菅原仁氏)という。

NFCトランシーバ: もう1つはNFC対応のトランシーバICである。RFIDアプリケーションで言えば、リーダ(またはリーダ/ライタ)に当たるものだ。ただし、実際のアプリケーションでは、通信の相手はタグであるとは限らない。NFCの規格に準拠した近距離通信の機能を備えるデバイスであれば、どのようなものでも組み合わせて使用することができる。

このカテゴリに含まれる代表的な製品としては、まず「WiLink™ 8」がある。これは、スマートフォンを含む携帯型機器向けの製品である。いわゆるコンボ・チップであり、NFCに加え、Wi-Fi、Bluetooth、GNSS(GPS)、FMの計5種類の無線方式に対応する。

もう1つの代表的な製品が、NFCのみに対応するトランシーバIC「TRF7970A」である。同製品は、NFCの応用分野として現在最も注目されているスマートフォンを中心とした周辺機器を主なターゲットとする。菅原氏によれば、「NFCを利用するアプリケーションの数は、この分野が圧倒的に多くなるはずだ」という。そこで、以下では、この製品について詳しく見てみることにしよう。

「スマホ+NFC」のあらゆるアプリケーションに対応

NFCアプリケーションにおいて、スマートフォンは、以下の3つのモードで使用される可能性がある。

カード・エミュレーション・モード:従来の非接触ICカードと同じ役割をスマートフォンに担わせる

ピア・ツー・ピア・モード:NFCに対応したトランシーバ機能を備えるスマートフォン同士で、画像データなどの送受信を行う

リーダ/ライタ・モード:NFCに対応したタグ/ICカードに対し、スマートフォンからデータの読み出し/書き込みを行う

TRF7970Aは、これらすべてのモードに対応することができる。また図3に示したとおり、TRF7970AはNFCの標準規格を3種ともサポートする。つまり、スマートフォンを利用するあらゆるNFCアプリケーションに対応できるということだ。

また、TRF7970Aの特徴的な機能に「ダイレクト・モード」がある。NFCについては、今後も規格に変更が加わったり、新たな規格が誕生したりする可能性がある。加えて、NFCをベースとする独自プロトコルが生み出される可能性も高い。TRF7970Aのダイレクト・モードは、このような状況に対応するためのものである。これを利用することで、図3に示した動作により新規/非標準のプロトコルを扱うことができる。

図3 TRF7970Aの「ダイレクト・モード」
NFCの標準規格に準拠したシステムではDirect Mode 2を使用する。仮に、パケット/フレームの仕様が現在の標準規格に沿っていないケースが発生した場合には、Direct Mode 1を使用する。すなわち、現在の標準規格に沿ったパケット化/フレーム化を行う前のデータをそのままマイコンに受け渡して処理を行う。エンコード/デコードの仕様も異なるプロトコルに対応しなければならない場合には、Direct Mode 0を使い、エンコード化/デコード化の処理を行う前のデータを出力する。このような機能により、規格の変更/追加が生じた場合でも、システムにおける拡張部分を最小限に抑えて対応することができる。
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アプリケーションの具体例

ここで、TRF7970Aを使用することで実現可能なアプリケーションの具体例を紹介しておこう。

世の中に大きく広がっているWi-FiやBluetoothのコネクション認証に必要な複雑な作業をNFCを使ってワンタッチで行なうことができる。

家電をはじめとしたキーボードなど入力機器がないアプリケーションにWi-Fi搭載が予想される中、このNFCを使ったペアリングが広がる可能性がある。SSIDの入力が必要なくスマートフォンをかざすだけでネットワーク接続ができるソリューションは魅力的である。

またBluetoothに対応したスピーカにより、スマートフォンで再生した音楽を鳴らしたいというケースがある。このとき、スピーカとスマートフォンがいずれもNFCに対応していれば、スマートフォンをスピーカにかざすだけで、ペアリングの設定を行うことができる。日本TI 営業・技術本部マーケティング部組込みプロセッサ・コネクティビティ・マーケティングマイコン主事 木下一人氏は、「TIでは、この機能を『タッチ&ペア』と呼んでいる。このアプリケーションは広く使われるようになるはずだ」と述べている(図4)。

図4 NFCを使ってワンタッチでペアリングを行うことができる「タッチ&ペア」
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ハード、ソフト、開発/評価環境を包括的に提供

上述した以外にも、NFCをスマートフォンと組み合わせた場合、5に示すようなアプリケーションを想定することができる。この図を見れば、ここまでに紹介したTIの製品群によって、NFCベースのあらゆるアプリケーションに対応できることがご理解いただけるだろう。しかし、これらの製品群は、「TIのNFCソリューション」の1つの構成要素に過ぎないと言うこともできる。以下では、TRF7970Aを例にとり、同社ソリューションの全体像を俯瞰してみよう。

図5 NFC対応のスマートフォンを利用するアプリケーションの例
TRF7970A、WiLink 8など、TIの製品群によって、NFCベースのあらゆるアプリケーションに対応することができる。
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まず、NFCベースのシステムを構成する場合、TRF7970Aと組み合わせて使用するマイコンが必要になる。この点については、「MSP430™」や「Stellaris®」など、TIはマイコン製品の多彩なラインアップを有している。また、開発/評価環境としては、TRF7970A用の評価キット「TRF7970AEVM」を提供している。同キットの基板には、TRF7970Aのほかに、TI製のマイコン「MSP430F2370」やアンテナが実装されている。また、これとは別にターゲット・ボード「TRF7970ATB」も用意されている。これは、TRF7970AEVMからマイコンを取り除いたイメージのものであり、MSP430などのマイコン用評価ボードを接続して使用する。これらを利用することにより、開発期間を大幅に短縮することができる。

最後にソフトウェアについてである。TIは、必要となるすべてのソフトウェアを提供できる体制を整えている。つまり、NFCベースのシステムの主要な要素をすべて提供可能なソリューションを用意しているということだ。

木下氏は、「NFCを利用するアプリケーションとしては実にさまざまなものが考えられる。ただ、どれを具現化すれば、ユーザーに大きなメリットを提供できるのかという点で手探りの段階にあるとも言える」と指摘する。とはいえ、今後NFCが爆発的に普及することは間違いない。菅原氏は「どのようなアプリケーションが普及するとしても、NFC対応IC、マイコン、開発/評価環境、ソフトウェアを包括的に提供するTIのソリューションを利用することで、それに対応することができる」と語った。

TIのNFCソリューションに関する詳細はTIJのサイトをご覧ください。

※Tag-it およびMSP430はTexas Instruments Incorporatedの商標です。StellarisはTexas Instruments Incorporatedの登録商標です。その他すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。

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