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市場の急拡大が期待されるBluetooth Low Energy、開発サポートの充実で機器メーカーを支える

さまざまな携帯型電子機器に搭載されている近距離無線規格「Bluetooth®」。その低消費電力版が「Bluetooth Low Energy(BLE)*1」である。2.4GHz帯を利用する無線通信技術で、消費電力が極めて低くできるのが特長だ。コイン型電池やボタン型電池、エナジー・ハーベスティング(環境発電)技術で駆動することを想定している。例えば、ボタン型電池を使えば、数年と長い電池寿命を実現することもできる。

最近、このBLEを搭載するアプリケーションが相次いで登場している。パソコン周辺機器のほか、腕時計やヘルスケア機器、スポーツ機器などである。今後、BLEを採用する電子機器が一気に増えるのは間違いない。

*1BLEは、「Bluetooth ver4.0」で追加された新しい規格で既存のBluetooth規格である「ver2.1」や「ver3.0」との互換性がない。そこで「Bluetooth ver4.0」をサポートしている機器ではBLEに加えて、ver2.1もしくはver3.0の通信機能を組み込んだデュアル・モードを採用している。BLEのみを採用した電子機器には「Bluetooth SMART」、Bluetooth 4.0に対応した電子機器には「Bluetooth SMART READY」のロゴが表示される。

2つの規格のクリアが不可欠

急速な市場拡大が期待されるBLE市場。今後、さまざまなメーカーがBLEを採用した電子機器の開発を手がけることになる。この際に問題になるのがBLE導入時の技術的なハードルの高さである。このハードルは決して低くない。パソコン周辺機器メーカーのように、無線通信技術の導入に対して比較的豊富な経験を持っていれば、それほど高くないだろう。しかし、経験が乏しいメーカーにとっては、かなり高いと言わざるを得ない。経験がほとんどないメーカーであれば、開発に2~3年もの期間を費やすこともあるという。

なぜ、これほどまでハードルが高いのか。その理由は、2つの規格をクリアしなければならない点にある。1つは、Bluetoothの規格団体「Bluetooth SIG(Special Interest Group)」による認証テスト。もう1つは、開発中の電子機器を投入する国、もしくは地域の電波法である。日本であれば、電波産業会(ARIB:Association of Radio Industries and Businesses)の技術基準適合証明(技適)を得なければならない。

こうした規格をクリアするには、ハードウェアとソフトウェアの両方の専門知識が不可欠だ。このため、ハードルが非常に高くなってしまう。もちろん、こうしたハードルは、BLEに対応した無線通信モジュールを採用すれば、比較的簡単にクリアできる。その一方で、コスト競争力の高い電子機器を市場に投入するには、ディスクリートのBLE対応チップを採用することも1つの手段である。

幅広い開発キットを用意

従って、BLEを導入する際には、BLE対応チップを注意深く選ぶだけでは不十分である。2つのテストをクリアするために必要な開発サポートを、どの程度得られるかも配慮しなければならない。

高性能なBLE対応チップと、きめ細かな開発サポート。この2つを過不足なく提供できる半導体メーカーは決して多くない。その中でもテキサス・インスツルメンツ(TI)は、「競争力の高いBLE対応チップを持っているだけでなく、ハードウェアとソフトウェアの開発から、規格クリアのサポートまでを提供できる数少ないメーカーだ」(同社)という。

同社のBLE対応チップは、「CC2540/CC2541」である(図1)。BLEに対応したRFトランシーバや8ビット・マイコン・コア「8051」などが集積されている。特長は、無線特性が高いことだ。「RFチップをかなり前から手がけており、たくさんのノウハウを蓄積している。このため競合品に比べて、高い無線特性が得られる」(TI)という。

開発サポートも充実している。特筆すべきは、幅広い開発キットを用意している点だ。例えば、低消費電力の16ビット・マイコン「MSP430™」を載せたボードと、CC2540/CC2541を搭載した小型の無線通信ボードからなる「CC2540DK/CC2541EMK」や、CC2540/CC2541のみを搭載した小型の開発キット「CC2540DK-MINI/CC2541DK-MINI」、加速度センサや温度センサなど6種類のセンサを搭載した「SensorTag(CC2541DK-SENSOR)」、スマートフォンなどからのチャンネルを操作するテレビやSTBなどのリモコン機能の開発に向けた「CC2541DK-RC」などである。これらの開発キットはTIのオンライン・ストア(TI eStore)から、簡単に購入可能だ。 

図1 BLE対応チップとともに幅広い開発キットを提供
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6個のセンサを搭載した「SensorTag」

これらの開発キットの中で、電子機器メーカーや、そこで働くエンジニアの注目を集めているのがSensorTagである。温度センサ、湿度センサ、圧力(気圧)センサ、加速度センサ、角速度(ジャイロ)センサ、地磁気センサといった6種類のセンサが搭載されており、検出した各物理量を、BLEを介してホスト機器に送る(図2、図3)。ホスト機器に搭載するソフトウェアも用意している。Apple社の「iPhone®」や「iPad®」で動作するサンプル・プログラムである。「App Store」から無償でダウンロードでき、ソース・コードもTIのウェブサイトから入手可能だ(http://www.ti.com/sensortag-app-android)。

図2 SensorTagの内部構成
加速度センサと角速度(ジャイロ)センサ、圧力センサ、湿度センサ、地磁気センサ、温度センサを内蔵。このほか、プッシュ・ボタンやLEDも搭載した。コイン型電池「CR2032」で動作する。
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図3 SensorTagに内蔵した基板
4層のプリント基板を採用。これにBLE対応チップのほか、6個のセンサ、プッシュ・ボタン(ユーザー・ボタン)、LEDなどを実装した。
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電子機器メーカーは、SensorTagとサンプル・プログラムを使って、BLEを利用した新しい電子機器の構想を練ることができる。ある程度固まれば、すぐさま試作に着手可能だ。SensorTagに内蔵したプリント基板の設計データ(Gerber形式)と、サンプル・プログラムのソース・コードはいずれも公開しているからである。しかも、SensorTagは、世界各国/地域の電波法の認証を取得しており、Bluetooth SIGの認証テストもクリアしている。従って、ハードウェアとソフトウェアとも、改変を加えずに採用すれば、極めて簡単に2つの規格を満足できるようになる。

ソフトもハードも

しかし、独自性の高い電子機器を開発するには、ハードウェアとソフトウェアの新規開発が不可欠だ。つまり、プリント基板を新たに設計し、ソフトウェアに新たな機能やサービスを追加しなければならない。

こうした電子機器メーカーに対しても、TIは手厚い開発サポートを用意している。例えば、ソフトウェアについては、BLEのサービスや属性などを表示する「BLE Device Monitor」や転送データのパケット情報を表示する「RF Packet Sniffer」、消費電力を見積もる「Power Consumption Estimator」といった無償ツールを用意している(図4)。さらにBLEソフトウェア・スタックも無償で提供する。ソフトウェア開発には、IARシステムズ社の統合開発環境「Embedded Workbench」が使える。これを使って、8051コア上で動作するソフトウェアの開発ができる。ハードウェアについては、SensorTag以外の開発キットのリファレンス・デザインもすべて公開しており、これを参考にすれば比較的容易にプリント基板設計を進められるだろう。

図4-1 Device Monitor:接続機器のサポートプロファイルと動作確認が可能なBLEツール
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図4-2 Packet Sniffer:エア上でやり取りされるパケットを時系列で確認可能なBLEツール
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図4-1 Device Monitor(左)はBLEの機器と接続し、サポートしているプロファイルを確認したり簡単な動作の確認ができる。図4-2 Packet Sniffer(右)は通信しているパケットを受信し、通信している様子を確認することができる。TIが提供するこれらのツールは、USBドングルタイプのキットを使ってPC上で使用することが可能だ。

開発サポートに関しては、Bluetooth SIGの認証をTIによって取得済みのリファレンス・デザインのID(QDID)を公開していることも見逃せない。Bluetooth SIGでは、「Controller」、「Host」、「Profile」という3つのカテゴリで認証を実施している(図5)。TIは、認証を取得したリファレンス・デザインの設計データをすべて公開している。電子機器メーカーは、この設計データをそのまま利用すれば、そのQDIDを使用し、関連部分の認証テストを省略できる。従って、Bluetooth SIGの認証テストを比較的簡単にクリアできるようになるわけだ。

図5 Bluetoothにおける認証の仕組み
Bluetooth SIGでは、「Controller」、「Host」、「Profile」という3つのカテゴリで認証を実施している。TIでは、認証を取得したリファレンス・デザインの設計データをすべて公開しており、電子機器メーカーはこの設計データをそのまま利用すれば、そのQDIDを使用し、関連部分の認証テストを省略できる。
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もちろん、こうしたソフトウェア・ツールやリファレンス・デザインを利用しても、開発/設計におけるトラブルを完全に回避できるわけではない。思いもよらないトラブルに見舞われることもあるだろう。その場合は、TIのフィールド・アプリケーション・エンジニアによるサポートを受けられるほか、同社がウェブ上で運営しているエンジニア・コミュニティ・サイト「TI E2E Community(http://e2e.ti.com)」を利用し、有益な情報を入手することも可能だ。


※ MSP430はTexas Instrumentsの商標です。その他、すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。

●TIのワイヤレス・コネクティビティに関する詳細はこちらをご覧ください。

●SensorTag開発キットに関する詳細はこちらをご覧ください。

●TIの開発キット/開発ツールは、オンライン・ストア(TI eStore)から簡単に購入可能です。

(2013/9/27公開)

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