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第三回モバイル活用支援フォーラム2014 ~会社のさらなる成長を加速させるモバイルシフト、導入と運用の課題を解決する最新動向~ 企業経営に最大限に生かすノウハウを探る Review

スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器の普及により、外出先でメールやWebをチェックしたり、電子化したカタログや申し込み用紙を活用して外出先で商談を進めたりするだけでなく、在宅勤務などのワークスタイル変革も容易に実現できるようになってきた。その一方で、セキュリティ確保や運用管理などのノウハウだけでなく、採用機種や業務アプリケーションの選定など導入までに解決しなければならない様々な課題もある。モバイル機器を企業経営で最大限に活用するにはどうすべきか。ユーザー企業やIT企業の関係者がそれぞれの立場で語った。

三井生命保険

全ての営業担当者にタブレットを配布
営業活動の改革と契約事務作業の効率化

三井生命保険株式会社
システム企画部 審議役

エムエルアイ・システムズ株式会社
開発本部 本部長
横井 俊明

 三井生命は2014年10月、タブレットを全ての営業担当者に配布した。そして2015年1月からはペン入力による電子署名機能などを使い、保険の申し込みや健康状態の告知手続きもタブレットでできるようにした。

 「機種選定や業務アプリケーションの仕様の決定では、営業担当者の意見を徹底的に聞きました。12.1インチ型の4対3の画角比にしたのもその一例です。ワイド画面では使いにくいという声が多かったからです」。三井生命保険と、その情報システム子会社、エムエルアイ・システムズでプロジェクトに関わった横井俊明氏はこう話す。

 タブレット導入の目的は営業活動の変革だ。営業担当者は会社に戻る必要性がなくなり、顧客訪問の時間を増やせる。顧客と一緒に画面を確認しながらライフプランや保険設計を相談できるため、顧客に分かりやすくなった。また、契約内容の確認や保険設計の作成・修正ができ、顧客からの照会や要望にその場で対応できる。

契約書類の電磁的交付の確認 顧客が書き込む電子署名機能も

 導入の目的はそれだけではない。生命保険の契約手続きには書類が多いうえ、顧客による記入が必要な書類もあり、契約が成立するまで時間を要する。タブレットの導入は顧客利便性の向上に加え、事務作業の効率化も狙っている。契約書類の電磁的交付の確認機能、顧客自らが書き込める電子署名の機能をタブレットに設けている。

 「これまで経験や記憶に基づいて業績予測をしていましたが、データによる目標管理・業績予測に変わりつつあります。また、営業上の様々な施策の結果についてこれまで十分にフォローできないところがありましたが、タブレットの導入によって営業担当者の活動状況や個人特性に基づいた指導ができるようになってきました」。横井氏はこう導入メリットを話す。

青山システムコンサルティング

導入しても社員が使わない失敗事例も
成功の方程式はゴールの明確化

青山システムコンサルティング株式会社
システムコンサルタント
長谷川 智紀

 「業務システムをオフィス外で利用したいというニーズが高くなっています。そのニーズを無視すると、スマートデバイスを導入しても社員に使われなくなる恐れがあります」。青山システムコンサルティングの長谷川智紀氏はこう話す。

 業務システムをオフィス外で利用しようとすると、経営方針、中長期戦略、セキュリティポリシーと照らし合わせる必要がある。

 例えば、海外企業とのメールのやり取りで深夜残業が恒常化している企業。海外事業強化という経営方針と、メールを含むグループウエアの入れ替えは予定していないという中長期戦略、オフィス外からメールサーバーに直接アクセスしないというポリシーがあるのであれば、オフィス外の業務を認めた社員に見なし残業を付与する制度を設け、アドオンでリモートアクセスするためのアプライアンスサーバーを設置し、スマートデバイスでメールを可能にするシステムが必要だ。

まずはグループウエアの利用から実績を上げ業務システムの利用へ

 スマートデバイスの活用は、ペーパーレスやフリーアドレス制、在宅勤務を実現する。紙代や印刷コスト、オフィス賃料の削減、多様な雇用形態の実現による採用コストの低減などに貢献するだけでなく、CSR(企業の社会的責任)への取り組みとして注目を集めているワークスタイルの変革やダイバーシティを可能にする。

 「スマートデバイスの活用で企業競争力を高めるためには、社員と一体になって改革を進める必要があります。まずはグループウエアの利用から始め、次に業務システムの社外利用に取り組むとよいと思います。グループウエアの利用は、システム対応の難易度や社内調整の難易度も低く、取り組みやすいからです。その実績が上がれば、業務システムの利用への支持を得られやすくなります」。長谷川氏は来場者にこうアドバイスした。

コーセー

接客品質の向上と店頭業務の効率化
美容スタッフの対面販売を支援

株式会社コーセー
情報統括部 部長
小椋 敦子

 コーセーは百貨店や化粧品専門店を中心に高級化粧品を美容スタッフが対面で販売するとともに、ドラッグストアやコンビニエンスストアではセルフ販売も展開し、様々な販売チャネルを持つ。「お客様と接する美容スタッフの接客品質の向上、店頭業務の効率化を図るため、iPadによる店頭支援システムを導入しました」。コーセーの小椋敦子氏はこう話す。

 導入したのは2013年4月。美容スタッフはiPadの画面で購買履歴などを参照するほか、肌診断用端末の結果を表示させ、カウンセリングを進める。スキャナーで商品のバーコードを読み取り、iPadを使って商品の発注・棚卸し作業も可能だ。売り上げの集計やダイレクトメール(DM)の宛名印刷もできる。1台のiPadで美容スタッフは効率的に店頭業務と接客をこなせる。

購買実績をリアルタイムに把握 マーケティング戦略の立案にも

 iPad導入の効果はそれだけではない。売り上げの情報などをリアルタイムに把握することが可能になり、顧客の属性や時間帯別の来店傾向の分析など、店舗におけるマーケティング戦略の立案にも役立っている。

 それまでコーセーは20年ほど前に導入した店頭支援システムを使用していた。チャネル別にシステムが異なり、導入先は百貨店や一部の化粧品専門店にとどまっていた。システム未導入の店舗では顧客情報や購買履歴を紙台帳で管理しているため、売り上げの集計やダイレクトメールの作成も手作業で行っていた。そのため顧客の購買実績を網羅的に把握することが難しかった。

 「iPadは操作性にも優れており、機能を簡単に追加できるので、将来の機能拡張にも容易に対応できます。接客に使う端末には化粧品店にふさわしいデザイン性が高いものが求められますが、白色のきょう体を選べるiPadはその条件も満たしていました」。小椋氏はこう振り返り、講演を終えた。