人生100年時代、いつまでも健康でいきいきと暮らしていくには、体の気になる変化やちょっとした異変に、早く、正しく対応することが肝心。50代以降に罹患者が多い「爪水虫」もその一つだ。市販薬では治療が難しいこの病気、かゆみなどがないため放置されていることが少なくないのだが、それでは治ることはないばかりか、家族にも感染させてしまうリスクが。さらに、重症化すると自身の健康を損なう可能性もゼロではない。そんな爪水虫についての正しい知識を身に付けるべく、順天堂大学医学部附属浦安病院の皮膚科医、木村有太子先生に話を伺った。

10人に1人が罹患しているという爪水虫とは?

木村有太子先生
2003年獨協医科大学医学部卒業。順天堂大学浦安病院皮膚科での臨床経験、ドイツミュンスター大学病院皮膚科での留学経験を経て、2016年より順天堂大学医学部附属浦安病院皮膚科准教授。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本皮膚科学会認定 美容皮膚科・レーザー指導専門医、日本医真菌学会認定専門医。

──まず、爪水虫とはどんな病気なのか教えてください。

爪水虫は、足水虫同様、白癬菌(はくせんきん)というカビの一種の感染によって引き起こされる爪の病気です。医師の間では爪白癬(つめはくせん)と呼ばれています。爪水虫は、足水虫を長年放置することで、白癬菌が爪の横や先端の皮膚から爪に侵入して発症します。ですから、足水虫と合併しているケースがほとんどです。まれに足水虫の症状が見られないこともありますが、その場合も、過去に足水虫に罹ったことがあり、市販薬で治療してなんとなく治ったような気がしていたけれど、実は持続感染していて、菌が爪に入ってしまい、時間をかけて爪水虫になったというヒストリーがあると思います。

──爪水虫は、皮膚科を受診した10人に1人が罹患しており、50代以上に患者が多いということですが、年を重ねると罹りやすくなる病気なのでしょうか。

足水虫から時間をかけて爪水虫になるという経過があるため、年齢が上がるにつれて白癬菌の感染期間が増え、患者も増える傾向にあると思います。また、年を重ねると爪が伸びるスピードが遅くなるので、若い人に比べて菌が停滞する時間が長くなり、リスクが上がるということもあると思います。

皮膚科を受診した日本人の10人に1人が爪水虫に罹患している可能性があるというデータは、日本で行われた大規模疫学調査の結果です。ちなみに、足水虫の罹患者は5人に1人の割合と言われています。この結果から計算すると、日本にはおよそ1200万人もの爪水虫患者さんがいると推測できます。でも、臨床の現場にいる医師の感覚としては、実際の数はもっと多い、隠れ水虫の方はもっといると思いますね。高齢化が進む今後は、より増えていくのではないでしょうか。

出典:足白癬・爪白癬の実態と潜在罹患率の大規模疫学調査(Foot Check 2007)

──爪水虫に罹るとどんな症状が現れるのでしょうか。また、なりやすい季節はありますか?

爪水虫の患者さんの多くに見られる症状が混濁です。爪の横や先端から白色〜黄色に濁りが生じます。そして次第に爪が肥厚し、さらに症状が進行すると、肥厚した部分がボロボロと欠けてきます。ただ、これらは爪水虫を疑うべき症状ではありますが、臨床が似ている他の病気もありますので、見た目だけでは絶対に診断はできません。皮膚科では、爪を少しいただいて顕微鏡で確認し、白癬菌がいるかいないかで診断します。

白癬菌はカビの一種ですので、高温多湿な環境が大好きです。ですから、汗をかきやすい春~夏にかけては悪化しやすくなります。運動をしている方は気を付けないといけないですね。冬になると症状が落ち着いてしまい、良くなったように思って忘れてしまいがちですが、感染は持続していることが多く、そこで中途半端に治療をやめてしまうと繰り返してしまいます。

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