ITモダナイゼ―ションSummitレビュー|ITモダナイゼ―ションSummit 2016 いつまでそのシステムを使い続けますか?

東京システムハウス

OSS COBOLの開発・公開を通じて社会貢献
中小企業のクラウドマイグレーションを支援

 

日本発のOSSのCOBOLとして注目される「opensource COBOL」。東京システムハウスは経済産業省の補助事業として研究開発に取り組み、コンパイラや各種実行基盤のWindows対応をはじめ、開発・運用保守環境やユーザーインターフェース機能の強化、周辺ツールの拡充を実現した。その成果物を公開することで、中小企業のクラウドマイグレーションを強力に後押しする。

 

 

 

幅広い業種・業務で導入が進む日本発のOSS COBOL

東京システムハウス ビジネスイノベーション事業部 マイグレーションソリューション部 副部長 比毛 寛之 氏

東京システムハウス
ビジネスイノベーション事業部
マイグレーションソリューション部
副部長
比毛 寛之

 日本におけるOSSのCOBOLは「opensource COBOL」として、2012年にフォークされた。OSSコンソーシアムのオープンCOBOLソリューション部会が中心となり、継続的に開発が進められている。

 

 同コンソーシアムの参画企業である東京システムハウスの比毛(ひもう)氏は「SJISやUTF対応、日本語変数名/段落名、通貨記号『\』のサポートなどから、RPMパッケージ公開やデータベース連携ツール配布まで、日本の商習慣に応じた拡張機能を追加しています。日本の企業様がOSSのCOBOLの導入を検討するならば、opensource COBOLがおすすめです」と語る。

 

 opensource COBOLはここ数年で、自治体の大型汎用機からのマイグレーションをはじめ、国内の幅広い業種で導入が増え始めている。

 

経済産業省補助事業でopensource COBOLを強化

 東京システムハウスのOSS COBOLへの取り組みの代表が経済産業省補助事業の「OSS COBOLクラウド基盤導入実証」である。2014年から2年間、opensource COBOLおよび周辺ツールの開発を行った。

 

 同事業では、中小企業のクラウドマイグレーションの課題に着目した。opensource COBOLでは画面機能が貧弱、統合開発環境やデバッガがない、導入OSはLinuxが前提などの弱点がまだ残されている。しかも、オンラインやバッチ、データベース、帳票、運用などミドルウエアの代替が欠かせないが、商用ソフトは高額だ。また、クラウド運用はプロビジョニングなど専門知識が必要だが、中小企業には人材の確保も教育も困難である。

 

 「従前の課題を解決し、COBOLシステムをクラウドのOSS COBOL実行基盤へ安全に移行し、安定運用するために必要な3つのテーマを推進した。①クラウド利用に最適なOSS COBOLコンパイラの研究開発、②OSS COBOL実行環境への移行と構築に必要な機能の開発、③クラウド移行後のOSS COBOLシステム運用に必要な機能の開発です」(比毛氏)

 

 ①ではまず、Microsoft Visual StudioのCコンパイラに対応することで、opensource COBOLをWindows対応させた。さらにEclipseプラグインを開発し、OSSのCOBOLデバッガ起動も可能にした。「使い慣れたWindowsでCOBOLでの開発が行えます。その上、Eclipseで開発や保守が効率化できます」(比毛氏)

 

 加えて、日本語の入出力と罫線表示に対応し、レガシーの画面をWindowsのコマンドプロンプト画面にそのまま再現するなど、SCREEN SECTIONによるCUIの強化も実施した。

 

 ②では、SCREEN SECTIONによる画面定義など、COBOL構文のままで画面をWEB化可能とした。①のCUI強化とあわせ、「貧弱であったユーザーインターフェース機能を強化しました」と比毛氏は話す。

 

 そして、「AJTOOL」(Advanced Joint Tool)をopensource COBOL実行環境向けに拡張。AJTOOLはCOBOLやJCLやオンラインをはじめ、システムを構成する各要素をオープンシステムで結合する東京システムハウスの製品である。本事業では、バッチ処理の実行基盤「AJTOOL Batch Framework 」、TomcatとCOBOLによるオンライン処理の実行基盤「AJTOOL UI Framework」をWindows対応とし、「AJTOOL for OSS」として提供した。

 

 同時に、PostgreSQLとの連携ツール「Open COBOL ESQL」もWindowsに対応させた。「これによりバッチ処理やオンライン処理の実行基盤、データベース連携機能など、レガシープラットフォームの代替機能がWindows上のOSSで実現できるようになりました」と比毛氏は成果を述べる。

 

 ③では運用機能の強化を狙い、「OSS COBOL仮想化基盤」を開発した。起動/停止や状態監視などが行える仮想サーバー管理のポータルサイトとともに、仮想サーバーの配布などプロバイダー機能も提供する。

 

 「本事業で開発したソフトウエア群によって、中小企業のクラウドマイグレーションの各種課題を解決し、オフコンを中心とするレガシー資産のクラウドへのマイグレーションを促進します。これらのソフトウエア群は、ユーザー様はもちろん、ITベンダー様もダウンロードしてご利用いただけるので、ぜひお試し下さい」(比毛氏)

 

※AJTOOL for OSSについてはお問い合わせください

 

図1「OSS COBOLクラウド基盤導入実証」の成果を適用することで、クラウドマイグレーションが実現できる。

 

画面構成や操作性を踏襲しつつシステムの刷新を実現

 東京システムハウスはopensource COBOLを活用した最新のモダナイゼーションサービスを顧客に提供している。その一例として、あるIT系企業のコア業務を支えるシステムのマイグレーションを紹介した。

 

 従来のシステムは構築から16年が経過し、ハードウエアの老朽化とともにセキュリティーや事業継続などの問題を抱えていた。そこで、利用者に安全にサービスを提供するため、システム刷新に着手。既存のCOBOL資産を再利用し、opensource COBOLでオープン環境へのマイグレーションを行うことにした。

 

 COBOL資産の再利用を決断した理由を「長年蓄積してきた業務ロジックを活かし、システム刷新を効率よく行うためです。再構築の工数増大や不具合混入リスクなども考慮し、再利用を決めました」と比毛氏は話す。

 

 opensource COBOLの採用理由については、「本プロジェクトでは、既存の業務ロジックが正しく処理できれば問題なく、新技術や拡張機能は不要でした。データベースや画面、帳票などの機能は周辺ツールで代替できます。OSSとして公開され商用利用ができる点、オープンで軽量コンパクトな点、コミュニティ活動の充実など、総合的に評価して採用を決めました」と比毛氏は語る。

 

 システム構成は従来の拠点ごとのC/Sから、データベースも含め新基盤上に統合したWebシステムに、PCのブラウザから接続する方式へ変更した。

 

 「システム構築では、opensource COBOLのファイルハンドラ機能を利用して、COBOLのREAD/WRITE命令でOracle データベースにアクセスしたり、画面はSCREEN SECTIONをWeb化するフレームワークで動的な描画機能を実現したりしました。ほかにも帳票制御コードなど、当社のソリューションを有効活用しつつ課題を一つずつクリアしています」(比毛氏)

 

 マイグレーションの結果、老朽化と事業継続の問題を解決したうえに、運用・保守の効率化も達成できた。既存COBOL資産を再利用できたため、最小限の工数で済んだなど、効率的にシステムが刷新できた。また、画面はWeb化で見栄えを改めつつも、レイアウトやキー入力は踏襲したことで、現場の混乱を回避しスムーズな刷新を可能とした。

 

 「今回ご紹介したモダナイゼーション事例のように、お客様のレガシー資産を再利用して、効率的にシステムを刷新する手法を提供していきます」と比毛氏は今後の抱負を語った。

 

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